【DTM】KOTO NATIONで箏の打ち込みの基礎を学ぶ【和楽器】

今回は箏(琴)音源である「KOTO NATION」を使って、箏の基本的な奏法を打ち込みで作ってみました。

箏について調べてみたら、DTM界隈ではもはやお馴染みのこおろぎさんがすでに大まかな内容を記事にされていたので、それを見た上で箏の打ち込み内容について記述していく形をとってみます。

 

以下は、こおろぎさんの箏・KOTO NATIONに関する記事です。

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KOTO NATIONを使った箏の奏法の基本的な打ち込み

演奏法の参考動画は、こおろぎさんの記事にもあった以下の「箏の音の出し方」などを解説する動画です。

このシリーズの動画を元に各奏法をKOTO NATIONで一つずつ打ち込んでみます。

 

まず、一番基本と思われる平調子・壱越(イチコツ)で箏の調子(キー)を合わせます。

箏の調子についてはこちら

箏の基本形は十三弦。通常、この13音を鳴らすことになります。

ですが、箏の音を固定させる役割の柱(じ)を演奏中に動かしたり、他に十七絃箏や25絃箏という弦の多い筝もあることから、強押し・弱押しによる音程の変化を除いても、このチューニングされている音以外を鳴らしても別段問題はないようです。割と柔軟に対応できる楽器らしい。

ただ、闇雲に鳴らしたい音を箏という音源で鳴らしてしまうと、肝心の箏らしさが失われてしまうので、曲に合わせて箏の調子を事前に決めておき、そこから+αとして音を増やす形が良さそう。(強押しの全音間隔より大きく空いてしまうと不自然になるなど)

ポイントとしては、実際に手元に箏があって「さあこれから自分の手で実際に演奏しよう」というイメージを持つだけでも打ち込みの嘘くささは多少緩和されるので、この辺りは常に意識していきたいところです。

 

KOTO NATIONのキースイッチ

KOTO NATIONには、

  • Koto(琴(平調子))
  • Bass Koto(十七絃箏(Cmaj))
  • Shamisen(三味線(地歌))

の3つの音源が入っています。

そのうち、Koto・Bass Kotoのデフォルトのキースイッチを以下にまとめます。青字は比較的多様するであろう部分です。

 

Koto

  • A0:SCRAPES (C1~C3)
  • G#0:HARD PLUCK (C1~C4)
  • G0:HARMONICS  (C1~C4)
  • F#0:TREMOLO  (C1~C4)
  • F0:PIZZICATO  (C1~C4)
  • E0:HITS  (C1~C4)
  • D#0:OCTAVES  (C1~C4)
  • D0:MORDENT SLOW  (C1~C4)
  • C#0:VIBRATO SLOW(v0~69)  (C1~C4)
  • C#0:VIBRATO FAST(v70~127)  (C1~C4)
  • C0:SUSTAIN(v0~115)  (C1~C4)
  • C0:MORDENT FAST(v116~127)  (C1~C4)
  • B-1:TONAL GLISS  (C1~F1)
  • A#-1:ATONAL GLISS  (C1~C4)
  • A-1:PHRASES1 (D1,G1,A1,A#1,D2,D#2,G2,A2)
  • G#-1:PHRASES2 (D1,G1,A1,A#1,D2,D#2,G2,A2)

 

※注1 vというのはヴェロシティのこと。例えばC0でv100のノートを置くとSUSTAINがONになり、v120だとMORDENT FASTに切り替わる。

※注2 (C1~C4)というのは、ピアノロールのその範囲内で音が用意されているということ

 

Bass Koto

  • F#0:WOOD HITS (C1~F1)
  • F0:TONAL HITS  (C1~G#1)
  • E0:SLIDES  (C1~B1)
  • D#0:GLISSANDO  (C1~A#1)
  • D0:PIZZICATO (A#0~G3)
  • C#0:MUTE (A#0~G3)
  • C0:SUSTAIN (A#0~G3)

 

このようにKOTO NATIONには、弦を爪で押し弾く音以外にも、ハープっぽい音やボディを叩く音など色々入っています。ただ、そんなに使う頻度は多くはなさそう。他にもVIBRATOなどはジャラジャラ鳴らす方が筝っぽいので私はあんまり使わないかも。

 

右手の奏法

それでは、KOTO NATIONを使って一つずつ奏法を確認していきます。まずはメインで音を奏でる役割を持つ右手から。

 

すくい爪

すくい爪とは、爪の裏側で弦をすくい上げて弾く奏法のこと。

意外なことにKOTO NATIONには、爪の裏側で弦を掬い上げて弾くような、そういった擦り音の混じった音が基本入っていません。なので、すくい爪で音を出していると仮定した場合、通常の押しで鳴らす音と区別させなくてはいけないように思いました。

