【和楽器】SONICA INSTRUMENTSの『KOTO13』が素晴らしい件について

こんにちは、少し前に和楽器の『箏』音源としてSONICA INSTRUMENTS『KOTO 13』を買ったのですが、これが個人的にとても素晴らしかったので、どんな音源なのかを自分流に記事にしてみます。

詳しい内容は、本家のページや無料でダウンロードできるマニュアル、またMedia Integrationのページを見ていただければと思いますので、ここでは私の体感を書いていきます。

 

SONICA INSTRUMENTS

SONICA INSTRUMENTSはSONICA Inc.のソフトウェア音源開発部門とのことで、和楽器の音源を主に製作されているようです。2018年10月現在では、

  • 尺八
  • 三味線(津軽)
  • 箏(十三絃箏)
  • 歌舞伎&能のパーカッション
  • 和太鼓

の音源がリリースされていて、非常に純度の高い和楽器音源を作っている印象。

イイですね。非常に良いです。個人的には篳篥の音源を心待ちにしている自分がいます。あの音は代用が非常に難しいと思うので。

 

ただ、上4つの楽器はKONTAKT5以上(製品版)、下2つの打楽器音源はBFD音源がないと動かせないので、そこだけ注意。

結構、製品版のKONTAKTが無いと使えない音源多いので、去年のブラックフライデーで買っといて正解だった。BFDは・・・残念ながら買う予定がないので今のところはSONICAの和太鼓は諦めてるという。ドラムはDFHS派の自分。

詳しい使用条件等は本家サイトのSPECIFICATIONS等を参照下さい。

 

KOTO 13 – mix画面

それでは早速見ていきましょう。ざっくり行きます。

 

mix画面で結構いいなぁと思ったのが、Direct、OH(オーバーヘッド)、Room、Stereoの4点からそれぞれDAW側にパラアウト出来るところ。

音としては「Direct・OH・Room」の内1~3つを使うか、「Stereo」を使うかのどちらかになるわけですが、この「Direct・OH・Room」は別々のトラックに出力出来るので、DAW側で別々に処理が出来るようになる。

 

たまに音作りの一環として、「原音からRoom成分だけ別トラックに作って、それ用の処理を施して元のトラックに混ぜ合わせる」とかしたりするので、最初から分かれてるのは何かと便利だったりします。

特に分ける必要がなければ、一括されてる「Stereo」使えば良いだけですしね。

 

あと、リバーヴの種類が予想外に多かったです。見えてる分の倍あります。

箏の場合、やはり響きが大事だと思われるので、色んな場所でどう響くかをこの音源内で確認できるのはでかいと思う。

 

KOTO 13 – play画面

2枚目のplay画面。何やら色々なツマミがあります。

やーでもこれほんとありがたい機能色々あるので凄い嬉しい。一個ずつ見ていこう。

 

Scale(スケール)

画像が縦長になっちゃうので途中で切ってますが、Scale部分をクリックすると、縦にズラッと調子が出てきます。Media Integration, Inc.のページから引用すると、

収録スケール(調子)28種類

平 調子、六上り調子、四九上り調子、雲井調子、本雲井調子、半雲井調子、片半雲井調子、中空調子、曙調子、中空調子、楽調子、半楽調子、乃木調子、花雲調子、岩戸調子1、岩戸調子2、半岩戸調子1、半岩戸調子2、夏山調子、古今調子、新古今調子、平巾十調子、二重雲井調子、雲井巾十調子、秋野調子、琉球調子、想夫恋調子、新雪月花調子

移調対応Key: G / G# / A / A# / B / C / C# / D / D# / E

なんと28種類もありました。ほとんど知らない調子でビビった。想夫恋調子って何!?すっごい恋しい感じしそうなんですけど。

ただ、民謡の曲数だけでも実はとんでもない数あったりする(約3~4000曲くらい?)らしいし、それぞれの時代や地域で発展したものと考えると感慨深い。

 

KOTO13では、この28種の収録スケールに合わせている場合、上の青い部分の白鍵13個が左からそのまま箏の絃の、

「一、二、三、・・・斗(11番目)、為(12番目)、巾(13番目)」

という順番になっています。

試しにScale:Hira(平調子)で鳴らしてみるとこんな感じ。

ただ、ピアノロール上では「C、D、E・・・」となっているので、そこは注意。

 

で、このScaleはクロマチックモードにもなれます。さっきより青い部分が広がっているのですが、これは黒鍵を含んだこの青い範囲で、調弦とか関係無しにこの範囲全ての音が出せます。これいいな~と思いまして。

なぜかというと、例えばもう一個KOTO13を立ち上げる必要はあるのですが、

  • 一個目のKOTO13:十三絃箏モード(例:雲井調子)
    → 調子のみの音が出るのでイメージを固め易い
  • 二個目のKOTO13:クロマチックモード
    → 一個目の調子以外の音も出せるので和ジャンル以外の曲調にも持っていきやすい

こんな風に使うことも出来るという。

既に箏の調をマスターしている方やピアノが得意な方はクロマチック一本で済ませられそうですが、私みたいにピアノ下手な場合、「調弦のみの音が出る形」になっていた方が適当にMIDIキーボードを弾いててもそれっぽい雰囲気を得られるので、曲作りがとてもしやすいんですよね。

 

ちなみに、

  • 低音部が結構増えるので、擬似的に十七絃箏として使うことも可能?
    (クロマチックだと「A#1~D5」、User Scaleだと「A1~F#5」

とも思えたのですが、調べてみるとどうやら十七絃箏の低音はC1までは出るっぽいので(KOTO NATIONのBass Kotoも「A#0~G3」と、A#0まで出る)、KOTO13の低音はあくまで十三絃箏で出せる低音の限界という形を取っていると思われます。

この辺りは私も奏者ではなく、十七絃箏も持ってないので未確認。

 

Envelope

play画面真ん中にある項目です。左からざっくり行くと、

  • Envelope
    → ノートのリリースを調整
    → 細かいことを言うと結構重要
  • Phrase Control
    → 収録されているフレーズのスピードとチューニングの調整
    → フレーズはこのspeed=100%を基準に録音されていると思われるため、100より下だとバリッとした音になる。100より上で使う分には違和感はない。
  • Plucking Control
    → 絃が爪で弾かれて音を出すまでの長さを調整
    → テンポの早い曲ならここを短くすると良さ気
    → RANDOM PREROLLを押すと、そのランダム調整が出来る

 

という感じなのですが、個人的にはこのEnvelope調整出来るのが嬉しい

打ち込みで細かく表現したい場合(箏一本で楽曲を作るなど)、例えば親指で十の絃を押し弾いた場合、その爪は一個奥の九の絃に当たって止まる。仮にそれ以前に九の絃が鳴っていた場合、十の絃が鳴った直後に九の絃はミュートされていなければならない。

 

Cubaseの打ち込み画面で説明するとこんな感じなので、その辺りもやってく場合はEnvelopeを短めにして打ち込むといいのでしょう。

ただ、鍵盤で演奏する場合、実際の箏とはやはり勝手が違うので、ペダルを使うか8.0k[ms]にしておくと、取説にある通り凄く余韻を堪能できて「す、すげぇ・・・ゴクリ」となると思います。

 

余韻だけでこんなに違うんだなぁと改めて感じさせられます。

 

Velocity Control

これはベロシティの調整部分ですね。

私が今使っている分にはベロシティ間の音の差にはあまり違和感を覚えないのですが、例えば、最初に打ち込んではみたものの後になって「少し印象を変えたい、でも全部のベロシティ調整して回るのメンドイ」という場合などに、このツマミを使って調整したり出来そうです。

 

例えば、「Linear」の部分を「S-curve」にして「shape」を左に回すとこんな感じに、

 

右に回すとウネッと変化します。

これでヴェロシティの数値と実際に出る音のバランスを変えられるわけですね。

 

わかりやすく解説すると、こうして全てをMAXにするとどんなに小さいノートでも力いっぱいの音が出ますし、

 

逆にこんな形にすると、強く叩くほど小さい音が出るという設定も出来ます。面白い。

始めのうちはここをそんなに意識する必要性はないかなとは思いますが、あとあとここを弄れるというだけでも結構違う気はします。こういう細かいカスタマイズが出来るのはいいなぁ。使う人は使うだろうし。

 

今まで私は箏音源としてKOTO NATIONを使っていたのですが、KOTO NATIONは、ヴェロシティが70前後と90前後で音色が割と露骨に変わります。そして私はその70~90の間の音色が気に入っていたので、その間で変化つけようとするもんだからすんごいちまちま数値変えたりしてました。

でもKOTO13にはそういう露骨な変化は特に感じられない上に、もし変化を付けたい場合はVelocity Controlを弄ればいい。これは便利だなと思った。

 

ただKOTO NATIONに関しても、あの急に変わるキンキンした音も嫌いではないし、同封の三味線・Bass Kotoも結構好きなので、ダメというわけではない。ないけど、KOTO13はその辺も考えられてるんだなぁと。

 

KOTO 13 – memory画面

割と記事が長くなってますが気にせず行きます。

ARTICULATIONはキースイッチで、PHRASE BANKはサラリンなどのフレーズが入ってます。ここも、それぞれ左にLoadってあるんですけど、使わない奏法はそこをクリックしてOFFにすることで使用メモリの軽減が出来る

また、

「D#0 Pizzicato(Left/Right)」

という風に右にカッコで囲まれた部分は「CC#11 Expression」で切り替えも出来る(「EP=0:Left、EP=127:Right」という具合)。

 

左の赤い部分がキースイッチで、右の黄色がフレーズ系キースイッチ。で、そのまた右の緑色がフレーズのヴァリエーションの数

 

奏法について

気になっていた部分だけ書いていきますが、

  • すくい爪
    → D1にある
  • 散し爪
    → D#1、E1にある
  • 輪連
    → E1:Fastの方の散し爪を2音重ねればOK
  • すり爪
    → A#5:Effects内に行き、戻り共にあった
  • 消し爪
    → F0にあった(音源内、マニュアルにはF9とあるが誤植と思われる)
  • 裏連(サラリン)
    → F5にフレーズとしてあった
    → 人差し指・中指の爪の裏側でグリッサンドで降りてくる時の「爪の裏側で擦る音」はD1:すくい爪のヴェロシティが低い帯で表現できそう

 

・・・というわけで、私が知っている分には全て表現できそうです。

うん、何か抜け落ちてないかちょっと不安ですが、以前箏について書いた記事内の奏法に関しては大丈夫ですね。凄いなKOTO13。しっかりした箏音源欲しかったから個人的には大満足。

 

また、きちんと

  • C0:親指爪
    → 少し太めの音
  • C#0:人差し指爪
    → 少し鋭めの音
  • D0:中指爪
    → 鋭さと太さの中間くらい

この三つの指それぞれで弾いた時の音をしっかり分けてくれているところは非常にありがたい。私の印象は上の通りで、違和感のない範囲で違いがきちんとある。むしろ若干わかりやすく指の違いを印象付けている気はしました。

 

F5:Sahrarin(裏連)の不具合?

不具合?らしきものを一点見つけたので記載しておきます。それは、

  • F5:Sahrarinの「OH」「Room」「Stereo」のoutが設定通り反映されず、「Direct」で設定したOutから音が出力される(Directに追随してしまっている)

というもの。

上記の画像では、Scale:クロマチックにして青枠から音を出しているのですが、

  • Directのout → st.4
  • OHのout → st.5
  • Roomのout → st.6
  • Stereoのout → st.7
  • KONTAKTの基本Output → st.8

という形で試しに割り振ったところ、正常に設定通り音が出力されています。KOTO13内をStereoに切り替えても、st.7からきちんと音も出力されます。

ここで、設定そのままでF5:Sahrarinを使うため、緑枠を押して裏連のフレーズ音を使うと、

このように、st.5(OH)、st.6(Room)から設定通り音は出力されず、どうやらDirectで設定したst.4に追随しているようで、st.4からDirect・OH・Roomの音がまとめて聞こるという結果に。これはStereoにしても同じでst.4から出力されていた。(Reverbはst.8から出ているので、これは問題ない)

他の黄色枠のPHRASE BANKに関しては問題なかったので、F5:Sahrarinだけこの現象が起きました。

 

これが自分の環境のみでの不具合なのか製品版の不具合なのは現時点ではわからないので、後ほど問い合わせてみようかとは思いますが、SONICA INSTRUMENTSのサイトにはパッチだったり不具合に関する情報は特に載ってないからなぁ。

一応、こういうことがあったという報告だけ。

 

早速作ってみた

KOTO13を使ってジングルを作ってみました。これはKOTO13を2本使っている形になりますが、DAW側でエフェクト等一切使っていません。

んー、これから使うのが実に楽しみな音源である。

 

おわりに

結局、細かく見ていった部分もありますが、超大雑把にまとめてみると、

  • そもそも音が良い
  • 割とカスタマイズが出来る
  • 奏法全部入ってる
  • 調子も28種+クロマチック入ってる
  • メモリにも気を遣っている
  • アーティキュレーションとフレーズが3画面全部で見れる
  • これは篳篥がほんと待ち遠しい
  • 素晴らしい

 

はい、まとめ方若干酷いですが、とりあえずとても良い箏音源です。

人によって色々印象は違うとは思うんですけどね。そもそも音が良いし、ヴェロシティの変化で過激なものは個人的には感じられないのでかなり使いやすいです。

 

ただ、箏の音自体は他のマルチ音源内蔵のものでも割と音に融通が効く印象があるので、ライトに使う分には箏という楽器一つの音に3万出すかどうかは分かれ目かと思いますが、和楽器好きならこれはオススメできる

 

以上、ご参考までに。

それでは!

