箏を弾くための入門書「箏のいろは」はDTMで箏を学ぶのにもとても良かった

こんにちは、MAKOOTOです。

先日、箏を学ぶためにいぶくろ聖志さんの手掛ける箏入門の書「箏のいろは」を買って勉強していたのですが、これがDTMで和風楽曲を作る上でもかなりタメになったので、少しご紹介ということで記事にしてみたいと思います。

 

これですね、なんて素晴らしいデザインなんだ。箏の文字がまた達筆でかっこいい。

 

箏のいろは

和風の楽曲をしっかり作ろうと和楽器に関する内容をじわじわ調べていた私ですが、先月箏について調べている時に、いぶくろ聖志さんの動画を見つけました。

 

いぶくろ聖志さんといえば、和楽器バンドのメンバーで箏を演奏されている方です。「蓮-REN-」「華風月」といった日本の和を基調としたユニットも組まれていたり、個人でも様々に活躍されていて、この音とまれ!の「龍星群」演奏動画にも、いぶくろさんが実はいたりします。

 

で、私は地歌や三曲などの昔からある箏の楽曲を聞いたりそこから使い方を学ぶことはもちろんなのですが、どちらかというと現代風に箏が使われている楽曲からも勉強したいという気持ちがありました。

まだ箏について詳しく知らないため、何が自然で何が不自然かの判断も付かない。ただ、そうならそうで自分で模索していけばいいだけの話なのですが、そんな折にこの「箏のいろは」を知りました。

この本は「これから箏を弾いて練習する方」向けではあるのですが、現代の音楽界ではまだまだ希少な楽器である箏で活動されている方の本ということで、実はかなり貴重なのではないかと思いました(私があまり調べてないだけかもしれませんが)。また、いぶくろさんのオリジナル箏曲を楽譜として練習できるということで、私にしては珍しくすぐ買ってしまった

以下、いぶくろさんの「箏のいろは」についてDTMをしている私の観点から簡単に書いていきます。

 

箏の演奏方法は一通り学べる

「箏のいろは」には、6曲のいぶくろさんのオリジナル箏曲がCD付きで同封されており、その6曲を練習することで弾き方を少しずつ覚えていき、箏の演奏に慣れていくという流れが組まれています。

具体的には、

  1. 花紺青~夜の風~
    ・基礎的な楽譜の読み方
    ・親指と中指の動かし方
    ・親指と中指を使った「合わせ爪」の奏法練習
  2. 白群~川遊び~
    ・指を少しだけ素早く動かす練習
    ・人差し指を加えた動かし方
    「押し手」の奏法練習
  3. 緑青~鬼蜻蜓
    「すくい爪」、「後押し」、「グリッサンド」(流し爪・引き爪のこと)の奏法練習
    ・曲のテンポは速め
  4. 光悦茶~土~
    ・16分音符での練習
    「掻き手」、「割り爪」(シャシャテン)の奏法練習
    ・テンポはゆっくりだが16分音符が多く大変
  5. 淡紅色~蕾~
    「トレモロ」、「裏連」(サラリン)の奏法練習
  6. 月白~明日~
    ・付点のリズム
    ・左手で「ピチカート」の技法を練習

 

私は現在、箏を引っ張り出す場所がないので、曲を聴きながら机の上で指だけ動かして練習してました。いわゆるエア箏。しかしこれが難しい。

曲の基本構成は、

  • 13絃箏の旋律(メロディ)部楽譜が用意されている練習部分)
  • 25絃箏の伴奏部楽譜には書かれていない部分)

の二面の箏による楽曲となっていて、一曲につきそれぞれ

  • 鑑賞用旋律伴奏の合わさった、いぶくろさんによるお手本の音源)
  • 練習用(鑑賞用より伴奏が小さく、これから練習する旋律をよく聴ける音源)
  • 伴奏用(旋律のない、伴奏のみの音源。伴奏と合わせて練習・披露できる用)