サンプルの1フレーズ目は、すくい爪の部分を敢えて「D#0:OCTAVES」で表現し、2フレーズ目は単純に全て「C0:SUSTAIN」音のヴェロシティの変化だけで表現してみました。「D#0:OCTAVES」の音は本来オクターブ上の音を同時に鳴らしている合せ爪的なもので、確かに違いを出すという意味では正解ですが、すくい爪としてはやはり違う感じですね。

 

ただ、すくい爪には上記の擦り音を含んだものと、あまり擦り音を含まない音を出す弾き方、両方を含むそうなので、ここは素直にヴェロシティの変化で表現するで良さそうです。

 

押し合わせ

押し合わせとは、隣り合った弦の片方を右手で押して、もう片方の弦と同じ音にして2本同時に弾く奏法

単音よりも鳴りや弾きの音が重なり合って、インパクトもあるし、これだけで情緒が感じられます。不思議だなぁ。

そしてこういった時の音の打ち込みは、基本msec単位でのずらし調整になります。耳で聞くと比較的音がずれていることはわかるものなのですが、打ち込むとなると「こんなに極小の差なの!?」と実感するのは、DTMで生っぽさを追及したことのある人なら誰でも一度は思ったことのある感想ではないかと。

人間の耳は精度がいいですね、ほんと。

 

かき爪

かき爪とは、中指で隣り合った弦を2本同時に掻くように鳴らす奏法

先に鳴らした音と後で鳴らす音のノートは基本くっつけておきます。もしくは一つのノートをハサミツールで切るだけでもいいかも。

またこの動画から、五(D)と六(D#)を同時に鳴らすことを自然に行っていることから、半音重なる音を同時に鳴らすことは割と普通であることがわかります。この音の重なりに対する捉え方は、西洋音楽とはかなり違う点ですね。

また、初歩的なことかもしれませんが、仮に前後の音にこれくらい隙間があった場合、耳で聞くと一度ぶつ切りに聞こえてしまうことがあります。指で同じ場所を鳴らす2度目は、弦が弾かれて音が出るまでの一瞬弦の振動が止まるのは事実なのですが、それは本当に一瞬なので、ここは素直にノートを繋げておいたほうが自然に聞こえます

私の耳の感覚とKOTO NATIONのリリース具合では、単音で0.03秒くらい空ける分にはパッと聞いて繋がりに違和感はギリギリなく、0.07秒くらい空くと「あ、切れてるな」という感覚でした。・・・なんにせよ、くっ付けてしまって問題ないと思います(笑

 

合せ爪

合せ爪とは、親指と人差し指or中指、二つの指で2本の弦を同時に弾く奏法

挟み込むようにして少し弦の間隔を空けて、1度と5度上、もしくはオクターブで鳴らすことが多いようです。上画像では、1フレーズ目のオクターブ鳴らしを「D#0:OCTAVES」で、2フレーズ目は「C0:SUSTAIN」でオクターブ重ねを打ち込んでいます。

どっちもあまり変わらない印象なので、素直にOCTAVES使っちゃって良さそう。

 

流し爪

流し爪とは、親指の爪で高い音から低い音へグリッサンドする奏法

箏の代表的な奏法。やっぱりこれですよね~筝といったら。

この流し爪と、次に続く引き連の表現は、KOTO NATIONには「B-1:TONAL GLISS」として用意されています。1フレーズ目はそれをそのまま使い、2フレーズ目はSUSTAINで一音ずつ打ち込んでいます。

用意されているTONAL GLISSは、

  • 上から下へ(流し爪)
  • 下から上へ(引き連)
  • 下から上へ行ってまた下にいく(引き連→流し爪)

に、各々早いタイプとゆっくりのタイプの計6種類あります。ここで更にヴェロシティを弄ることで音の強弱も付けられますが、やはり既に用意されているフレーズのため細かい音の配置や音量調整は出来ません。なので、TONAL GLISSを使う場合はバックが賑やかな曲などで使い、抑揚を付けたり、より臨場感のある箏の表現をしたい場合は一個ずつ手打ちした方が良さそうです。

流石にこのフレーズを用意されているモノから細かく弄るのは無理があるでしょうから、そこは致し方ないところですね。

 

引き連

引き連とは、流し爪とは逆で、中指で低い音から高い音へグリッサンドする奏法

動画では「真ん中を弾かないこともある」とのこと。なるほど、勉強になります。

こちらはTONAL GLISSを使わず、全部一個ずつ打ち込んでいます。やはり流し爪・引き連は箏の代表的な奏法であると思われる為、出来る事ならこれの打ち込み感覚を経験値として身につけておき、ここぞという時に必殺技のように使いたいところです。