 

箏を弾くための入門書「箏のいろは」はDTMで箏を学ぶのにもとても良かった

こんにちは、MAKOOTOです。

先日、箏を学ぶためにいぶくろ聖志さんの手掛ける箏入門の書「箏のいろは」を買って勉強していたのですが、これがDTMで和風楽曲を作る上でもかなりタメになったので、少しご紹介ということで記事にしてみたいと思います。

 

これですね、なんて素晴らしいデザインなんだ。箏の文字がまた達筆でかっこいい。

 

箏のいろは

和風の楽曲をしっかり作ろうと和楽器に関する内容をじわじわ調べていた私ですが、先月箏について調べている時に、いぶくろ聖志さんの動画を見つけました。

 

いぶくろ聖志さんといえば、和楽器バンドのメンバーで箏を演奏されている方です。「蓮-REN-」「華風月」といった日本の和を基調としたユニットも組まれていたり、個人でも様々に活躍されていて、この音とまれ!の「龍星群」演奏動画にも、いぶくろさんが実はいたりします。

 

で、私は地歌や三曲などの昔からある箏の楽曲を聞いたりそこから使い方を学ぶことはもちろんなのですが、どちらかというと現代風に箏が使われている楽曲からも勉強したいという気持ちがありました。

まだ箏について詳しく知らないため、何が自然で何が不自然かの判断も付かない。ただ、そうならそうで自分で模索していけばいいだけの話なのですが、そんな折にこの「箏のいろは」を知りました。

この本は「これから箏を弾いて練習する方」向けではあるのですが、現代の音楽界ではまだまだ希少な楽器である箏で活動されている方の本ということで、実はかなり貴重なのではないかと思いました(私があまり調べてないだけかもしれませんが)。また、いぶくろさんのオリジナル箏曲を楽譜として練習できるということで、私にしては珍しくすぐ買ってしまった

以下、いぶくろさんの「箏のいろは」についてDTMをしている私の観点から簡単に書いていきます。

 

箏の演奏方法は一通り学べる

「箏のいろは」には、6曲のいぶくろさんのオリジナル箏曲がCD付きで同封されており、その6曲を練習することで弾き方を少しずつ覚えていき、箏の演奏に慣れていくという流れが組まれています。

具体的には、

  1. 花紺青~夜の風~
    ・基礎的な楽譜の読み方
    ・親指と中指の動かし方
    ・親指と中指を使った「合わせ爪」の奏法練習
  2. 白群~川遊び~
    ・指を少しだけ素早く動かす練習
    ・人差し指を加えた動かし方
    「押し手」の奏法練習
  3. 緑青~鬼蜻蜓
    「すくい爪」、「後押し」、「グリッサンド」(流し爪・引き爪のこと)の奏法練習
    ・曲のテンポは速め
  4. 光悦茶~土~
    ・16分音符での練習
    「掻き手」、「割り爪」(シャシャテン)の奏法練習
    ・テンポはゆっくりだが16分音符が多く大変
  5. 淡紅色~蕾~
    「トレモロ」、「裏連」(サラリン)の奏法練習
  6. 月白~明日~
    ・付点のリズム
    ・左手で「ピチカート」の技法を練習

 

私は現在、箏を引っ張り出す場所がないので、曲を聴きながら机の上で指だけ動かして練習してました。いわゆるエア箏。しかしこれが難しい。

曲の基本構成は、

  • 13絃箏の旋律(メロディ)部楽譜が用意されている練習部分)
  • 25絃箏の伴奏部楽譜には書かれていない部分)

の二面の箏による楽曲となっていて、一曲につきそれぞれ

  • 鑑賞用旋律伴奏の合わさった、いぶくろさんによるお手本の音源)
  • 練習用(鑑賞用より伴奏が小さく、これから練習する旋律をよく聴ける音源)
  • 伴奏用(旋律のない、伴奏のみの音源。伴奏と合わせて練習・披露できる用)

の3点が、箏を練習するために用意されていました。

 

楽譜が用意されている旋律部分は運指の番号が全部振られているので、初めて箏に触れる人でも大安心で練習ができる内容です。

 

これだけでも十分満足ではあるのですが、私の場合、折角なのでやはり伴奏部分も勉強したいということで、メロディのみならず伴奏部分も6曲全部耳コピしました。

 

最初の内は音の強弱や伸ばし(サステイン)部分、また指の弦に触れるタイミングなどもなるべく再現していましたが・・・うーん、なんかこの画像だとあんまりやってないですね(笑

でも、お陰で箏の指運びがかなり理解できるようになったので、予想以上の収穫がありました。

 

例えば、五の糸(G2)を親指で押しで普通に弾いた場合、直後は四の糸(D#2)に親指の爪を当てて一旦止めます(基本形)。つまり、事前の演奏で四の糸が鳴らしてあって響いていた場合、五の糸(G2)が鳴ると同時に四の糸(D#2)はミュートされる。(画像赤枠

上画像緑枠も同じ。親指で流し爪的に低い音に向かって鳴らしている最中ですね。

 

こういった、奏法だけでは見落としがちな部分に結構気付くことができたので、この「箏のいろは」は私にとってほんとにありがたい教本となりました。

 

自分で作った楽曲

そんなわけで、この「箏のいろは」のお陰で箏に対する知識が増えたこともあり、最近作る和風曲には箏ばっかり使ってしまう自分がいます。それと、楽曲を作りながら思ったのですが、箏ってかなり凄い楽器だと思いました。

 

これは記念すべき箏のみの楽曲第一号。「箏のいろは」で学んでなかったら箏のみの楽曲を作るのは随分先になっていたかもしれない。

 

箏を使って激しい曲を作ってみたうちの一つ。毘沙門天の眷属の一人である羅刹のテーマという設定です。こういう設定を考えたりしながら作るのはとても楽しいですね。夜叉のテーマも近いうち作りたい。

 

こちらはゲームでいう「風来のシレン」をもう少し江戸っぽくイメージしたもの。やっとこういう曲作る事ができました。今まで作りたくても作れなかったこういう曲、なんかやってたら出来てしまった(笑

 

私が思う箏の良い所

私が今現在感じる箏の良さといいますか、特徴というものを述べると、

  • 音が煌びやかで、雅さを感じる
  • ベース・和音・メロディ全部担当出来る。汎用性が高い
  • 絃楽器なので音程も融通が利く
  • 平・雲井調子など、音階を把握してそれを鳴らすだけでも和っぽい雰囲気が出る
  • 静かな曲ド派手な曲、どっちでもいける

という感じです。

まさか箏がこんなに幅広く使える楽器だとは思っていなかったため、現代では最もポピュラーな和楽器であると思われる三味線よりも好きになってしまった。

 

ただ、全ての和風曲で使うことはちと難しいかなと思う点は、箏という楽器とその音が雅すぎるという点でしょうか。民衆のお祭り音頭みたいな曲には混ざりにくい感じがしますね。

楽器としての箏は平安時代の宮廷音楽(雅楽)もあり、江戸時代の箏の楽曲は技巧的なものが多かったらしいので、何かと敷居の高い位置にいたせいもあるんだろうと思います。そもそも平安以前は、弥生時代や日本神話にも「コト」という儀式的なモノとしては渡来前から存在していたみたいなので、そういった伝統から醸しだされるものもあるのかもしれない。

 

おわりに

「箏のいろは」を買おうと思ったきっかけは、上の方で述べた箏の学びということの他に、動画内の最初もしくは最後にほんの少し流れる、「箏のいろは」に練習用として収録されている6曲の内の一つ、

「光悦茶」が凄い好みだったから

この曲が弾けてしかも丁寧に学べるとかもう買うしかない・・・!それが決定打でした。

 

また「箏のいろは」は、いぶくろさんの人柄もあってとても優しく温かい作りで箏の練習が出来る雰囲気を感じます。本書内のコラムもかなり面白いので、箏を始めてみようかなという方や、私みたいに箏はまだよく知らないけど音楽的に興味のある方にはオススメかと思いました。

 

 

いぶくろさんの「音伽噺」と「木花咲耶」も買おうかなぁ、あれは絶対良い。

・・・あれ?いつの間にかファンになってしまった(笑

 

【DTM】琵琶という楽器を使う前に、まず基礎を知っていこうの巻【和楽器】

今回は、雅楽でも絃楽器として使われる

『琵琶』

という楽器について、まずは大まかな概要を把握していきたいと思います。

この楽器は、日本では元々語りに合わせて使われたもの。なので歴史は古いですが、様々なコラボレーションがなされるようになった現代音楽においても意外と聞く機会が少ないのではないかと思われます。「琵琶法師」や「耳なし芳一」などで楽器としても結構有名だと思うのに、ほんと琵琶を使ったBGMって意外とないんですよね。

なぜだろうか。この記事の終わりにはそれが少しはわかるかもしれません。(わからないかもしれない

 

 琵琶(楽器)とは

琵琶は、日本では今から1400年前(7世紀頃)に伝わったとされています。

日本の琵琶には幾つかの種類があるのですが、この記事ではDTMで和風の楽曲を作る上での琵琶という形を取り、以下5種類の琵琶、

  • 楽琵琶
  • 平家琵琶
  • 盲僧琵琶
  • 薩摩琵琶
  • 筑前琵琶

について、簡単な特徴を押えてみます。

 

琵琶の音

琵琶の種類によって主に絃を弾く撥が大きく異なる為、琵琶と一言で云っても結構音が違います。これは私の体感での感想になりますが、大雑把には、三味線によく似た音、またはその音より少し摺れたような、シャリっとした音という感覚でいます。そしてかなり難しい楽器であるということも。

日本琵琶楽協会のホームページに、現代の各流派における音源が確認出来ますので、音に関してはそちらを参考にされると良いかと思われます。

 

そして、ゲームなどでは『大神』の女郎蜘蛛の登場時のBGMや(筑前琵琶っぽい?)、

 

『戦国BASARA』の上杉謙信のテーマの冒頭の音などに使われているものがそうだと思います(多分)。

上杉謙信は歴史的にも琵琶の名手として有名で、現在でもその愛用していた琵琶「朝嵐」が、米沢の上杉神社稽照殿に保存されているそうです。何かと逸話の多い日本の軍神ですが、かなりの文化人でもあったというのはなかなか有名。

ちなみに謙信公の使った琵琶は四弦五柱のようなのですが、これは詳しくは直接上杉神社に赴いて聞いてみるしかなさそうです。いや~、一度訪れてみたい。

 

楽琵琶

雅楽の管絃催馬楽に使われる琵琶のこと。発祥はイラン、南アジアを経て唐より伝わった、日本では始めての琵琶とされている。

  • 奈良時代の形を今もほぼそのままの形で伝えている
  • 撥は最も小さい
  • 柱の間隔が狭い(ギターでいうフレットのようなもの)
  • “さわり”がない(ビィィン・・・と響く独特の音を出すための部分)
  • 雅楽ではリズム楽器として分散和音を奏で、各小節間の難しい間合いを繋ぐ役割
    → アルペジオ風に弾き、最後の音を次の小節頭の拍子に鳴らす、など

 

楽琵琶の音の参考動画。

雅楽では琵琶は派手な役割ではないのですが、これがあるとないとではやはり風情が違うように感じます。

 

平家琵琶

楽琵琶からの派生で、平家物語を語る時に用いられる。開祖は鎌倉時代の「生仏」とされ、“徒然草”によれば藤原行長の著した「平家物語」を生仏が語り出したのが始まりといわれる。

  • 撥は少し大きめ(杓文字型)で、先端が大きく開いたものを使う
  • 形は楽琵琶をほんの少しだけ小さくしたようなもの
  • 四弦または五弦があり、五弦目は四弦と音程は基本同じ
  • 平家琵琶を使った平家物語の語り物の音楽のことを「平曲」という
    → 雅楽琵琶と盲僧琵琶を統合したもの
  • 物語と弾きを合わせたのようにも

 

こちらは平家琵琶での平曲「那須与一」。

平曲にはこの他にも、「敦盛」「壇ノ浦」「祇園精舎」など、平家に纏わる有名な物語が沢山有り、琵琶のどこか物悲しい響きが合わさってとても聞き応えがあります。

 

また、平曲では語りに合わせて琵琶の弾き方、つまりコードと同じ意味を持つ旋律があり、それを弾くのだそうです。

 

盲僧琵琶

盲目の琵琶奏者、琵琶法師が用いる。

  • 細い形状が多く、笹琵琶とも呼ばれる
  • 柱の高さが高め(これは現代の改良によるもの?)
  • 音はとても柔らかめ
  • 平安時代には経文を唱える宗教音楽としての意味合いをもっていた
  • 平家物語や浄瑠璃など、様々な語りを持つ
  • 「平曲」が芸術性という意味での歌モノであるならば、盲僧琵琶は語りの合い間に鳴らすという印象

 

こちらの動画は、最後の琵琶法師といわれる山鹿良之さんの「羅生門」。語りを伝える為の場面に合わせて琵琶を使うという風なので、芸術音楽としての琵琶とはまた違った印象があります。琵琶よりもむしろ語りとその内容に聞き応えを感じてしまう。法師すごすぎる・・・。

雅楽の管絃などを宮廷の儀式的な音の使用とするならば、平曲は流れるような歌であり、盲僧琵琶は語りを中心とした効果音的な使い方をしているようにも見えます。ただ、琵琶法師にも色々な人がいたようなので、一概にそう言い切ることは出来なさそう。

 

薩摩琵琶

16世紀、盲僧琵琶が薩摩で改良されたものが始まりとされている。今年の大河ドラマの「西郷どん」にも出てくるのだろうか、最近見れてません(涙

  • 武士の力強さを歌い上げるために作り上げられた
  • 盲僧琵琶に比べて、胴が製で撥で叩き付けることが可能
  • 撥は平家琵琶よりも大型で扇型
  • 筑前琵琶の音楽要素を取り入れた「錦琵琶」が作られた
  • 現代では「鶴田流」が有名

 

こちらは鶴田錦史さんの「壇ノ浦」。平家琵琶と比べると、撥の大きさもあるのかやや派手めというか、非常に力強い印象があります。平家琵琶は主に、隆盛から没落にまで至る諸行無常を歌うのに対し、薩摩琵琶は元々薩摩武士の士気向上のために作られたものだそうなので、やはり力強さを一際感じるものであるように思われます。

また、鶴田錦史さんは男装をされていますが、女性の方だそうです。使っていた琵琶の名は「朝嵐」。上杉謙信の逸話といい、どこか不思議な感じがしますね。

 

筑前琵琶

明治時代、薩摩琵琶を研究して筑前盲僧琵琶を改良してつくられたもの。

  • 薩摩琵琶と比べると、歌と演奏がより一体となっている
    → 三味線音楽の要素が取り入れられている
  • 薩摩琵琶より、胴・撥共に少し小柄
  • 薩摩琵琶より、優しい音色
  • 女性奏者に人気

 

こちらは筑前琵琶奏者の田原順子さんの平曲「祇園精舎」。

音色としては、薩摩琵琶に比べて叩き方が少し優しいこともあるように思えますが、どこか柔らかく、歌いながら演奏していることも多く、現代音楽に親しんでいる側から聞くと、一番聞きやすいのではないかなと。薩摩が男性的だとすれば、筑前は女性的であると思われました。

 

おわりに

今回、琵琶について調べてみたところ、思った以上に歴史や種類が多く、これだけを把握するのにも時間がかかってしまい、音作りまでとても入れなかった。

ひとまずここまでの内容を私の感覚でまとめてみると、

  • 楽琵琶・平家琵琶は伝統的(儀式的)
  • 薩摩琵琶・筑前琵琶は音楽的
  • 現代では筑前琵琶が一番聞きやすいかもしれない
  • 主に語りに合わせて使われることが主流
  • 平家の武士が琵琶を使った流れからか、戦乱の諸行無常さを強く感じる
  • 音は三味線に近いが、種類によってかなり違う
  • 奏法は難易度高めと思われる
    → 打ち込みも多分難しめ
  • 現代音楽との融和性は低め
    → 雅楽以外での、他の楽器との合奏があまりないため

 

・・・こんなところでしょうか。琵琶が雅楽以外で合奏としてこれまで加わっていない経緯としてはやはり、

  • 語り物の楽器としての文化が古くからあったため

というのが一番の理由なのではないかと考えました。平家物語は800年以上経った今でも愛されている物語。そういう点で、琵琶の仕事はもう古くから地位を確立していたのだろうと思われます。

それに、音色が似ている三味線は16世紀頃に始まったとされる、琵琶から見れば割と新しい楽器。三味線も伝統はありますが、琵琶から見るとやはり楽器としては自由度が高くみえるのかもしれません。

 

今のところ、琵琶を使うのは思った以上に難しいというのが率直な意見。そんな簡単に使えるとも思っていませんが、現在、予想以上に歴史や用途に奥の深いものをとてもとても感じております。というか平曲などの語り物に聞き入ってしまって、楽器の分析が・・・。

 

最後に今回、琵琶について画像を探していたのですが、琵琶は琵琶でも果物の方ばかり出てきました(笑

おかしい・・・楽器の方ももっと有名かと思ったんだがー

 

それでは、今回はこんなところで!