の3点が、箏を練習するために用意されていました。

 

楽譜が用意されている旋律部分は運指の番号が全部振られているので、初めて箏に触れる人でも大安心で練習ができる内容です。

 

これだけでも十分満足ではあるのですが、私の場合、折角なのでやはり伴奏部分も勉強したいということで、メロディのみならず伴奏部分も6曲全部耳コピしました。

 

最初の内は音の強弱や伸ばし(サステイン)部分、また指の弦に触れるタイミングなどもなるべく再現していましたが・・・うーん、なんかこの画像だとあんまりやってないですね(笑

でも、お陰で箏の指運びがかなり理解できるようになったので、予想以上の収穫がありました。

 

例えば、五の糸(G2)を親指で押しで普通に弾いた場合、直後は四の糸(D#2)に親指の爪を当てて一旦止めます(基本形)。つまり、事前の演奏で四の糸が鳴らしてあって響いていた場合、五の糸(G2)が鳴ると同時に四の糸(D#2)はミュートされる。(画像赤枠

上画像緑枠も同じ。親指で流し爪的に低い音に向かって鳴らしている最中ですね。

 

こういった、奏法だけでは見落としがちな部分に結構気付くことができたので、この「箏のいろは」は私にとってほんとにありがたい教本となりました。

 

自分で作った楽曲

そんなわけで、この「箏のいろは」のお陰で箏に対する知識が増えたこともあり、最近作る和風曲には箏ばっかり使ってしまう自分がいます。それと、楽曲を作りながら思ったのですが、箏ってかなり凄い楽器だと思いました。

 

これは記念すべき箏のみの楽曲第一号。「箏のいろは」で学んでなかったら箏のみの楽曲を作るのは随分先になっていたかもしれない。

 

箏を使って激しい曲を作ってみたうちの一つ。毘沙門天の眷属の一人である羅刹のテーマという設定です。こういう設定を考えたりしながら作るのはとても楽しいですね。夜叉のテーマも近いうち作りたい。

 

こちらはゲームでいう「風来のシレン」をもう少し江戸っぽくイメージしたもの。やっとこういう曲作る事ができました。今まで作りたくても作れなかったこういう曲、なんかやってたら出来てしまった(笑

 

私が思う箏の良い所

私が今現在感じる箏の良さといいますか、特徴というものを述べると、

  • 音が煌びやかで、雅さを感じる
  • ベース・和音・メロディ全部担当出来る。汎用性が高い
  • 絃楽器なので音程も融通が利く
  • 平・雲井調子など、音階を把握してそれを鳴らすだけでも和っぽい雰囲気が出る
  • 静かな曲ド派手な曲、どっちでもいける

という感じです。

まさか箏がこんなに幅広く使える楽器だとは思っていなかったため、現代では最もポピュラーな和楽器であると思われる三味線よりも好きになってしまった。

 

ただ、全ての和風曲で使うことはちと難しいかなと思う点は、箏という楽器とその音が雅すぎるという点でしょうか。民衆のお祭り音頭みたいな曲には混ざりにくい感じがしますね。

楽器としての箏は平安時代の宮廷音楽(雅楽)もあり、江戸時代の箏の楽曲は技巧的なものが多かったらしいので、何かと敷居の高い位置にいたせいもあるんだろうと思います。そもそも平安以前は、弥生時代や日本神話にも「コト」という儀式的なモノとしては渡来前から存在していたみたいなので、そういった伝統から醸しだされるものもあるのかもしれない。

 

おわりに

「箏のいろは」を買おうと思ったきっかけは、上の方で述べた箏の学びということの他に、動画内の最初もしくは最後にほんの少し流れる、「箏のいろは」に練習用として収録されている6曲の内の一つ、

「光悦茶」が凄い好みだったから

この曲が弾けてしかも丁寧に学べるとかもう買うしかない・・・!それが決定打でした。

 