多分その方がTONAL GLISSの使い所もわかるはずなんですよね。力の抜きどころが見えるというか。

 

裏連

裏連とは、高い音でトレモロ(同じ音を連続で小刻みに鳴らす)をしてから、低い音へグリッサンドし、最後に2~3本の弦を弾く、という一連の流れの奏法

サンプルでは、1フレーズ目のトレモロには「F#0:TREMOLO」を、2フレーズ目では通常音の「C0:SUSTAIN」で表現しています。

トレモロには爪の裏と表、つまりすくい爪と押し爪が交互になっているので2フレーズ目のSUSTAINのみだと違和感出るかな?と思ったのですが、案外聞けますね。ただし擦り音がないのでデメリットとしては少し綺麗に聞こえてしまうくらいでしょうか。トレモロに関しては、

  • 「F#0:TREMOLO」を使うと、音は良いけどトレモロ中の抑揚が作れない
  • 「C0:SUSTAIN」を使うと、抑揚は付けられるけど少し音が綺麗すぎる

という、それぞれのメリットとデメリットがありました。TREMOLOを使う場合、オートメーションで抑揚を書いてやればいいのかもしれませんが、個人的にはSUSTAINで手打ちした方が手間は省けそう。

 

すり爪

すり爪とは、一指し指・中指の爪の裏側で2本の弦を右から左へ擦り、元へ戻す奏法

KOTO NATIONには「A0:SCRAPES」にこの弦を擦る音が色々入っていますが、用意されている音にはぎゃんぎゃん擦っている効果音的なものが多く、また最初に右から左へ擦る音が入っていないというか、それらしい音がなかった元へ戻す音は問題なく使えそうです。

すり爪をDTMの楽曲で使う機会はほとんど無いような気もするのですが、最初の右から左へ擦るまっとうに使えそうな音がなかったのはこれも意外だった。

 

散し爪・輪連

散し爪とは、中指の爪の側面で弦を擦る奏法輪連とは、人差し指と中指で一と二の弦を擦る奏法

KOTO NATIONにはこの擦りながら出す音というものが入っていないため、残念ながらKOTO NATION単独ではこの二つの奏法は表現できません。(多分

仮にこれを表現する場合は、違う音源の擦り音を合わせて同時に鳴らすなどする必要が出てくるかと思います。自分の手間と相談するか、箏姫かぐやを使うなど。

 

かけ爪・半かけ爪

かけ爪とは、人差し指→中指→親指の流れで鳴らす奏法。基本は人差し指2音・中指2音、親指1音の計5音で、「強・弱・強・弱・強」という抑揚のバランスがある。また半かけ爪とは、この内第2音(弱)と第4音(弱)の音量がゼロ、つまり弾かない形とのこと。

ポイントはこの強弱であることらしく、頭の人差し指はしっかりと響く音を鳴らすようです。この指のリズムも筝の特徴なのかもしれません。ちなみにかけ爪の譜面上の特別な明記法はないようです。

 

割り爪

割り爪とは、隣り合った2本の弦を人差し指と中指で順に2回に分けて弾く奏法

動画ではそれにプラスして、その後に親指でオクターブ上を弾くと述べていますが、頭のジャンジャンという部分が割り爪の基本部分のようですね。

 

左手の奏法

続いて左手の奏法に入ります。主な役割は音の鳴りの幅を広げるといったところでしょうか。もちろん左手でハープのように音を鳴らすこともあります。

 

押し手(強押し・弱押し)

奏者からみて、柱(じ)の左側の弦を左手で押すことで、音が高くなります。

強押しは全音(一音)分高くする時弱押しは半音高くすることをいいます。

サンプルでは前半部分をそのまま打ち込みしたケース、後半はピッチベンドで全音・半音変えた状態にしています。動画を見る限りではかなり音がはっきりしていた印象があったため、ピッチベンドで表現しなくても良いような気もしました。

ただそうすると作り手側があとで振り返った場合、どこで強押ししてるかわからなくなると思われたので、ここは多少めんどうでもピッチベンドで強押し・弱押しを表現することを心がけたい気がします。またその場合、その部分だけ別トラックにKOTO NATIONを新たに読み込ませて、ベンドが効いている弦とそうでない弦とで分けることになります。

 

後押し

後押しとは、弦を弾いた後で左手で音の余韻を高く上げる奏法

押し手と同じ要領ですね、これはピッチベンドで表現します。ピッチを細かくカーブを書かなくともほぼ後押しの効果は得られたので簡単でとても楽。クリック二回で済みます。

押し手では、ピッチベンドによる音の経過音は無いようにしますが、こちらの後押しではその変化する音を聞かせるようにする形になります。

 