 

【DTM】雅楽の打楽器『太鼓』『鉦鼓』について知っていく【和楽器】

雅楽で使われる3つの打楽器、

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

今回は、「太鼓」「鉦鼓」の2点に絞って見ていきたいと思います。前回の羯鼓の記事についてはこちら。

 

太鼓

「太鼓」の文字は現代でも広く使われていますが(和太鼓、太鼓の達人など)、この記事では雅楽で使われる『太鼓』という風にみていきます。

 

雅楽の太鼓は、正式には「釣太鼓」(楽太鼓)と呼ばれるものを使います。釣太鼓は主に管絃使われ、舞楽では大太鼓が使われることが正式なようですが、大太鼓は非常に大きく、また正式な雅楽舞台が必要とされるということで、舞楽でもこの釣太鼓が使われることも多いそうです。

持ち運び易い釣太鼓の方がなにかと使いやすいのでしょう。ですが買うとなると100万円くらいしたりする、今の私から見たらびっくりするような高級品。

 

また、大太鼓には、左方の舞楽で使われるものには、

  • 日輪
  • 三つ巴

右方の舞楽では

  • 月輪
  • 二つ巴

と、左舞・右舞それぞれの世界観・宇宙観があり、装飾の剣菱紋様がまるで裏表のように描かれています。

最初、この「日輪の三つ巴」「月輪の二つ巴」の分け方を知ったとき、私はかなりの衝撃を受けたのですが、そのことはひとまず割愛します。DTMには特に関係がないので。(何があった

 

太鼓(釣太鼓)の打法

  • 左の桴で弱く叩くことを「(ずん)」
  • 右の桴で強く叩くことを「(どう)」

また、右の桴で「百」を打つと太鼓の皮の振動が大きくなるので、その余韻を防ぐために、打ったあと両方の桴の先を皮に付けて振動を抑えるのだそうです。

 

こちらはEastWestの「RA」という音源に入っていた太鼓での「図・百」。

 

・・・えらい見辛いですね。音源を持っていれば、

EW Ra → Far East(東洋)→ Perc(パーカス)→ Taiko Drm(太鼓)

という風に入っている音を無加工でそのまま。

太鼓音源には音が沢山入っているので、自分が求める音に近い音として今回はG4に配置されている音を使いました。特にこだわりがなければ事前加工はしなくてもいいかと。

 

こちらのサンプルはXpand!2025 PercussionTaiko Drums Big 1+での図・百。

 

音は特に弄っていません。しいていうならDecayで余韻の調整をするくらいでしょうか。

さすがに釣太鼓のビリビリという振動音まではこの辺の調整では再現になりませんが、太鼓の音にプラグインなどでDistortionを極薄に掛けて、「一風変わった擬似振動を作り出してみる」というのも面白いのではないかと思います。

 

音はF6をチョイス。釣太鼓の音は若干高めの音なんですかね、私はそう感じました。

 

雅楽における太鼓(釣太鼓)の役割

さて、奏法なのですが、現代では打楽器は主に曲のリズムを刻むイメージがあると思いますし、大多数の楽曲ではそういう使われ方をします。

そしてポピュラーな打楽器である和太鼓なども、聞いていると叩き方には様々あることがわかるのですが、雅楽で使う釣太鼓に関しては以下、このような記述がありました。

多くの雅楽曲では、太鼓の奏法自体にリズミカルな役割を持たせてはいません。特に唐楽で奏する太鼓は、それぞれの楽曲で予め決まっている小拍子の数(小節数)毎に打つという、一種の区切りを表す役割を持っています。

出典:歌舞管弦 -太鼓- より

つまり、雅楽の管絃・左舞などでは太鼓はリズムを刻むという役割ではなく、節目の合図的に使われる(百を打つ)ことが主流とのこと。

ですが、雅楽の中でも右舞では、三ノ鼓もリズミカルな傾向があるのと同様、太鼓にもリズムが感じられるような使われ方がされるそうです。

 

・・・確かに、管絃・左舞・右舞それぞれを聞いていると、上記の通りそういった傾向が感じられました。基本的には儀式を重んじる楽曲ではそんなドンドコドンドコやらんということですね。

 

もしDTM的に言えば、

  • 都の貴族のいる街やお上のBGMなら太鼓は節目に威厳的に打ち
  • 町民やわいわいやってるお祭りのBGMならドンドコやる

といった使い分けをするとわかりやすいでしょうか。というか私がそう分けて使ってるだけなのですが。

 

大太鼓の音を創作して遊ぶ

上動画は釣太鼓とは別で、大太鼓が使われる例なのですが、これを見て最初めちゃくちゃ笑いました。弱く叩く「図」はともかく、強く叩く「百」はマジ殴りレベルなんですよ。奏者の被り物が若干ずれるくらいの(笑

音の質はというと、ガツンというよりはカツンといった感じのかなり硬めな印象。太鼓を叩くというよりはピストルの発砲音の方が近いかもしれません。

ちなみに屋内で大太鼓が使われている雅楽の演目をみた限りでは、普通に大きく低く響く太鼓の音が出ていました。大太鼓にも色々あるようです。

 

これは動画の音の再現ではなく、そのイメージから創作的に作った大太鼓の音。Xpand!2内で3つの音を重ねて簡単に作ってみました。ちと軽めですね。

 

  • 音程を感じさせない打撃音にClap
  • 太鼓の大きさをイメージしてThunder Drums+
  • バチンという音に若干の追加が欲しくてBig Snare+

という風に音作りを楽しんでみます。少し効果音的な音作り。これだけだと別段どうということのない音の印象ですが、例えば、Reverv timeを5秒くらいに伸ばしてサイズも広めに取ったリバーブをがっつり掛けてやると、

 

結果、全然大太鼓ではない(笑)んですけど、これはこれで別の用途がありそうな風に仕上げられたりはします。(リバーヴのお陰とかいわない

複数の音を一つの音として聴けるように仕上げる訓練ということで、参考程度に載せておきます。

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]遊び心も大事だねぇ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]左様[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu6.jpg” name=”シブ君”]・・・波平さん?[/speech_bubble]

 

鉦鼓

管絃での鉦鼓は「釣鉦鼓」と言われ、高めで硬く、重い金属音が鳴ります。そして大きな音は基本出さない。

はっきりとした音程の無い効果音的なサウンドという扱いでここでは見ていきますが、これはシンセ音などで音作りをするより、この音に近い金属的な打楽器音源の音で置き換えるのが一番早い気がします。

鉦鼓の材質は青銅または黄銅製で作られているらしく、検索してみると真鍮(黄銅)製のものが多い印象でした。金属については全然詳しくないので、ここでは高めで硬く、そして重い音が出るという点を押えておきたいと思います。

 

鉦鼓の打法

  • 片手で摺る「(きん)」
  • 両の手で摺る「金金(ききん)」

鉦鼓は叩く・打つではなく「摺(す)る」といいます。また、「金」「金金」も「チン」「チチン」と表現されたりもするようです。雅楽の曲を聞きこんでいけば細かな使い所は見えてきそうですが、今回はこの2点を基本として押えます。

 

鉦鼓を敢えてCelestaなどの音で代用してみる

早速近しい金属音を手持ちの音源で探してみたのですが・・・なんか見つからないんですよね(笑)。幾つかの動画を見るに、軽く摺っても随分と密度の高さを感じる重たい音が出るので、そのまま置き換えても鉦鼓の音に聞こえない。

そんなわけで、敢えてXpand!2内にあるCelestaの音を使ってコンプとEQを使い、鉦鼓の音にどれだけ迫れるかを試してみました。

 

・・・はい、まず笑っちゃうくらい軽い音のサンプルが出来上がりました(笑

 

使った音色は017 MalletsCeleste Hard+。Xpand!2内ではリリースを短めにしたくらいで大きな変更はしていません。Hard+と表記があったので、これは硬いだろうと思ったのですが、全然硬さが足りない。なんという密度の違いだ。

 

この音に掛けたコンプの設定です。がっつり深めにかけてますが、原音が軽いのでコンプにも限界はある。Attackは16msec辺りが良さそうではあったのですが、もっと自分の耳が鍛えられたら変わってきそうな気はします。

 

ちなみにリファレンスの鉦鼓の音の倍音成分に似せる為、ピークの強かったところに近似的に音を置いているのですが(上画像)、やはり音程感がはっきりしてしまっているので、金属を叩く音としては聞こえにくいですね。

 

なので、ここから、打ち込んだ10音それぞれの音程を全てリファレンスの倍音周波数に合わせるためにピッチを全て変え、更に上からコンプで潰した結果がこちら。

10音それぞれのピッチを全てずらした為、先程よりは音程感が薄れ、金属的な響きのようにはなりました・・・が、一つのまとまった音としては聞こえない

 

これは自分で作った音の周波数特性。

リファレンスの周波数の高さ(出力)に合わせてはいるのですが、やはりこの見た目だけ揃えても上手くいかないですね。元が違う音だし、原音のピークの分布はもっと細かく多いですから、当り前といえば当り前。

うーむ、代表的な箇所を見つけて真似れば近似できるかと思ったけど、金属音はそう簡単にはいかないのか。

 

というわけで、上記の状態から見た目の周波数を気にせず耳で一つの音として聞こえるよう各音の音量を調整した結果がこちら。

まだ若干バラつきは感じますが、これならギリギリ一個の音としての響きに聞こえなくもない。

 

ただし、一音一音全てのピッチをずらす作業を行う為、今回の場合Xpand!2の音源を計10個立ち上げることになってしまって、なんかもう大変なことになりました。

こうして音作りをする場合、曲を作りながらこうして立ち上げて音作りするのではなく、別プロジェクトで鉦鼓なら「鉦鼓の音」を作り上げてWAVなどで書き出し、以降はその一つのファイルのみを読み込んで使っていくのが至極当り前のやり方かと思われます。

・・・でないと、CPU処理が後々えらいことになりますし(笑

 

いや~、金属音難しいな~!!(笑

 

雅楽における鉦鼓の役割

鉦鼓も、太鼓と同じように、管絃・左舞では釣鉦鼓が使われ、右舞では大鉦鼓が使われるそうですが、やはり大鉦鼓もモノが大きい為か釣鉦鼓が良く使われるそうです。大鉦鼓は低い音が鳴り、釣鉦鼓のように小さい鉦鼓は高い音が鳴ります。

鉦鼓の役割は、太鼓が大きな節目を知らせる役割を持つとすれば、鉦鼓は小さな節目を知らせる役割を持つとのこと。またこちらも桴をもって摺るのですが、羯鼓や太鼓の一瞬後に音として続く形をとる。これは、鉦鼓の音が思ったよりも目立つため、その分控えめに使われるということのようです。

 

・・・なるほど、鉦鼓がそもそも控えめであるなら、先程私が作った下手な鉦鼓の音でもなんとかなるかもしれませんね!(いいのか

 

まとめ

太鼓

  • 弱く叩く「
  • 強く叩く「
  • 雅楽では曲の節目に鳴らす(小節の頭)
  • 儀式的な楽曲ではドンドコ鳴らさない、静かにドンッと打つ
  • 色んな太鼓音源ですぐに代用可能
  • 大きい太鼓は低い音小さい太鼓は高い音

鉦鼓

  • 1回摺る「」(チン)
  • 2回連続で摺る「金金」(チチン)
  • 大きな音では基本鳴らさない
  • 雅楽では曲の小さな節目に鳴らす
  • 重く硬い音が特徴的
  • 案外代用出来そうな金属音が見当たらない
    → 頑張って探す
  • 太鼓・羯鼓に続いて控えめに鳴らす
  • 大きな鉦鼓は低い音小さな鉦鼓は高い音

 

・・・さて、これで雅楽の3つの打物についての基本的な知識は押えられました。少しずつ楽器の役割と使い所が見えてみて、これを楽曲制作に活かすのがとても楽しみな私がいます。

学びは多分一生終わりませんが、それを表現してこその学び。一個ずつ丁寧に見ていきたいところです。

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]あれ、ぼくたち今回全然出番なかったね[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]ネタを入れつつ流れ作っていくのも大変だから、少しずつでいいんじゃないか?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]ま、ねー[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]しょうがない、許してあげましょう[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]それじゃ、またな![/speech_bubble]

 

【DTM】雅楽の打楽器『羯鼓(かっこ)』(鞨鼓)の音作りと打ち込み方【和楽器】

今回は、雅楽で使われる打楽器の

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

の3つの打楽器のうちの一つ、羯鼓についての打ち込みについて書いていきます。本当は3つ全部やるつもりだったんですけど、結構記事が長くなってしまったので今回は羯鼓のみとなってしまった。

 

雅楽の打楽器

雅楽では打楽器を「打物(うちもの)」と呼び、その演奏スタイルの一つである“管絃”で使用される打物は、

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

の3つ。「羯鼓」の字は、昔は羊の皮が使われていたためで、今はそれ以外の革も使われる為「鞨鼓」とも書くそうです。張られた革を桴(ばち)で叩いて音を鳴らします。

また、この“管絃”の他に“舞楽”というものがあり、この舞楽には、

  • 左方の舞楽(唐楽)
  • 右方の舞楽(高麗楽)

と2種類あります。

 

今回の題材となる羯鼓はその“管絃”“左方の舞楽”で使われ、“右方の舞楽”には、羯鼓の代わりにそれによく似た「三ノ鼓(さんのつづみ)」と呼ばれる打物が使われます。

三ノ鼓の羯鼓との違いは、

奏法に違いがあり、右手には太い棒状の桴(ばち)、左手は楽器の調緒(しらべお:鼓面を結んでいる紐)を持って演奏します。一回あるいは数回打つ奏法(帝(テン)/帝帝(テンテン))しかなく、「鞨鼓」のように連続して打つことはありません。

引用:http://www.gagaku.net/Gakki/uchimono.html

と、打ち方のバリエーションは羯鼓に比べて少なく、またどちらかというとリズミカルに鳴らす打物のようです。

これは左方(唐楽)と右方(高麗楽)の系統の違いから見ていくと更に理解が深まりそうですが、今回は「羯鼓」についての音作りや打法の打ち込みなどをメインに見てので、ひとまずこの辺りに留めておきます。

 

羯鼓

次に、羯鼓の楽器としての役割と打法をまとめます。

雅楽における羯鼓の役割

  • 楽曲の指揮者のような存在
    → 熟練の奏者が主に担当する
    → 打楽器としての位は第一位
  • 曲全体の流れやその速度の進行を担う
  • 曲の終わりの合図も受け持つ

 

羯鼓の打法

打法は、ここでは動画の流れに沿って2つに大別します。

  • 一度だけ叩くのが「(せい)」
  • もう片方の手で叩く速度を少しずつ上げていくのが「(らい)」
    → 片方の手でそれを行うのが「片来(かたらい)」
    → 両方の手で交互に叩くのが「諸来(もろらい)」

尚、打法を3つで言い表す場合は「来」をまとめずに、「正・片来・諸来」と分けます。

 