また「箏のいろは」は、いぶくろさんの人柄もあってとても優しく温かい作りで箏の練習が出来る雰囲気を感じます。本書内のコラムもかなり面白いので、箏を始めてみようかなという方や、私みたいに箏はまだよく知らないけど音楽的に興味のある方にはオススメかと思いました。

 

 

いぶくろさんの「音伽噺」と「木花咲耶」も買おうかなぁ、あれは絶対良い。

・・・あれ?いつの間にかファンになってしまった(笑

 

飛澤正人さんに弟子入り!?そこで学んだミキシングについての方向性など

先日、サウンドクリエイターに関する様々な内容を温かく包み込むようにブログの記事にされている、音楽クリエイターのUGさんという方のブログを見ていたらこんな記事がありました。↓

トップエンジニア飛澤正人に弟子入りして盗んだミックステクニック3つ

 

 

!?

 

・・・おお、凄い。

飛澤さんといえば藤本健さんのDTMステーションでもお馴染みの凄いエンジニアの人。これは早速勉強させてもらうしかない。

 


・・・と思い記事を読み進めていくと、このような記事を発見。

なるほど、こういった企画があったとは知りませんでした。UGさんは早速飛澤さんに“弟子入り”した成果をブログの記事にされていてその効果はかなり劇的なものだったため、私も早速“弟子入り”することにしました。

ブログを通じてこうして色々な情報を共有出来るというのはありがたいことですね。UGさんの記事を見てなかったら私は知らないままだったか、知ってもずっと後だったかもしれない。

 

飛澤正人さんの実践講座はロックドラムのミキシングについて

飛澤さんの講座内容は、具体的にはMedia Integrationさんの「WAVESプラグインによるロックドラムのミキシング実践内容」というものでした。

Media Integrationさんのこの企画の意図は、

飛澤氏に「弟子入り」するような気持ちで、氏のテクニック、ロジックを学びましょう。

とあり、また動画の内容もカットは極力せずに、プロのエンジニアの実際に行う作業を“盗み、感じて”もらい、多くの人に「自身の音楽活動に役立てて頂きたい」という心意気を私は感じました。

というわけで、ご厚意に預かりしっかり学ばせて頂こうと思いますが、私は現在WAVESのプラグインを所持していません。なので、WAVESのプラグインは使わずに動画でのミキシングの手法やノウハウを自分の環境に落とし込んでドラムの音作りをしてみたいと思います。

 

WAVESプラグインを使わず「METAL MACHINERY SDX」で音作り実践

さて、飛澤さんは主に

  • Superior Drummer 3.0
  • WAVESプラグイン色々

を使用されてロックドラムのミキシング講座をされていました。

対して現在の私の状況はというと、

  • Superior Drummer 2.0
  • WAVESプラグインは現在持ってない

という状態なので、音やプラグインの数値や掛かり方をそのまま真似ることは出来ません。ですので具体的な数値ももちろん把握はしておきますが、主に「なぜそうしているか、なぜそうなっているか」を解説を通して理解し、自身の応用力と根本的な知識の底上げに繋がるよう自分の環境に置き換えていきます。

 

まずドラムではこのようなサンプルを作りました。そしてSuperior Drummer2.0ではなく、私がよく使うその拡張音源である「METAL MACHINERY SDX」を使い、違う方向性で作られたドラム音源でも効果を出せるかを試してみます。

以下はそのデフォルトキットで鳴らした音です。

個人的には少しくぐもったような感じの音がします。

このドラムは、以前私がメタル系楽曲を作るために買ったSuperior Drummer系の拡張音源です。バトルモノの楽曲を作るならギターでザクザクさせつつドラムもそうした方がかっこいいだろうということで、今の私のロック系楽曲のデフォルトドラム。

去年Superior Drummer3.0が出たのでそっちもちょっと欲しかったりするのですが、今はもうしばらくMETAL MACHINERYで楽しみます。

 

そしてこちらが動画を参考にしながらミキシングしたものです。

400~600Hzを全体的に削る形となっているので随分と抜けが良くなりました。しかし正直こんなに変化させられるとは思っていなかったという(笑

 