押し放し

押し放しとは、押し手や後押しをした後に左手を放し、余韻を変化させる(元に戻す)奏法

サンプル2音目がそうです。これもピッチベンドでサクッと表現します。

 

突き色

突き色とは、右手で弦を弾いた直後に左手で弦を突くように放して余韻の変化を作る奏法

筝ならではの音色ですね。この音は「C0:MORDENT FAST」がそうで、C0のヴェロシティを116~127にすると自動的にこの突き色の音になります。「C0:SUSTAIN」はヴェロシティ0~115

 

揺り色

揺り色とは、一つ目に、押し手をした状態から弦を鳴らした後に素早く放しと押しを連続して行う奏法。二つ目に、左手で柱のすぐ左側の弦を揺らす奏法

サンプルでは、前半部分に一つ目の揺り色。後半部分に二つ目の揺り色を表現しています。

押し手を使った揺り色はピッチベンドで表現し、揺らす揺り色は「C#0:VIBRATO FAST/SLOW」を使います。SLOWはv0~69、FASTはv70~127(v=ヴェロシティ)。

 

引き色

引き色とは、弦を鳴らしたあと、柱のすぐ左側を柱の方に引っ張って弦をたるませ、音を下げる奏法

音のリリース具合から、ノート長後ろ1/4辺りを1/4半音下げるくらいが丁度良い気がしました。音が下がっていることがギリギリわかるくらいが良さそう。

 

消し爪

消し爪とは、奏者から見て柱のすぐ右側の弦に、人差し指の爪をかすかに触れさせて弾く奏法。動画では爪に触れるわずかな振動音から、ハウリングのような響きを感じさせる音が紹介されています。

この奏法音はKOTO NATIONにはそれらしきものが該当しなかったので、せめて近いであろう「E0:HITS」でサンプルは代用しましたが、これはNGでしょう。名前からそれらしき「G0:HARMONICS」の音も試してみましたが、これもNG。

というわけでKOTO NATIONでは消し爪の音は無いものと考えます

 

ここまでの奏法を学んだ直後のサンプル楽曲

はい、ここまで学んだ直後に、箏の独奏をババッと作ってみましたババッと。

抑揚はヴェロシティのみで表現してみました。いや~、頭でわかっているだけで全然身体に染みこんでないことがよくわかるサンプル曲となってしまいましたね。当り前なんですけど。

本来、きちんと聞かせられるようなレベルの曲を置いた方が私の体裁は保たれるのかもしれませんが(笑)、これは「箏を学び始めた直後のLv1の状態」ということで形に残しておくことにしました。

あとで聞き返してこのサンプルに何も違和感を覚えなかった場合、その時点で自分のレベルが上がっていないということになるはずなので。

 

春の海の耳コピ

記事終わりの箏サンプル曲が上のものじゃあんまりだろうということで、箏の楽曲として有名な「春の海」を耳コピしてみました。冒頭部分を聞くと、「あ、これどこかで聞いたことある!」と思うかもしれません。

箏に関しては、ヴェロシティで基本的な抑揚を作り、その音の質の違いなどで補いきれない部分はボリュームをオートメーションの書き込みでちょいちょい上げ下げしています。

耳コピのサンプルが途中で終わっているのは、そもそも箏の練習のつもりで耳コピしていたのに、箏よりも和楽の楽曲のテンポの取り方や尺八の抑揚の方に時間を取られてしまい、予想以上に長丁場になりそうだったからです(笑

尺八の音源選定もまだ済んでいないというのもあるのですが。

・・・というわけで、「春の海」はこちらの動画で堪能して下さい。

いや~~~、この手の耳コピは相変わらず大変なんですが、やっぱり勉強になるなぁ・・・。

 

おわりに

まだ箏に慣れ親しんでいない状態ではありますが、現時点で使っていくと箏らしい、もしくは実際に大事そうな奏法は、

右手

  • すくい爪
  • 押し合わせ
  • かき爪
  • 合せ爪
  • 流し爪
  • 引き連
  • 裏連
  • かけ爪
  • 割り爪

左手

  • 押し手
  • 後押し
  • 押し放し
  • 突き色
  • 揺り色
  • 引き色

・・・でしょうか。というかKOTO NATIONで表現しにくい奏法を除いた全部を書いただけのような。

ただ、箏の歴史はとても古いもので、今に伝わる奏法はそれぞれの意味や鳴らしどころの役割がしっかりあるはずなので、どれが良いとか悪いとかはないでしょう。一個ずつ使い所を理解していって、自然な箏の使い方が出来るようにこれから勉強していきたいと思います。

 

最後に、今回のレッスン動画の奏者の方の演奏の中で、個人的に好きな動画を載せてみます。タイトルとは裏腹にかなり激しくロックしているような雰囲気もあり、情熱を感じて凄くかっこいい。

 

それでは!