羯鼓の奏法

上の動画は「正、片来、正、諸来」という流れ。越殿楽の始めもこの「正、片来、正、諸来」なので、3つの打法が入った一番基本的な型なのかもしれません。

また、羯鼓の奏法としては、以下「鞨鼓八声」という八つの代表的な型があるとのこと。

▼鞨鼓八声

  • 「阿礼声」(あれいせい)・・・調子という楽曲に用います。 (是調子ノ打方ナリ)
  • 「大掲声」(だいかっせい)・・・延八拍子の楽曲で用います。 (延八拍子ノ打方ナリ)
  • 「小掲声」(しょうかっせい)・・・早四拍子の楽曲で用います。 (早四拍子ノ打方ナリ)
  • 「沙音声」(しゃおんせい)・・・早八拍子の楽曲で用います。 (早八拍子ノ打方ナリ)
  • 「璫鐺声」(とうとうせい)・・・輪台、五常楽破で用います。 (尋問抄曰、中八拍子ノ打様ナリ)
  • 「塩短声」(えんたんせい)・・・序吹の楽曲に用います。 (序ノ打方ナリ)
  • 「泉郎声」(せんろうせい)・・・延四拍子の楽曲で用います。 (延四拍子ノ打方ナリ)
  • 「織錦声」(しょくきんせい)・・・六拍子の楽曲で用います。 (六拍子ノ打方ナリ)

参照:歌舞管弦 – 羯鼓 – より

雅楽の曲を本来の伝統に沿って作製する場合などはこの辺りも掘り下げて学んでいく必要はあるかとは思いますが、ひとまずここでは「正・片来・正・諸来」という基本と思われる奏法と、古代の文献にもある8つの伝統的な奏法があるのだということを押さえておきます。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・正

まず打法「正」の音をサンプルとして作ってみました。

これは動画にある羯鼓の音などを参考に、EZX LATIN PERCUSSION / BOXという音源のC#3・Bongo2の音をEQ加工して高めの音が特徴的な具合に作ったものです

 

ちなみにこちらがLATIN PERCUSSIONの加工前のBongoの音。これだけ聞くと、ああ、ボンゴだなって感じです。

 

羯鼓の音作りはボンゴなどの高い音が出る音源で代用

羯鼓は打物の中では直径も小さく、割と甲高い音が鳴るので、このようにボンゴなどの音を使って代用できるかと思います。

最近和楽器のソフト音源が増えてきているので、もしかしたら羯鼓の音源もあるのかもしれませんが、私もまだ詳しく調べ切れていないのと、手持ちで再現できるならその方が早いと思って加工して作りました。単音ですしね。

 

Bongoの音から羯鼓の音へのEQ加工の図例。

リファレンスの音と元のBongo音の差をCubase内のStudioEQを3つ使い、元音に近づけつつ、聞いて違和感のないくらいまでもっていきます。原音はもう少し1~5kHz辺りも出ていましたが、加工用のボンゴでそこをブーストするとキンキンして私の耳が「それはダメ」と言っていたのでそこは抑え目に。

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]こういう加工をする場合は、周波数だけをそのまま似せても原音の通りになるわけじゃないから、最終的には自分の耳で判断するといいよ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]おっ、急に登場とはやるな[/speech_bubble]

 

作った羯鼓の音の周波数特性

作った擬似羯鼓の音の周波数波形。音のピッチにもよりますが、今回の音では550、690Hz辺りが一番よく出ていて、継いで350、990Hz周辺、そして1.5k、2.5kHzという感じです。あと、見えてはいませんが100Hz辺りを少し持ち上げてやると、ポンッという羯鼓を叩く独特の迫力が少し出てきます。

こうして音を近づける作業は、一側面ではあっても音の特徴が自分の中に経験値として蓄積されていきますし、新たな発見があってやはり楽しいですね。

[speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii3.jpg” name=”ルイー”]打楽器系の100Hz辺りは迫力が出るのか[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii5.jpg” name=”ルイー”]・・・フッ、俺も100Hz出すしかねーな[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]そうだね、君の顔下ほとんどないもんね[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]実は地上から若干浮いているのだ!![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu6.jpg” name=”シブ君”]・・・ドラえもん?[/speech_bubble]

 

「正」の打ち込み例

こちらは打ち込みの様子。BPM120の一小節を1/64に区切った状態です。EZX LATIN PERCUSSIONのBongo2ではベロシティの変化だけでは音が小さくなりきらなかったため、オートメーションをかけて音の消え入りを表現。

「正」の叩き方にもよるでしょうが、今回は動画を参考に9音使い、その間隔は頭の音から順に、

  • 92,80,80,80,75,90,70,100msec

と微妙に法則が見出せない感じとなりました。さすが手癖の間隔。

 

ちなみにこれを簡略化させようと、頭を揃えてから1/64でクオンタイズをかけてやると・・・

こんな感じに。これならまぁ、先程とそんなに違いはないかなぁという印象。他の音と混ぜれば多分わからない。

 

これをもっと簡素化しようと1/32でクオンタイズをかけてみると・・・

・・・大分ズレを感じるかと思います。

ただ、羯鼓の「正」らしい打ち込みを表現するなら若干簡略化しすぎかなと個人的には思いますが、そういうのを抜きにして打ち込み表現の一つとしては十分ありだと思います。新たな発見なら尚良し。ドラムのフィルの作り方とちょっと似てますね。

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]ポジティブ~[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]ぽじシブ~[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu3.jpg” name=”シブ君”]は?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii3.jpg” name=”ルイー”]わー、ダークシブの登場だー[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]・・・[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu7.jpg” name=”シブ君”]かわいい?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii4.jpg” name=”ルイー”]いや、かわいくはねぇよ[/speech_bubble]

 

最終的に表現者それぞれの好みや思惑で割と簡単に押し通せたりするのが音楽というものでもあるので、この辺は参考程度に見て下さい。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・片来

・・・このあと、何かがトトンと登場するようなイメージがどこかにありますね。

 

「片来」の打ち込みの様子です。「正」では、ドラムでいうスネアのゴーストノートを細かく見ていった形になりましたが、上画像では丁度良く1小節ごとの間隔で音の間隔が段々と狭くなっている。

DTMでの打ち込みでこれを表現する場合は、

  • 上画像のようにBPMを固定して音を段々狭めるようにおいていく
  • もしくは、音の間隔を固定してテンポを段々速めていく

の2パターンのやり方がオーソドックスかと思われます。要は自分のやりやすい方法でそれっぽく聞こえればOK

 

一例として、BPM固定ならばこうして「1/8・1/8の三連符・1/16・1/16の三連符」という風に、一拍置きに順に幅を狭めてからクオンタイズでランダム化を掛けるというやり方や、

 

バーッと同じ間隔で音を並べてからテンポトラックで段々速くするだけで「片来」の表現の基本形はできます。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・諸来

音として聞く分に「諸来」は基本的には片来と同じですね。

 

ただ「諸来」は、羯鼓を左右から交互に叩いて音を出す打法なので、細かい表現をするならば左と右の音のピッチ差を若干ずらすなどして僅かに音の違いを作ると、よりそれっぽくなるかと思います。なので、上のサンプルでは2つの音を交互に鳴らして作成しました。

 

スーペリアドラマー2.0で読み込んだラテンパーカッションの音作りでは、左と右の音でそれぞれ音源を立ち上げ、ピッチの部分のみを若干ずらす。基本はこれだけです。理由としては、「左の面」「右の面」それぞれに張られた“張りの強さ”は違いとして分けた方が自然であろうという考え方から。

また上画像では、ボンゴ音の頭の鳴り直後の余韻が少々大きすぎたように感じられたため、アタック感のみを強調するようエンベロープ調整をかけています。

 

ただ、実際に叩く音では、一面であっても、強さ、場所、空気感などで、厳密に言うと全く同じ音は出ません。なので耳で聞く分には、片来と諸来、どちらがどちらかなどそもそもわからないこともあるため、一音のみで諸来を表現しても特に違和感はないかと思われます。今のサンプラー音源なら毎回違う音が出るように設計されていたりしますしね。

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]最初にしっかり押えておけば、後で手間を省く時が楽ってことだね[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]でも、時間かかるならいっそ録音したほうが速かったりしないか?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]ま、ねー[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]サクッと録音で済ませられたらいいけどね[/speech_bubble]

 

・・・今回、羯鼓について少しだけ細かく見ていく形をとっていますがこれには理由がありまして、調べてみると、

演奏は難しく、長い年月を掛けて研鑚を積んだ雅楽家でも円滑に演奏することは容易ではないという。東儀俊美は、自然と音楽のリズムを把握する奏者でなければ、上手く羯鼓を演奏するのは難しいと指摘している。

引用:Wikipedia 羯鼓 より

というように、羯鼓の演奏にはかなり高度な技術や経験が必要とされるとあったから。

東儀俊美氏は代々雅楽を世襲してきた家系の熟練の雅楽師。その人をもってして「難しい」というのは、如何に羯鼓が雅楽において重要な役割を担っているかがよくわかる。

 

そんなわけで、DTMで打ち込みをするにしても力を入れておいたほうが自然だろうと考えて、羯鼓の初回にして少し気合を入れたというわけです。自分なりの敬意の表し方というのもありますが。

 

まとめ

今回の羯鼓について大雑把にまとめてみます。

  • 羯鼓が使われるのは、雅楽では“管絃”“左方の舞楽”
  • “右方の舞楽”三ノ鼓
  • 楽曲の中では指揮者(コンサートマスター)
  • 曲全体の流れやその速度の進行を担う
  • 曲の終わりの合図も羯鼓の仕事
  • 一度だけ叩くのが「(せい)」
  • 片方の手で少しずつ速度を上げて叩く「片来(かたらい)」
  • 両方の手で交互に速度を上げて叩くのが「諸来(もろらい)」
  • 代表的な奏法は「鞨鼓八声」
  • 音は少し高めで歯切れは良い
  • Bongoの音などで代用可能
  • 羯鼓の演奏次第で曲全体の絞まりが変わってくると思われる

 

こんなところでしょうか。

一応この記事では、雅楽の楽曲を本気で作るというよりは、もっとふわっと「和風の曲をDTMで作ろう」というものなのですが、折角なので一つの楽器ごとにこうして経験値を積み上げていくと、いつの間にか曲全体もクオリティアップ!!・・・という魂胆で進めていっております。

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]次は太鼓・鉦鼓について見ていくよ![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]てかさ、俺思いついちゃったんだけどさ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]羯鼓の音、俺の頭にお前をポコポコ当てればそれっぽく鳴るかな?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]・・・[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]何その自虐ライブ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]いやお前、四分音符の化身だろ、丁度いいじゃん[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu3.jpg” name=”シブ君”]そんな綺麗な頭に誰が乗るか[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii4.jpg” name=”ルイー”]え、それ褒めてんの?なんでキレてるんだ・・・[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu7.jpg” name=”シブ君”]それじゃーまたね![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii3.jpg” name=”ルイー”]相変わらず唐突だなぁ・・・[/speech_bubble]

 

【笙・Lv1】和楽器『笙』について一歩踏み込んで学んでいく【DTM】

和楽器である『笙』について、前回は鳴らせる音とそのコードである「合竹」の音と組み合わせについての触りを書きましたが、今回は笙を音色としてより使えるイメージを持つため、一歩踏み込んだ理解をしてみたいと思います。

 

笙の手移り

まず、笙の手移り(運指)について見ていきます。

ただこの記事では実際の笙を吹くわけではなく、「DTMなどで和風の曲を作るための自然な笙の使い方」を知ろうという方向性なので、運指というよりは、それぞれの指が担当する音を知る形といった方が適切かなと思います。

 

竹は、順番に、「千十下乙工美一八也言七行上凡乞毛比」と、ぐるりと円を描いて、並んでいます。

右手の人差し指で押さえるのが「比(ひ)、乙(おつ)、下(げ)」の竹。
右手の親指で押さえるのが、「千(せん)、十(じゅう)、工(く)」の竹。
左手の親指で押さえるのが「美(び)、一(いち)、八(はち)、言(ごん)」の竹。
左手の人差し指で押さえるのが「七(しち)」の竹。
左手の中指で押さえるのが「行(ぎょう)」の竹。
左手の薬指で押さえるのが、「上(じょう)、凢(ぼう)、乞(こつ)」の竹。

引用:築山桂オフィシャルサイトより

これをドレミファソラシド(CDEFGAB)の表記にすると、

  • 右手人差し指:比=C6、乙=E5、下=F#5
  • 右手親指  :千=F#6、十=G5、工=C#5
  • 左手親指  :美=G#5、一=B4、八=E6、言=C#6
  • 左手人差し指:七=B5
  • 左手中指  :行=A5
  • 左手薬指  :上=D6、凢=D5、乞=A4

という風になります。基本的には「一指一音」と考えていきます。

これにより「七」と「行」は指固定音であることがわかりました。この七(ラ)と行(シ)は全ての合竹で使われていて、合竹の主軸とも呼べる音と考えられます。これについては後述します。

 

手移りを色別で図にしてみるとこういう感じに。やはり図にした方がわかりやすいですね。「也」と「毛」は鳴らない前提です。

また、笙の各合竹の手移りについては穴守稲荷神社さんのサイトにある教則用資料が参考になるかと思いますので、リンクを貼っておきます。

  • 穴守雅楽会のページ一番下の教則用資料、楽譜:鳳笙の音取のPDF

 

笙という楽器の役割についてあれこれ

以下、笙の奏者であり、製作者でもある工房 西塔さんの「笙の研究」からの引用を中心に、笙についての理解を深めていく形をとっていこうと思います。

 

笙の音としての雰囲気

篳篥の音を笙の音が包み込んで天空へいざなって行く、その先導をするのが龍笛なのだ、という気がします。

雅楽の三管は、

  • 篳篥:主旋律を担当
  • 龍笛:主旋律もしくはその装飾(副旋律)を担当
  • 笙:その背景を和音で担当

という風にそれぞれの役割を持っているわけですが、雅楽では笙は篳篥の音に合わせて付いていくことが自然な流れのようですね。合竹などの和音で鳴らす場合は、曲全体を包み込むように上の方で鳴っているポジションが基本的には具合が良いようです。

 

笙の抑揚について

笙の吹き始めは静かに息を入れ、音が出るに従って強く吹くのは「先端をゆっくり動かしながら、その動きが厚みのある部分へ伝わって行くようにしているのです」(中略)一拍目はPPで、徐々にクレッシェンドし、四拍目がf かffになります。(中略)太鼓の「ズン」が鳴り、四拍目あたり、つまり「付所」の一拍前あたりから笙の主管が吹き始め、続いて皆が一斉に吹き始めます。 笙を構えるのは「付所の一小節前からゆっくり持ち上げ、三拍目の太鼓のズンのときに口に届くように」

雅楽では、楽譜の合竹もしくは音程の横に「●」黒丸が付いており、そこが太鼓の鳴る場所という意味で「付所」と呼ぶそうです。上記の内容を打ち込みで簡単に表現するとしたら、

こういう感じでしょうか。上画像では60が小節の頭で曲の入りだとしたら、実際に笙の音が鳴るのはその少し前からで、小節に入り段々音が大きくなり4拍目辺りで一番音が大きくなる。

笙の抑揚に関しては、雅楽の曲など実際に演奏されている曲を聴いて、自分の耳で自然なところを覚えていく必要はありそうですが、笙の音の入りはとても静かであるということを基本としてここでは押さえておきます。

 

蝉の声について

 

笙という楽器は、基本的には単音で吹く楽器ではありません。なぜならば、単音では蝉の声にならないのです。

これは「雅楽での本来の笙の使われ方」ということですね。そしてこの「蝉の声」という部分は、

 

明治時代の多忠龍楽師の書物に「蝉がジェージェー鳴いている中にチィーッという高い音が聞こえる。それをねらって作る」と記してあります。つまり、実音ではなく共鳴音ということです。(中略)
七・行の音がなぜ通奏音なのか、なぜすべての合竹に七・行が含まれているのか、ということを考える必要があります。この七・行が蝉の声を誘因するに違いないのです。

七(A5)と行(B5)の音は前述の通り、全ての合竹に含まれている音です。前回の笙の記事では単純に合竹の大まかな特徴として「全音間隔の組み合わせによる響き」と書きましたが、どうやらこの七と行の音が笙の合竹のキーとなるようです。

 

次に「七と八」の音を合わせて吹き、同時に鳴り出すようにするのがバランスです。バランスが良ければ、静かに吹きながら耳を澄まして聞きます。七の音でもない八の音でもない別の音が「チィーッ」と鳴っていたら、それが蝉の声です。聞き分ける方法は「八」を鳴らしてその音を意識しながら「七」を加える。「八」より高い音が鳴るかどうかということです。

七はB5、八はE6。完全4度の間隔ですね。笙のこの音程はかなり高いところに位置しますが、この二つの音で新たな音、つまり七と八を同時に鳴らして共鳴音が発生すれば古代の笙による蝉の音の再現が出来るということでしょう。

DTMではこの辺は自分の作るスタイルやジャンル、手間などで作りこみも変わってくるとは思いますが、笙の知識としては押さえておきたいポイントですね。

 

合竹を七と行を基本に分析してみる

笙の和音は基本的には十種類で、そのいずれにも「行(A)」ど「七(B)」の二つの音が通奏音として入っています。
その十種いずれもが「行」を中心にした3度5度8度に該当する協和音と、「七」を中心にした3度5度8度に該当する協和音との二種類を一つに合わせたものです。

とのことなので、まず最低でも全音間隔で開いている合竹「乞」を例にとってみます。

合竹「乞」の構成音は、乞(A4)、乙(E5)、行(A5)、七(B5)、八(E6)、千(F#6)。

ここで、行・七それぞれから各音を見てみると、

  • 行(A5):乞(A4)は1オクターブ下、八(E6)は完全5度上、乙(E5)は完全4度下。
  • 七(B5):乙(E5)は完全5度下、千(F#6)は完全5度上。

・・・なるほど、行と七の音を基本に考えると西洋音楽の考えと一致します。そうすると合竹はその行(A5)系和音、七(B5)系和音という二つの和声(コード)を同時に鳴らすことで共鳴音が重複されて神秘的な音となっているという考え方が出来そうです。

 

次に半音間隔のある合竹「下」を見てみます。

構成音は下(F#5)、美(G#5)、行(A5)、七(B5)、上(D6)、千(F#6)。

ここで、行・七それぞれから各音を見てみると、

  • 行(A5):下(F#5)は短3度間隔。
  • 七(B5):下(F#5)は完全4度下、美(G#5)は短3度間隔、上(D6)は短3度間隔、千(F#6)は完全5度上。

という風に、一見不規則に見えていた合竹にもきちんと音の配列から、確かな意味を感じることが出来ました。

ここで、引用先から

ところが「工(C♯)の一音だけは「行」列に対しても「七」列に対しても不協和音です。この「工」の音が入った「工和音」は本当の不協和音になります。

とある通り、合竹「工」は10個の合竹で唯一半音の重なりも2箇所あり、かなり刺激的な音となっています。

かなり綺麗に聞こえる「乞・一・凢・乙・行」は全音間隔で最低でも離れていて、初聴きはちょっと違和感のある「下・十・美・比」は半音の重なりが1つなので、C#5を基点とした「工」は合竹の中でも一番の不協和音の合竹といえそうです。

ただ、合竹「工」の構成音を見てみると、工(C#5)、凢(D5)、乙(E5)、美(G#5)、行(A5)、七(B5)。完全5度の美(G#5)が入っていて、濁っていながら綺麗には聞こえるという形はきちんと取ってるんですよね。それに乙と工、美と七は短3度(長6度)と相性も良く、真横でぶつかりながら音の統制は一応取れているとも言える。

そしてこの合竹「工」は、越殿楽・五常楽急(ごしょうらくのきゅう)・皇麞急(おうじょうのきゅう)の三つの楽譜に出てきているので、刺激担当としてはむしろ大活躍の合竹という印象があります。合竹の傾向などは、雅楽の曲や楽譜を見て経験値を積んでいくしかないですね。

 

合竹の各音のバランスについて

笙の「和音」を「合竹(あいたけ)」といいますが、「合」ですから共に出る音が対等でなければ、つまりバランスが良くなければいけません。

良い笙は、竹の音の鳴るタイミングと音の大きさもなるべく均一であることが望ましいようです。DTMではこれは好都合な点ですね。クオンタイズとベロシティに小さい範囲でランダム化を掛けるだけで良さそうです。

ただ、動画などで笙の合竹の音の鳴り出しを聴いていると、若干アルペジオっぽくバララッと入って聞こえてくることがあります。引用先では良い笙の基準からこれを「あまりよろしくはない」と述べられていますが、逆にDTMでは均一すぎてしまうので人の味として音のバラつきを加えた方がよりそれっぽい雰囲気は出そうです。

 

サンプル①:音の発生タイミングベタ打ち

なんかそもそもアタック無さすぎるような・・・なんだ、笙っぽくない。なんだろう。

 

サンプル②:音のタイミングずらし

あれ、結構ずらしたつもりなんだけど、頭の音量が小さいからかアタックが遅すぎるからか、あんまりバラッと入らなかったですね。他の音入ったらわからないというか、散らした意味ないレベルのような。

 

サンプル③:アタックとエクスプレッション微調整&ついでに合竹代えてみる

ああ、やっとバラつきはそれっぽくなった気がする。でも色々動画で聴いてきているせいか、この音あんまり笙っぽくなくなってきた気がするというか、イマイチじゃないか・・・?

次作る曲にこの音色を使って混ぜてみて、違和感あったら作り直そう。

 

雅楽のテンポは非常にゆっくり

そして以下は、引用先の工房 西塔さんの初心者の方に笙を鳴らすための基礎練習ということで記載されてあった内容からとなります。

時計の秒針を見ながら、一行(越天楽の八小節)を一分で吹くのです。吹いて吸って15秒、ズレがあってもかまいません。おおむね一行一分です。
雅楽は、ゆったり吹き始めて少しずつ早くなりますが、一行一分と思って練習しておけばたいがい対処出来ます。

これは雅楽の概ねの目安を知れるという意味では大変ありがたい内容。8小節60秒というのは、テンポで言うとBPM32。雅楽の楽曲がとてもゆっくりであることは体感理解はしていましたが、今までこの数値は見た事なかったのでちょっとびっくりしました。

そして32というのは2の5乗。どこか神秘の香りがしますね!(しませんか

 

気替えについて

笙には息継ぎという考えは無く、「吸う・吐く」の呼吸をしながら常に音を出し続けることが出来ます。この「吸う・吐く」の息を変えることを「気替え(きがえ)」といいます。

気替えに関しては、「一小節目4拍を吸う、次の二小節目4拍を吐く」という呼吸の時もあれば、一小節内に合竹が複数ある場合、その小節内で気替えを行ったりもするそうです。

DTMの打ち込みには特に関係はありませんが、気替えを行う前後での音の強弱の変化を知っておく分には損はないかと思い、メモ用に書いてみます。

 

楽譜に出てくる「引」について

「引」に関しては、宮内庁楽部の先生方は「苦しければ目立たないように気替をすればよい」と教えてくれます。ただ、四拍の息遣いで八拍吹ける道理はないので、「引」は音は小さくなるものと思って下さい。

これは笙の打ち込みには関係ないかもしれませんが、雅楽の笙の楽譜を見ると、合竹ではなくたまに「引」と書かれていて、これなんだ?と思っていた自分用の備忘録です。

 

手移りの流れ

曲に入り、指を二本以上動かすときは、高い音からはずして行き、先発の指が下げ終ってから次の指が動き始めるようにします。

例えば、越殿楽や五常楽急の楽譜に出てくる「十-下」の合竹などは、6音中2音を手移りで変える必要があります。

画像では音源の兼ね合いで本来より1オクターブ下げていますが、「十-下」では、E6→F#6、G5→G#5となるので、一本目の指で押さえている想定のE6を離してからF#6を押える(鳴る)と同時に、二本目のG5を押えている指を離しG#5に移る。こういう流れですね。

ただこれは、引用先では「初心者の為の基礎練習」とあり、こちらの「歌舞管絃」さんの笙のページには手移りの順序にはルールがきちんとあるとのことで丁寧に記載もされていました。

 

打ち込みでは実際の手移り等イメージしづらいところはあるかとは思いますが、脳内で「これはこう動く」と意識するだけでも大分違うはずなので、その参考資料にということでリンク記述しています。

 

まとめ

今回の『笙』について学んだことをまとめてみます。

  • 指の押える箇所は上図を基本
  • 曲全体を包み込むように上の方で鳴っている感じ
  • 音の鳴り始めはとても緩やか
  • 七・行の音は10個の合竹全てに使われている通奏音
  • 七・行の音は合竹の大事な部分
  • 笙の響きは蝉の声
  • 蝉の声は共鳴音で表現
  • 雅楽のテンポは非常にゆっくり
  • 各音の大きさ・タイミングはなるべく均等が良い

 

雅楽は日本伝統の音楽であり、また合奏が主体であることから、こうして独学で学んでいくのが難しいジャンルかもわかりません。雅楽の会それぞれに伝わっている部分もあるでしょうし。

ですが、どう転んでも理解が深まることには変わりない。それに曲を作る時「早速あの奏法試してみるぜ!」みたいに燃えてきて凄く楽しいんですよね。

 

まだ調べたいことが沢山あるので、これからも楽しみです。

それでは、今回はこの辺で。

 

 

箏についての歴史を少し掘り下げて知って箏を好きになろう計画

こんにちは。今回は「箏」についての知識を少しだけ掘り下げて見ていきます。

DTMでソフト音源として箏を鳴らす上では、歴史的な知識がなくとも実務的には問題ありません。が、私はその楽器の歴史的な背景を知っているだけでも力の入り方はやはり変わってくるので、多少時間は掛かってもなるべくこういった知識はつけていきたいと考えています。

 

箏とは

一般的に、「箏(こと)」と呼ばれ、「琴(きん)」の字を当てることもあるが、「箏」と「琴」は別の楽器である。

出典:Wikipedia「箏」より

和楽器に慣れ親しんでいない場合、上画像の楽器のことを「琴」と書いてしまうかと思います。かくいう私も少し前までは箏のことを「琴」と書いていました。

現在広く普及している和楽器である「箏」は、人型の形をした「柱(じ)」と呼ばれるもので音程を調節するもので、基本は十三弦。これは奈良時代に唐から伝わったとされるもので、龍の象徴とされていたそうです。

そして「琴」は、その柱が無く弦を押さえる場所で音程を決める楽器だそうです。

 

「箏」と「琴」が実はそれぞれ別の楽器だったとは・・・名称がごちゃまぜになっているだけじゃなかったんですね。今まで知りませんでした。

 

箏の起源

日本では、大まかに分けて

  • 弥生時代もしくはそれ以前の古代日本に存在していた「こと」
    →主に呪術的な意味合いがあった模様
  • 奈良時代、中国の唐より伝来した「こと」
    音を奏でる楽器的なものとして伝わった模様

と、2パターンの「こと」があったようです。

日本古代の「こと」は古事記にもそれを弾く描写があり、「和琴」の原型という形。またこの「こと」と思われる出土品が縄文時代の青森、滋賀、北海道の遺跡で見つかっているらしく、弥生時代のものと形も似ているそうです。

現在一般的に普及している「箏」は奈良時代、中国は唐の時代よりもたらされたものが原型らしいのですが、それとは別に元々日本に存在していた「こと」があったんですねぇ。その「こと」は呪術的な用いられ方をされていたらしいです。

 

・・・そういえば、雅楽の越殿楽も現代音楽から見るとかなり儀式的な要素を強く感じます。ギターと同じで音を出すことに関してはかなり汎用性の高そうな箏ですが、元々は神聖なものの表しとして静粛で厳かに使われていたようです。

 

また、琴という言葉に関しては、Wikiに、

『源氏物語』などの古文では、「琴」は、琴(きん)のほかに、箏、琵琶などすべての撥弦楽器を指している。このことは、明治時代に日本に新しい楽器が入ってきた際に、洋琴(ピアノ)、風琴(オルガン)、手風琴(アコーディオン)、自鳴琴(オルゴール)、提琴(ヴァイオリン)などと呼ばれていたことからも伺い知ることができる。

とあり、撥弦楽器の総称を「琴」もしくは「こと」と呼んでいたそうです。如何に日本で「こと」が古くからあって親しまれていたかがよくわかります。

 

生田流と山田流

現在、箏を学ぶ場合、二つの流派があります。それが生田流山田流

これは、江戸時代初期に楽器としての箏および箏曲の基礎を大成させた八橋検校(やつはし・けんぎょう)の後、江戸時代中期に活躍した生田検校山田検校をルーツとしたもののようです。

ちなみに「検校」とは昔、盲人に与えられた最高の官名のこと。江戸時代においては箏は盲目音楽家の専売特許だったようですね。

 

また、京都の「八ツ橋」というお菓子はこの八橋検校の功績を称えて(もしくは偲ばれて)作られたとか。三角形の生の方ではなく、硬いパキッとしたお菓子の方ですね。箏の形を模しているそうです。

 

生田流と山田流に話を戻して、この二つの違いを大雑把にまとめると、

生田流

  • 角爪
  • 楽器に対し左斜め約45度に構える
  • 独奏曲において技巧が発達
  • 上方(関西地方)を中心に発達

山田流

  • 丸爪
  • 楽器に対し正面に構える
  • 「歌もの」を多く扱う
  • 江戸(関東地方)を中心に発達

 

また、箏という楽器本体に関しては、

山田流式の方が音量が大きく豊かな音色である為、現在製作されている箏は一部を除いてほとんどが山田流式の箏

とのこと。

箏自体は浄瑠璃風の歌モノを中心として改良された山田流式が主流なようですが、私の知る箏を学んでいる人には生田流が多い印象があります。爪の形と座る姿勢は別ですが、実際演奏する楽曲などはそんなに大きな違いはないそうです。

 

簡単な生田流と山田流の見分け方

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]さて、ここで簡単な問題です!ジャンジャジャ-ン![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii7.jpg” name=”ルイー”]うお、俺たち忘れられてなかったのか![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]まぁ細かいことはいいのだよ。それより問題だから答えなさい。[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii4.jpg” name=”ルイー”]あ、はい・・・なんスか突然[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]この画像の人は、生田流山田流、どちらでしょ~~か?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]フン、簡単だ。答えは生田流だろう。[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii5.jpg” name=”ルイー”]爪が四角いからな・・・フッ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]はい正解~!素晴らしいね~その通り!![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]ちなみに生田流の斜めに座る理由は、角爪を上手く使う為だと言われているよ。[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]爪の材質はワシントン条約後の今でも象牙が主流だけど、最近はプラスチックや樹脂製とかも出てるのです。[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]あとルイーはただの三角形[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii9.jpg” name=”ルイー”]なるほどな~、そういう理由があったんだな。合点がいったぜ。[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii3.jpg” name=”ルイー”]・・・あれっ、今サラッと俺のこと小バカにした?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]以上、簡単な流派の見分け方でした~[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]生田流と山田流の簡単な歴史は「箏曲の二大流派〜生田流と山田流の違い〜」をどうぞ![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]あとルイーは顔三角形だけど実はアホ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii4.jpg” name=”ルイー”]え、三角形のとこ、実は褒めてたの・・・?[/speech_bubble]

 

『春の海』作曲の宮城道雄

前回の箏の打ち込みの記事でも記述しましたが、近現代で箏の楽曲で最も有名な人といえばやはり宮城道雄の名が挙がるかと思われます。作である「春の海」は、タイトルは知らなくとも誰もがどこかで聞いたことのあるであろう名曲。(上動画の箏奏者:宮城喜代子さんはその姪っこさん)

明治時代以降は当道制度が廃止されて、盲人以外でも箏の演奏が職業として認められたそうですが、宮城道雄(あえて歴史的人物と同じように敬称を略して書いていますが)は、幼き頃に失明した盲目の箏曲家とのこと。

 

箏の鳴らし方の動画でもお世話になった、伝統音楽デジタルライブラリーの吉原佐知子さんのこの演奏曲「水の変態」も宮城道雄作曲。この曲はあの伊藤博文も心を打たれたといいます。

 

Youtubeで探してみると宮城道雄作の箏楽曲がかなり出てきます。いやもう、ほんと聞き応えのある楽曲ばかり。奏者の方の演奏力も凄いのですが、なんだろう、開いた口が塞がらないまま聞き入ってしまう。

 

このように箏の静かな曲から激しい曲までなんでもこなす宮城道雄ですが、明治末から主に大正・昭和にかけて、邦楽全般の活性に力を注ぐだけでなく、西洋音楽を取り入れつつ、楽器改良(十七絃箏開発など)や楽譜の普及にも尽力。また文筆家でもあったなど、その活動内容は非常に幅広い。

現代音楽の礎の築きに宮城道雄が大きく貢献したことはまず間違いないですね。

 

箏の参考楽曲色々

Youtubeで見つけた箏の演奏を幾つか挙げてみます。

ジャンプSQの漫画「この音とまれ!」の作中の楽曲「龍星群」。六面(6個)もの箏での合奏はかなり迫力があります。箏がメインの漫画なんてなかなか無いでしょうが、その作中の楽曲が実際に、というと現実味が一気に出てきて良いですね。曲もかっこいい。

 

ロックバンド「メフィストフェレス」のギターを弾いている沢井比河流さん作曲の「絵空箏」。こちらも箏のみの楽曲で、箏の数は九面。ステージが狭く音が近いためか、グワッときます。箏が一面だけの楽曲が世には多いとは思いますが、そんな自分の中の固定観念が崩されるようなこちらも迫力のある楽曲。

 

こちらは25絃箏のさくらアレンジ。基本の13絃に更に12音もプラスして、鳴らせる音がかなり多くなっています。ただ、その分絃同士の間隔は狭くなっているようです。

十七絃箏は、十三絃箏に主に低音部分がプラスされているようですが、二十五絃までいくとどうなんでしょうね。低音だけでなく、平調子であれば中間部にFやA#の音を置いたりなど、欲しい部分を足すのだろうか。

 

こちらはアニメ「Naruto」の「Sadness and Sorrow」の箏演奏ver。アニメのナルトは見ていませんが、あの作品は忍者が主題ですから基本的に悲しいことばっかです。しかし、箏でナルトの曲を演奏すると更に雰囲気がそれっぽく感じられるのではないかと。

 

「和楽器バンド」で箏を演奏されている、いぶくろ聖志さんの箏のサポート動画。動画では箏の演奏に関する内容を紹介されていますが、動画の最初や最後に入ってくるいぶくろさん作曲の箏楽曲が実に心地良いです。

 

おわりに

以上、箏に関する私なりの大雑把な知識の掘り下げでした。

最初は、箏の木や絃の材質、各部の名称などを書いていったほうがいいのかなと思っていましたが、まだ箏に触れ始めたこの段階でそれをやってしまうと単なる暗記になりそうだったため、「箏を取り巻く歴史的な背景と今」を自分なりに簡単にまとめたらこうなりました。

・・・単に私が、歴史から辿ると面白味を感じるというだけなんですけどね(笑

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]・・・ということじゃった。めでたしめでたし[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]日本昔話風に締めるとは、やるなシブ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]おっけー、それじゃ今回はこんな感じで![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]おう、またな![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu7.jpg” name=”シブ君”]あとルイーは鼻くそでかすぎ![/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii4.jpg” name=”ルイー”]お前ほんと相変わらずだな・・・[/speech_bubble]

 

 

【DTM】KOTO NATIONで箏の打ち込みの基礎を学ぶ【和楽器】

今回は箏(琴)音源である「KOTO NATION」を使って、箏の基本的な奏法を打ち込みで作ってみました。

箏について調べてみたら、DTM界隈ではもはやお馴染みのこおろぎさんがすでに大まかな内容を記事にされていたので、それを見た上で箏の打ち込み内容について記述していく形をとってみます。

 

以下は、こおろぎさんの箏・KOTO NATIONに関する記事です。

KOTO NATIONを使った箏の奏法の基本的な打ち込み

演奏法の参考動画は、こおろぎさんの記事にもあった以下の「箏の音の出し方」などを解説する動画です。

このシリーズの動画を元に各奏法をKOTO NATIONで一つずつ打ち込んでみます。

 

まず、一番基本と思われる平調子・壱越(イチコツ)で箏の調子(キー)を合わせます。

箏の調子についてはこちら

箏の基本形は十三弦。通常、この13音を鳴らすことになります。

ですが、箏の音を固定させる役割の柱(じ)を演奏中に動かしたり、他に十七絃箏や25絃箏という弦の多い筝もあることから、強押し・弱押しによる音程の変化を除いても、このチューニングされている音以外を鳴らしても別段問題はないようです。割と柔軟に対応できる楽器らしい。

ただ、闇雲に鳴らしたい音を箏という音源で鳴らしてしまうと、肝心の箏らしさが失われてしまうので、曲に合わせて箏の調子を事前に決めておき、そこから+αとして音を増やす形が良さそう。(強押しの全音間隔より大きく空いてしまうと不自然になるなど)

ポイントとしては、実際に手元に箏があって「さあこれから自分の手で実際に演奏しよう」というイメージを持つだけでも打ち込みの嘘くささは多少緩和されるので、この辺りは常に意識していきたいところです。

 

KOTO NATIONのキースイッチ

KOTO NATIONには、

  • Koto(琴(平調子))
  • Bass Koto(十七絃箏(Cmaj))
  • Shamisen(三味線(地歌))

の3つの音源が入っています。

そのうち、Koto・Bass Kotoのデフォルトのキースイッチを以下にまとめます。青字は比較的多様するであろう部分です。

 

Koto

  • A0:SCRAPES (C1~C3)
  • G#0:HARD PLUCK (C1~C4)
  • G0:HARMONICS  (C1~C4)
  • F#0:TREMOLO  (C1~C4)
  • F0:PIZZICATO  (C1~C4)
  • E0:HITS  (C1~C4)
  • D#0:OCTAVES  (C1~C4)
  • D0:MORDENT SLOW  (C1~C4)
  • C#0:VIBRATO SLOW(v0~69)  (C1~C4)
  • C#0:VIBRATO FAST(v70~127)  (C1~C4)
  • C0:SUSTAIN(v0~115)  (C1~C4)
  • C0:MORDENT FAST(v116~127)  (C1~C4)
  • B-1:TONAL GLISS  (C1~F1)
  • A#-1:ATONAL GLISS  (C1~C4)
  • A-1:PHRASES1 (D1,G1,A1,A#1,D2,D#2,G2,A2)
  • G#-1:PHRASES2 (D1,G1,A1,A#1,D2,D#2,G2,A2)

 

※注1 vというのはヴェロシティのこと。例えばC0でv100のノートを置くとSUSTAINがONになり、v120だとMORDENT FASTに切り替わる。

※注2 (C1~C4)というのは、ピアノロールのその範囲内で音が用意されているということ

 

Bass Koto

  • F#0:WOOD HITS (C1~F1)
  • F0:TONAL HITS  (C1~G#1)
  • E0:SLIDES  (C1~B1)
  • D#0:GLISSANDO  (C1~A#1)
  • D0:PIZZICATO (A#0~G3)
  • C#0:MUTE (A#0~G3)
  • C0:SUSTAIN (A#0~G3)

 

このようにKOTO NATIONには、弦を爪で押し弾く音以外にも、ハープっぽい音やボディを叩く音など色々入っています。ただ、そんなに使う頻度は多くはなさそう。他にもVIBRATOなどはジャラジャラ鳴らす方が筝っぽいので私はあんまり使わないかも。

 

右手の奏法

それでは、KOTO NATIONを使って一つずつ奏法を確認していきます。まずはメインで音を奏でる役割を持つ右手から。

 

すくい爪

すくい爪とは、爪の裏側で弦をすくい上げて弾く奏法のこと。

意外なことにKOTO NATIONには、爪の裏側で弦を掬い上げて弾くような、そういった擦り音の混じった音が基本入っていません。なので、すくい爪で音を出していると仮定した場合、通常の押しで鳴らす音と区別させなくてはいけないように思いました。

サンプルの1フレーズ目は、すくい爪の部分を敢えて「D#0:OCTAVES」で表現し、2フレーズ目は単純に全て「C0:SUSTAIN」音のヴェロシティの変化だけで表現してみました。「D#0:OCTAVES」の音は本来オクターブ上の音を同時に鳴らしている合せ爪的なもので、確かに違いを出すという意味では正解ですが、すくい爪としてはやはり違う感じですね。

 

ただ、すくい爪には上記の擦り音を含んだものと、あまり擦り音を含まない音を出す弾き方、両方を含むそうなので、ここは素直にヴェロシティの変化で表現するで良さそうです。

 

押し合わせ

押し合わせとは、隣り合った弦の片方を右手で押して、もう片方の弦と同じ音にして2本同時に弾く奏法

単音よりも鳴りや弾きの音が重なり合って、インパクトもあるし、これだけで情緒が感じられます。不思議だなぁ。

そしてこういった時の音の打ち込みは、基本msec単位でのずらし調整になります。耳で聞くと比較的音がずれていることはわかるものなのですが、打ち込むとなると「こんなに極小の差なの!?」と実感するのは、DTMで生っぽさを追及したことのある人なら誰でも一度は思ったことのある感想ではないかと。

人間の耳は精度がいいですね、ほんと。

 

かき爪

かき爪とは、中指で隣り合った弦を2本同時に掻くように鳴らす奏法

先に鳴らした音と後で鳴らす音のノートは基本くっつけておきます。もしくは一つのノートをハサミツールで切るだけでもいいかも。

またこの動画から、五(D)と六(D#)を同時に鳴らすことを自然に行っていることから、半音重なる音を同時に鳴らすことは割と普通であることがわかります。この音の重なりに対する捉え方は、西洋音楽とはかなり違う点ですね。

また、初歩的なことかもしれませんが、仮に前後の音にこれくらい隙間があった場合、耳で聞くと一度ぶつ切りに聞こえてしまうことがあります。指で同じ場所を鳴らす2度目は、弦が弾かれて音が出るまでの一瞬弦の振動が止まるのは事実なのですが、それは本当に一瞬なので、ここは素直にノートを繋げておいたほうが自然に聞こえます

私の耳の感覚とKOTO NATIONのリリース具合では、単音で0.03秒くらい空ける分にはパッと聞いて繋がりに違和感はギリギリなく、0.07秒くらい空くと「あ、切れてるな」という感覚でした。・・・なんにせよ、くっ付けてしまって問題ないと思います(笑

 

合せ爪

合せ爪とは、親指と人差し指or中指、二つの指で2本の弦を同時に弾く奏法

挟み込むようにして少し弦の間隔を空けて、1度と5度上、もしくはオクターブで鳴らすことが多いようです。上画像では、1フレーズ目のオクターブ鳴らしを「D#0:OCTAVES」で、2フレーズ目は「C0:SUSTAIN」でオクターブ重ねを打ち込んでいます。

どっちもあまり変わらない印象なので、素直にOCTAVES使っちゃって良さそう。

 

流し爪

流し爪とは、親指の爪で高い音から低い音へグリッサンドする奏法

箏の代表的な奏法。やっぱりこれですよね~筝といったら。

この流し爪と、次に続く引き連の表現は、KOTO NATIONには「B-1:TONAL GLISS」として用意されています。1フレーズ目はそれをそのまま使い、2フレーズ目はSUSTAINで一音ずつ打ち込んでいます。

用意されているTONAL GLISSは、

  • 上から下へ(流し爪)
  • 下から上へ(引き連)
  • 下から上へ行ってまた下にいく(引き連→流し爪)

に、各々早いタイプとゆっくりのタイプの計6種類あります。ここで更にヴェロシティを弄ることで音の強弱も付けられますが、やはり既に用意されているフレーズのため細かい音の配置や音量調整は出来ません。なので、TONAL GLISSを使う場合はバックが賑やかな曲などで使い、抑揚を付けたり、より臨場感のある箏の表現をしたい場合は一個ずつ手打ちした方が良さそうです。

流石にこのフレーズを用意されているモノから細かく弄るのは無理があるでしょうから、そこは致し方ないところですね。

 

引き連

引き連とは、流し爪とは逆で、中指で低い音から高い音へグリッサンドする奏法

動画では「真ん中を弾かないこともある」とのこと。なるほど、勉強になります。

こちらはTONAL GLISSを使わず、全部一個ずつ打ち込んでいます。やはり流し爪・引き連は箏の代表的な奏法であると思われる為、出来る事ならこれの打ち込み感覚を経験値として身につけておき、ここぞという時に必殺技のように使いたいところです。

多分その方がTONAL GLISSの使い所もわかるはずなんですよね。力の抜きどころが見えるというか。

 

裏連

裏連とは、高い音でトレモロ(同じ音を連続で小刻みに鳴らす)をしてから、低い音へグリッサンドし、最後に2~3本の弦を弾く、という一連の流れの奏法

サンプルでは、1フレーズ目のトレモロには「F#0:TREMOLO」を、2フレーズ目では通常音の「C0:SUSTAIN」で表現しています。

トレモロには爪の裏と表、つまりすくい爪と押し爪が交互になっているので2フレーズ目のSUSTAINのみだと違和感出るかな?と思ったのですが、案外聞けますね。ただし擦り音がないのでデメリットとしては少し綺麗に聞こえてしまうくらいでしょうか。トレモロに関しては、

  • 「F#0:TREMOLO」を使うと、音は良いけどトレモロ中の抑揚が作れない
  • 「C0:SUSTAIN」を使うと、抑揚は付けられるけど少し音が綺麗すぎる

という、それぞれのメリットとデメリットがありました。TREMOLOを使う場合、オートメーションで抑揚を書いてやればいいのかもしれませんが、個人的にはSUSTAINで手打ちした方が手間は省けそう。

 

すり爪

すり爪とは、一指し指・中指の爪の裏側で2本の弦を右から左へ擦り、元へ戻す奏法

KOTO NATIONには「A0:SCRAPES」にこの弦を擦る音が色々入っていますが、用意されている音にはぎゃんぎゃん擦っている効果音的なものが多く、また最初に右から左へ擦る音が入っていないというか、それらしい音がなかった元へ戻す音は問題なく使えそうです。

すり爪をDTMの楽曲で使う機会はほとんど無いような気もするのですが、最初の右から左へ擦るまっとうに使えそうな音がなかったのはこれも意外だった。

 

散し爪・輪連

散し爪とは、中指の爪の側面で弦を擦る奏法輪連とは、人差し指と中指で一と二の弦を擦る奏法

KOTO NATIONにはこの擦りながら出す音というものが入っていないため、残念ながらKOTO NATION単独ではこの二つの奏法は表現できません。(多分

仮にこれを表現する場合は、違う音源の擦り音を合わせて同時に鳴らすなどする必要が出てくるかと思います。自分の手間と相談するか、箏姫かぐやを使うなど。

 

かけ爪・半かけ爪

かけ爪とは、人差し指→中指→親指の流れで鳴らす奏法。基本は人差し指2音・中指2音、親指1音の計5音で、「強・弱・強・弱・強」という抑揚のバランスがある。また半かけ爪とは、この内第2音(弱)と第4音(弱)の音量がゼロ、つまり弾かない形とのこと。

ポイントはこの強弱であることらしく、頭の人差し指はしっかりと響く音を鳴らすようです。この指のリズムも筝の特徴なのかもしれません。ちなみにかけ爪の譜面上の特別な明記法はないようです。

 

割り爪

割り爪とは、隣り合った2本の弦を人差し指と中指で順に2回に分けて弾く奏法

動画ではそれにプラスして、その後に親指でオクターブ上を弾くと述べていますが、頭のジャンジャンという部分が割り爪の基本部分のようですね。

 

左手の奏法

続いて左手の奏法に入ります。主な役割は音の鳴りの幅を広げるといったところでしょうか。もちろん左手でハープのように音を鳴らすこともあります。

 

押し手(強押し・弱押し)

奏者からみて、柱(じ)の左側の弦を左手で押すことで、音が高くなります。

強押しは全音(一音)分高くする時弱押しは半音高くすることをいいます。

サンプルでは前半部分をそのまま打ち込みしたケース、後半はピッチベンドで全音・半音変えた状態にしています。動画を見る限りではかなり音がはっきりしていた印象があったため、ピッチベンドで表現しなくても良いような気もしました。

ただそうすると作り手側があとで振り返った場合、どこで強押ししてるかわからなくなると思われたので、ここは多少めんどうでもピッチベンドで強押し・弱押しを表現することを心がけたい気がします。またその場合、その部分だけ別トラックにKOTO NATIONを新たに読み込ませて、ベンドが効いている弦とそうでない弦とで分けることになります。

 

後押し

後押しとは、弦を弾いた後で左手で音の余韻を高く上げる奏法

押し手と同じ要領ですね、これはピッチベンドで表現します。ピッチを細かくカーブを書かなくともほぼ後押しの効果は得られたので簡単でとても楽。クリック二回で済みます。

押し手では、ピッチベンドによる音の経過音は無いようにしますが、こちらの後押しではその変化する音を聞かせるようにする形になります。

 

押し放し

押し放しとは、押し手や後押しをした後に左手を放し、余韻を変化させる(元に戻す)奏法

サンプル2音目がそうです。これもピッチベンドでサクッと表現します。

 

突き色

突き色とは、右手で弦を弾いた直後に左手で弦を突くように放して余韻の変化を作る奏法

筝ならではの音色ですね。この音は「C0:MORDENT FAST」がそうで、C0のヴェロシティを116~127にすると自動的にこの突き色の音になります。「C0:SUSTAIN」はヴェロシティ0~115

 

揺り色

揺り色とは、一つ目に、押し手をした状態から弦を鳴らした後に素早く放しと押しを連続して行う奏法。二つ目に、左手で柱のすぐ左側の弦を揺らす奏法

サンプルでは、前半部分に一つ目の揺り色。後半部分に二つ目の揺り色を表現しています。

押し手を使った揺り色はピッチベンドで表現し、揺らす揺り色は「C#0:VIBRATO FAST/SLOW」を使います。SLOWはv0~69、FASTはv70~127(v=ヴェロシティ)。

 

引き色

引き色とは、弦を鳴らしたあと、柱のすぐ左側を柱の方に引っ張って弦をたるませ、音を下げる奏法

音のリリース具合から、ノート長後ろ1/4辺りを1/4半音下げるくらいが丁度良い気がしました。音が下がっていることがギリギリわかるくらいが良さそう。

 

消し爪

消し爪とは、奏者から見て柱のすぐ右側の弦に、人差し指の爪をかすかに触れさせて弾く奏法。動画では爪に触れるわずかな振動音から、ハウリングのような響きを感じさせる音が紹介されています。

この奏法音はKOTO NATIONにはそれらしきものが該当しなかったので、せめて近いであろう「E0:HITS」でサンプルは代用しましたが、これはNGでしょう。名前からそれらしき「G0:HARMONICS」の音も試してみましたが、これもNG。

というわけでKOTO NATIONでは消し爪の音は無いものと考えます

 

ここまでの奏法を学んだ直後のサンプル楽曲

はい、ここまで学んだ直後に、箏の独奏をババッと作ってみましたババッと。

抑揚はヴェロシティのみで表現してみました。いや~、頭でわかっているだけで全然身体に染みこんでないことがよくわかるサンプル曲となってしまいましたね。当り前なんですけど。

本来、きちんと聞かせられるようなレベルの曲を置いた方が私の体裁は保たれるのかもしれませんが(笑)、これは「箏を学び始めた直後のLv1の状態」ということで形に残しておくことにしました。

あとで聞き返してこのサンプルに何も違和感を覚えなかった場合、その時点で自分のレベルが上がっていないということになるはずなので。

 

春の海の耳コピ

記事終わりの箏サンプル曲が上のものじゃあんまりだろうということで、箏の楽曲として有名な「春の海」を耳コピしてみました。冒頭部分を聞くと、「あ、これどこかで聞いたことある!」と思うかもしれません。

箏に関しては、ヴェロシティで基本的な抑揚を作り、その音の質の違いなどで補いきれない部分はボリュームをオートメーションの書き込みでちょいちょい上げ下げしています。

耳コピのサンプルが途中で終わっているのは、そもそも箏の練習のつもりで耳コピしていたのに、箏よりも和楽の楽曲のテンポの取り方や尺八の抑揚の方に時間を取られてしまい、予想以上に長丁場になりそうだったからです(笑

尺八の音源選定もまだ済んでいないというのもあるのですが。

・・・というわけで、「春の海」はこちらの動画で堪能して下さい。

いや~~~、この手の耳コピは相変わらず大変なんですが、やっぱり勉強になるなぁ・・・。

 

おわりに

まだ箏に慣れ親しんでいない状態ではありますが、現時点で使っていくと箏らしい、もしくは実際に大事そうな奏法は、

右手

  • すくい爪
  • 押し合わせ
  • かき爪
  • 合せ爪
  • 流し爪
  • 引き連
  • 裏連
  • かけ爪
  • 割り爪

左手

  • 押し手
  • 後押し
  • 押し放し
  • 突き色
  • 揺り色
  • 引き色

・・・でしょうか。というかKOTO NATIONで表現しにくい奏法を除いた全部を書いただけのような。

ただ、箏の歴史はとても古いもので、今に伝わる奏法はそれぞれの意味や鳴らしどころの役割がしっかりあるはずなので、どれが良いとか悪いとかはないでしょう。一個ずつ使い所を理解していって、自然な箏の使い方が出来るようにこれから勉強していきたいと思います。

 

最後に、今回のレッスン動画の奏者の方の演奏の中で、個人的に好きな動画を載せてみます。タイトルとは裏腹にかなり激しくロックしているような雰囲気もあり、情熱を感じて凄くかっこいい。

 

それでは!

 

【DTM】雅楽の三管の一つ、横笛の『龍笛』を学ぼう【和楽器】

雅楽で仕様される3つの管楽器、『笙』、『篳篥』、『龍笛』。

 

今回は「龍の鳴き声」と称される横笛、

『龍笛』

について、簡単にどういう楽器なのかを見ていきたいと思います。龍笛については音色はフルートとほとんど変わらないので、今回は音作りはしていません。

 

龍笛とは

雅楽の楽器の中では広い2オクターブの音域(E5~D7)をもち、低い音から高い音の間を縦横無尽に駆け抜けるその音色は「舞い立ち昇る龍の鳴き声」と例えられ、それが名前の由来となっている。

出典:Wikipedia 龍笛より

とのことで、素晴らしくかっこいい。

龍(竜)については、古代中国が起源とされているようですが、

  • 西洋では身体の太いタイプの地上型「竜(ドラゴン)」
  • 東洋では細長く、水中もしくは空にいるタイプの「龍」

と認識が分かれているのは面白いところ。

 

そしてこの横笛は古くから非常に人気のある楽器だったようで、古代日本では奈良時代から始まり、平安時代でも公家・武家共に好まれ、いくつかの書物にもよくその名が出てくるそうです。清少納言も篳篥とは正反対の大絶賛で、牛若丸(源義経)の持つ笛もこの横笛。

とにかく親しまれていたことだけは確かで、持ち運び易くてメロディも奏でやすい。また音色も優しく響くので、これで人気が出ないわけがないですね(笑

 

大神に出てくるウシワカもこれを持ってます。なぜか陰陽師で中途半端な英語を使いながら、これで叩っ斬ってくるウシワカイズヒア。

 

 

龍笛の長さはおよそ40cm。上のイラストでは5つですが、龍笛の指穴は7つ

「歌口」と呼ばれる吹き口には蝋が仕込まれていて音程などを調節し、その上の部分には笛を吹くための重心調整と音量を上げるために鉛が仕込まれているそうです。

 

そしてこの龍笛は「横笛」と言われ、横笛には龍笛の他に、

  • 高麗笛:約36cm。指穴6つ。龍笛よりも細く、高い音が出る(2度上)。狛笛とも。
  • 神楽笛:約45cm。指穴6つ。龍笛よりも太く、低い音が出る(2度下)。大和笛とも。

があります。

 

この3種類の横笛は、

  • 龍笛(りゅうてき)は、奈良時代から平安初期にかけて中国大陸より伝来した、宮廷の娯楽や儀式的に使われた「唐楽」
  • 高麗笛(こまぶえ)は朝鮮半島より伝来した「高麗楽」や、平安時代の東国の風習を取り入れた「東遊(あずまあそび)」
  • 神楽笛(かぐらぶえ)は、神を祭る、神の降臨の儀式・お祭りの「神楽」

で、使われるとのこと。

それぞれ異なる伝統があるようですが、今回は大まかにどういった用途で使われるかの把握に留めておきます。

 

 

ちなみに「能管」といって、龍笛に良く似た横笛がありますが、こちらは

「龍笛は能管の原型であるが、能管には龍笛にはない「のど」と呼ばれるものが笛の内部に入っており、音を出しやすくしてある」といわれます。

出典:雅楽-gagaku-あれこれ 龍笛と能管の違い より抜粋

とのこと。また上の動画によると、能管は合奏には向かず効果音的使用として用いられるということのようです。能管は龍笛の派生楽器らしいのですが、とても奥が深いですね。

 

 

龍笛の主な役割

龍笛は、音階も広く(E5~D7)篳篥よりも優しい音を出すことから、主に副旋律を担当。ただ、その使用をみるに、主旋律である篳篥を装飾するだけではなく、時としてその主旋律にいることも多いように思います。

 

また、雅楽の楽曲の始まりを司る役割もあり、楽曲の頭には、まずこの龍笛から演奏が始まるのが基本のようです。楽曲や調によって常にそうであるとも限らないようなのですが、基本は「龍笛から始まる」と、ここでは押さえておきます。

 

 

龍笛の音をフルート音源で代用

Youtubeなどで龍笛の音を確認してみたところ、高音なためか、

  • Xpand!2のフルート音色
  • Hollywood Orchestra・Woodwindsのフルート音色

と音色自体はほぼ変わらない印象を受けました。ただ、息の吹きぬけるようなわずかなブレス音が欲しいとは思ったのでPan Fluteを重ねようと考えましたが、Xpand!2にそれが無かった。それにXpand!2のフルート音、龍笛として考えるとビブラートが掛かりすぎている。

 

なので、今回龍笛の音はEASTWESTのハリウッドオーケストラのフルート音源でそのまんま代用してみます。

龍笛の音はあまり大きくビブラートが掛からない音の伸びを感じるので、ビブラートがあった場合、振れ幅は小さく、またどちらかというと細かい周期の音色を使う必要があると思いました。なるべく伸びの感じる音色で代用すると良いかもしれません。

そして、音色は龍笛と似ていますが、このサンプルの場合、音が綺麗過ぎる気がする。龍笛のあの独特の息の吹きぬけるようなブレス的な感じがない。

 

RAに入っていたPan Fluteでところどころのノート頭のブレス部分だけを追加。少しはマシになった気がしますが、RAのPan Fluteは音階が足りないため、欲しい音のブレスを鳴らせないのが痛い。

 

音色代用で作った笙と篳篥の音も混ぜてみます。こう聞くと篳篥の音にパンチが無いですね。重ね合わせているのに雅楽のような雰囲気が感じられない。うーん、この篳篥の音だと多分、清少納言に「耳にやかましい」と言って貰えないだろう。どうしたものか。

 

篳篥の音の打ち込みを少し変えてみました。さっきよりは少し篳篥っぽさが出たような…?(私の中の清少納言はまだ不満げではあります)

 

篳篥の打ち込み図。ボリュームの抑揚をトータルで上げ・下げ・上げにしてみたのと、ピッチベンドで伸ばす部分のノート頭をかなり大げさに書いてみました。ハンパに上げるよりもがっつり素早く上げてやった方がそれっぽく聞こえたんですよねぇ。

 

 

こちらの、初めて篳篥を吹かれた動画を拝見すると、弱く吹いてもしっかり音程は保たれているように思えるので、ノート頭をピッチベンドで下から少し持ち上げてそれっぽく聞こえるのは、耳のトリックなようです。

 

打ち込みでは、音色によって実際の原理通りに弄ってもそれっぽく聞こえないこともしばしばあるので、こうして実際とは違う音の動きを加えて耳の錯覚を使うこともよくあります。あくまで近似操作にすぎないのですが、結果的に「篳篥のそれっぽくなった」のなら、それはそれで良しと私は考えます。

 

 

まとめ

ひとまず龍笛についてまとめますと、

  • 副旋律を主に担当(主旋律にいることも多い)
  • モノフォニック楽器
  • 音階はE5~D7と広め
  • 音の立ち上がりの息の吹きぬける音が特徴的
  • 音色はフルートにかなり似ている
  • ビブラートはあまり大きくかからない
  • 音は優しく、親しみやすい

 

フルートの音を龍笛として使う場合、かなり音色が似ているのでそのまま代用してもいいかなとは思いますが、工夫が出来るのであればそうした方が更に雰囲気は出るかと思います。

いきなり作りこみが過ぎると、肝心の龍笛を使うことに嫌気が差さないこともないので、今回はこのくらいにしてみます。徐々にでいいんです。下手に見栄は張らない。

 

それではー

 

【DTM】Xpand!2を使って和楽器『篳篥』の音作りをしてみる【雅楽】

雅楽の三管と呼ばれる、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)。

 

今回は、その吹き物の一つである、

『篳篥』

という楽器ついて、DTMで楽曲を作っていく上でどのような楽器なのか、どんな役割があるかなどをまとめてみます。

篳篥もまた笙と同じく音源が全然出回っていない楽器なので、似ている音色を代用して使うことにしました。「GARRITAN WORLD INSTRUMENTS」には入っていましたが、国産ではまだ私は確認出来ていません。SONICA INSTRUMENTSさんのような和楽器専門の音源として是非欲しいところですよねー。

 

 

篳篥とは

雅楽では、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)と篳篥をまとめて三管と呼び、笙は天から差し込む光、龍笛は天と地の間を泳ぐ龍の声、篳篥は地に在る人の声をそれぞれ表すという。篳篥は笙や龍笛より音域が狭いが音量が大きい篳篥は主旋律(より正しくは「主旋律のようなもの」)を担当する

出典:Wikipedia 篳篥より

実際の雅楽の曲調ではあまりそういう印象は受けないかもしれませんが、例えるなら歌モノでいうボーカルの役割を果たしているといえばわかりやすいかなと。

 

長さは18cm。見た目はとても小さいのに、非常に力強い大きな音が出ます。そして楽器としての構造はオーボエに似ている。

 

音域は、西洋音階のソ(G4)から1オクターブと1音上のラ(A5)が基本だが、息の吹き込み方の強弱や葦舌のくわえ方の深さによって滑らかなピッチ変化が可能である。この奏法を塩梅(えんばい)と呼ぶ。

上の動画でも言っているのですが、「いい塩梅だなぁ~」というのはここから来ているようです。面白いですねー、歴史の謎を一つ解き明かした気分です。

音階はG4~A5とありますが、実際Saxなどの音色で当ててみるとこれも音的に1オクターブ高かったので、Cubaseなどで打ち込むときはG3~A4という風に1オクターブ下げて音を当てていきます。鳴らせる範囲は狭いですね。

 

力強い音が印象的な一方、こちらの動画のように、柔らかで甘い感じのする音色も特徴的。音の繋がりが非常に滑らかです。

 

そして面白いのが、

篳篥にはその吹奏によって人が死を免れたり、また盗賊を改心させたなどの逸話がある。しかしその一方で、胡器であるともされ、高貴な人が学ぶことは多くはなかった。

とあり、清少納言も「耳にうるさい」みたいなことを言っていたようなので、平安時代では甘く優しい音の出る篳篥というよりは、どちらかというとラッパみたいな印象のある音として使われていたのかなぁと思いました。

胡器の「胡」とは「えびす」のことで、いわゆる辺境に住む民族のこと。古代日本だけでなく、古代中国でも「胡」は”文化性の低い野蛮な民族”という意味として、中央政権からはこの言葉が使われていたらしいです。あくまで文書を残した国家から見た評価なので、そんな野蛮ではなかったとも思うんですけどね。想像を膨らませると面白い(笑

 

歴史としては、大石峯良(平安時代中期の人)が「篳篥の楽祖」とされ、平安時代には主に大篳篥が使われたがその後用いられなくなり、再び使用されるようになったのは明治時代だそうです。

一般的に言う篳篥は「小篳篥」になるので、「大篳篥」については今回割愛します。

 

 

篳篥は単音・モノフォニック

篳篥には笙のような単独での和音発声はありません。モノフォニックです。

そして篳篥はダブルリードなのですが、このダブルリードという意味は、

ダブルリードは、乾燥させた葦を削ったものを二枚重ね合わせて作られ(篳篥の場合は、乾燥させた筒状の葦の茎の一端を潰して削る事によって作られる)、これを楽器の吹口に取り付けて吹くことで振動させる。

出典:Wikipedia ダブルリードより

ということで、こういった吹き口が二枚重ねの作りになっている楽器の総称のこと。一本で2つの音を同時に出せるとか、そういう意味ではありません。

 

 

篳篥の音作り・サックスの音色で代用

篳篥の音源が少なくとも今、私の手元には無い。それは事実。

ということで、今回もXpand!2を使って篳篥の音を再現してみます。別にXpand!2でなくともいいのですが、私の中でXpand!2の音は結構汎用性の高い音といいますか、加工するにも融通が利くイメージがあるんです。

他には例えば、先日購入したKONTAKTシリーズのライブラリの中に入っていたAlto Saxophoneなど、キンキンさがキュッと詰め込まれたような音色でなかなか良さそうだとな思ったのですが、なんとAttackパラメータがなかったという。

そういうわけで、Xpand!2を使うことにしました(笑

 

サンプルは平調・越殿楽(越天楽)を参考にしています。

なんだろう、お豆腐屋さんみたいでもある(笑

 

音色は016 Brass+Woodwindの「Baritone Sax+」に、同じく「Alto Sax+」を小さく重ねがけしています。Attackは結構遅めに設定し、Releaseも気持ち遅めにしています。アタックをあまり遅くしすぎると篳篥らしさが失われてしまうのと、リリース少し伸ばした方が音と音の繋がりが滑らかになりやすいので、そうしました。

 

これは一例ですが、篳篥の周波数特性は力強い時はこのような形になっていました。

 

なので、Xpand!2の音にまずディストーションを薄っすらかけてから、このようにEQで足りない部分をかなりブーストしました。いつもなら最終ミキシングで削る帯域である、1.5kHz、2.5kHzを逆に、狭めたQで持ち上げてやり、その後に薄くコンプを掛けました。

 

・・・ミキシングでは普通はこんなEQの持ち上げ方はしないとは思いますが、一つの音作りの場合では、私はちょくちょくやってます。違和感が出ない程度に

ハチプロ(SC-88pro)を使っていた頃の癖でレゾナンスとかもXpand!2のコンソールで弄れたら良かったんですけど、それは無かったのでEQで済ませてみています。

 

 

折角なので以前音作りした笙の音も一緒に重ねてみます。進行は「凢・一・乙・乙」。

まだまだ納得のいく音にはなっていませんが、雰囲気は出てきたのではないだろうか。

 

今回の打ち込み画像。

cc7メインボリュームで抑揚をつけることにし、頭のピッチベンドをちょこっとだけ弄りました。ベロシティは、Attackはそんなに欲しくないけど音のキンキンさは欲しいので、強調したいところはMAX。少し消えていく感じを出したい部分は下げ目に。

 

 

まとめ

現時点での篳篥についてをまとめると、

  • 主旋律を担当
  • モノフォニック楽器
  • 音階は基本がG5~A6(打ち込みでは1オクターブ下に)
  • 音の立ち上がりや繋ぎは滑らか
  • 強い音ということが特徴的(柔らかい音も出せる)
  • 野生的であり、雅で艶やか
  • 柔らかい音の時はどこかエロい
  • 原理はオーボエに近い

 

構造がオーボエに近いということもあるので、立ち上がり感の似ているオーボエで代用してもいいのかもしれません。Saxは音こそ似ていますが篳篥に代用するにはAttackが強すぎるので。

そして篳篥はリードを司るだけあって、抑揚の取り方がやはり肝になると思いました。これからもっと研究していこう。

 

最後に、甘い音色の篳篥の動画を載せておきます。かっこいい・・・

 

それでは。

 

【DTM】Xpand!2を使って和楽器『笙』の音作りをしてみる【雅楽】

こんにちは、MAKOOTOです。

最近、三味線や民謡などに触れる機会があり、またそろそろ本格的に和楽器を主体とした楽曲を作っていこうと思うので、自分の知識の整理・底上げも兼ねて和風の楽器や楽曲などについての記事を書いていこうと思います。

 

手始めに今回は、雅楽の楽器の一つである

『笙』

についての音色と合竹(コード)、そしてどういった楽器なのかを簡単に書いてみます。

笙はですね~、昔からずっと気になっていた楽器で、その音色が非常に神々しくて好きだったんです。ゲーム「大神」をプレイした時に、いつかこの楽器を使った楽曲を作ってみたいとずっと思っていました。現物はまだ手に入れられてはいませんが、今は自分に出来ることをやろうと勉強しています(笑

 

笙とは

日本には奈良時代ごろに雅楽とともに伝わってきたと考えられている。雅楽で用いられる笙は、その形を翼を立てて休んでいる鳳凰に見立てられ、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれる。(中略)その音色は天から差し込む光を表すといわれている。

出典:Wikipedia 笙より

音色を聞けば、「ああ、これか~!」とすぐにわかると思います。非常に神秘的で神々しい音色

この楽器は、

17本のうち15本の竹管の下部に付けられた金属製の簧(した:リード)を振動させて音を出す。

とあり、パイプオルガンのリード管と同じ原理。また、ハーモニカと違って、息を吹いても吸っても音が鳴るというものです。

 

17本の竹の出音とそれぞれの名称は上図の通り。

ちなみに、

也・毛は、奈良時代の笙では簧(した)が付けられていたが、現行の笙では通常簧が付けられておらず無音であり、外観を整えるために竹が残されている。

伝来当初ははG6、はD#5であったが、現代音楽等ではをA#5、をF5として簧を付けた特別仕様の笙が使われることもある。

とのことで、「也」と「毛」は基本無音だそうですが、ここでは一応出た場合の音も記載しています。

 

この図では、

  • 左が「也:G6、毛:D#5」(伝来当初)
  • 右が「也:A#5、毛:F5」(現代・特別仕様)

を加えた笙の全音階です。

 

こちらの動画では、上画像の右側の方の音階と同じですが、古来の方(左側)では「Eb・F・Bb」は使われておらず、C音もC6のみですね。F音はGを基音とした呂旋(ミクソリディア)である双調(そうじょう)のみに入っています。そして雅楽における六調子では主に「D・A・E・B」の4つの音がよく使われるそうです。

 

 

笙の合竹

合竹(あいたけ)とは、笙で作る和音のコードのようなもので、5音・6音で構成されています。全部鳴らす場合もあれば、一音ずつ重ねていく場合もあります。

 

ここで、

「十」と「比」を除き、構成音のうち最も低い音の管名が合竹名となっている。行と七の音は全ての合竹で用いられ、逆に言(C#6)の音はどの合竹にも入っていない。

とあり、またこの合竹の最も低い音は旋律を司るともあります。

言(ごん)の音はC#6。言の音は笙で鳴らすことは出来ますが、合竹(笙のコードのようなもの)には使われないということですね。また、工(く)の音はC#5なので、こことも区別が必要になります。

 

以下、Xpand!2にあるハーモニカ音源の音をそのまま代用して、ひとまず音の雰囲気を感じ取ってもらうくらいのサンプルとして合竹を載せてみます。ちなみにWikiで見たままの音の位置をそのままXpand!2で鳴らしたところ、実際の笙の音より1オクターブ上の感じがしたので、Xpand!2のハーモニカ音源では1オクターブ下げて鳴らしています。

そして、基音となる部分を太字にします。「十」は下から2番目、「比」は下から3番目が基音となり、「十(双調)」は六調子の内の双調のみで仕様する合竹とのことです。

 

乞(コツ)

構成音は、乞(A4)、乙(E5)、行(A5)、七(B5)、八(E6)、千(F#6)

 

一(イチ)

一(B4)、凢(D5)、乙(E5)、行(A5)、七(B5)、千(F#6)

 

工(ク)

工(C#5)、凢(D5)、乙(E5)、美(G#5)、行(A5)、七(B5)

 

凢(ボウ)

凢(D5)、乙(E5)、行(A5)、七(B5)、八(E6)、千(F#6)

 

乙(オツ)

乙(E5)、行(A5)、七(B5)、上(D6)、八(E6)、千(F#6)

 

下(ゲ)

下(F#5)、美(G#5)、行(A5)、七(B5)、上(D6)、千(F#6)

 

十(ジュウ)

下(F#5)、十(G5)、行(A5)、七(B5)、上(D6)、八(E6)

 

十(双調)

十(G5)、行(A5)、七(B5)、上(D6)、八(E6)

 

美(ビ)

美(G#5)、行(A5)、七(B5)、比(C6)、上(D6)、千(F#6)

 

行(ギョウ)

行(A5)、七(B5)、上(D6)、八(E6)、千(F#6)

 

比(ヒ)

行(A5)、七(B5)、比(C6)、上(D6)、八(E6)、千(F#6)

 

 

笙の音作り・ハーモニカ、アコーディオンの音色で代用

笙の音源は、調べてみても「コレ!」という音源が意外と出てきません。日本だけの楽器ではないので、ワールドエスニック総合音源みたいなものには入っているかとは思いますが、私はまだ見つけきれていません。

ですので、笙を音色として再現する場合、似たような音色であるハーモニカ・アコーディオンの音源で代用して、簡易的に笙の音を表現することにしてみます。楽器の原理も近いですしね。

 

以下は、Xpand!2のハーモニカ・アコーディオン音色で笙に音を似せるよう加工したサンプル曲です。

進行は、雅楽では有名な「越殿楽」の頭の進行をお借りして「凢・一・乙・乙」

進行だけを真似て合竹を置いただけで、実際の越殿楽の鳴らしではありません。

打ち込みはひとまずこのような感じ。息の流れと手移りがちと不透明で、ノートの伸ばし方はかなり勘が入ってるので参考にはせずに(笑

 

EQとディストーションを薄掛けして音作りをしてみましたが、実際の笙の音が生み出す艶やかなあの音とはやはり結構違いますね。統一感のある倍音成分の表現までは流石に音源にもよりますし。

その道の人が聴いたら「違うかな」と感じるとは思います。ただ、他の楽器と混ぜて雰囲気を出す分には、私はひとまずこれでも十分だろうと思います。そもそもハーモニカ等違う楽器音源で代用しているのだから、そこは致し方ないところ。

 

具体的な音色は、Xpand!2の020 Ethnicの「Harmonica+」と、それに小さく「Tango Accordian+」を重ねました。弄った箇所はHarmonica+の「Room Amount」を少し絞って広がりを消したくらいで、音量調節以外何もしていません。

 

 

まとめ

改めて笙の合竹を見ると、D・E・A・B音が頻繁に出てきているのがわかります。これは雅楽の六調子によるものなのですが、今回は笙の音色と和音に焦点を当てる形にして、雅楽についてはまた別の機会に記事にしようと思います。手移り(指運び)も実際のものがないとかなりわかりにくかったので(笑)

ちなみに、雅楽の調以外で笙を使う場合は、「D・E」、「A・B」、「E・F#」など、高域での全音間隔の音の重なりによる響きが笙の音の特徴の一つとも言えると思われますので、この構成音に合った調で曲を作ると良さそうかなと考えます。

今回の内容をまとめると、

  • D・E・A・B音は頻繁に出てくる
  • 高域なので合竹の不協和音はあまり気にならない
  • 全音間隔の組み合わせによる響き
  • 合竹(コード)は5・6音構成
  • 音の立ち上がりは緩め、音の消え入りも緩やか
  • 独奏も可能
  • ハーモニカ・アコーディオン系音源で代用は可能
  • 原理はパイプオルガンと同じ
  • 神々しい音色が特徴的

 

・・・といったところでしょうか。ざっくりすぎる気もしますが、ひとまずこれで「笙という音色」は使える形になるのではと思います。音色もそうですが、むしろ笙の表現には抑揚の方が大事な気がしますね。

 

最後に、笙職人さんの動画を載せておきます。

 

それでは!