・・・実は最近、ドラムについてなんとなくこうした方がいいんだろうけど、どこに決め手を置けばいいかわからないというお悩み状態だったのですが、その悩みがここで一つバシッとクリアになったような気がしました。

 

以下、この動画で学んだ、自分の中で押えておきたいポイントを抽象的な内容になりますが箇条書きしていきます。

  • 楽器ごとのミキシングの方向性
  • 各音の美味しいところ・聞かせたいところの把握
  • プラグインの使い方・使う理由

私の詳しい編集内容については大体飛澤さんの動画の通りに手持ちの近しいプラグインで代用しただけで、またUGさんの記事を見て頂きたいので省きます。

 

楽器ごとのミキシングの方向性

動画を見て学んだ一つに、各音をどのようにバランス調整するかという考え方でした。

例えば、まずドラム内でキック・スネア・タム・金物それぞれが被って良い部分・被ってはダメな部分を調整してEQやCompを掛けていく。そしてそのドラム全体はベースやギター、ピアノなど他の楽器が入ってくることを想定の上で、ある程度整えられている。

キックとベースはロック系では基本一番下の低音なので、まずそこをしっかり作り、あとに続く楽器が上に乗っかっていくイメージですね。そういう風に、音の役割と特徴が見事なまでに綺麗に知識として整理されている感じがしました。

 

確か10年くらい前なのですが、以前私はドラムだけでがっつり良い音が出るようにミキシングしてみようと思い、それが完成した時に一人で大興奮したことがありました。

「やったぜ・・・時間かけた甲斐があった。現時点で最強のドラムだぜ!!」

と。

 

こんな顔してました確実に。

 

しかし次の日、さあこの最高のドラムを使って一段レベルアップした楽曲を作ろうと思い、いざピアノやベースを入れてみると音同士が重なりすぎてボワボワになってしまい、もう聞いていられない状態になりました。ドラムだけでほぼ音の帯域全部を占めてしまっていたんですね。

いや~、折角作ったのにとえらい凹んだのを覚えています。

 

 

 

心の中でこんな顔してました間違いなく。

 

誰しもこういう経験はあるかと思いますが(笑)、ミキシング作業が、すでに他の楽器があることを想定の上で行われているというのは、当り前のことかもしれないけど非常に大事なことだと改めて気付かされました。

それには、音をどこに配置するかとか、この楽器の音はどういう音でどんな役割を持っているかを決めたり把握しておく必要がありますよね。一個ずつ着実に理解して、すぐに引き出しから出せるように日頃から意識しておきたい部分です。

 

各音の美味しいところ・聞かせたいところの把握

動画のトピックでは大別して、

  • キック
  • スネア
  • 金物
  • ドラム全体

という風に分けられていて、更にキックなら

  • Kick In
  • Kick Out
  • Kick Sub

の3つにマイクで取られた音として分けられ、それぞれどのような特徴があってそれを活かすかを飛澤さんは丁寧に解説されていました。正直、目から鱗な部分が多々ありました。

キックであっても、いらないなと思われる低域をサクッと削ったり、特にスネアの中低域も他の楽器との兼ね合いでバッサリいってしまう。私はこれまでスネアの中低域の音にかっこよさを感じてなかなか削れなかった人間なのですが、飛澤さんのスネアの音を聞くと最終的に自分が求めているスネアの音に非常に近かったんですよね。

 

スネアに関しては色々本を読んで試してみても上手くハマる時とハマらない時があって、いつも一番時間を掛けていた部分なだけに、今回の動画でそれがストンとハマった気がしました。まるで綺麗なスネアの音のように(あまり上手いこと言えてない

 

プラグインの使い方・使う理由

動画では、プラグインをどういう理由で使っているかも解説されていました。なので、その方向性を自分の環境に置き換えて、自分の手持ちではどういうプラグインを使って、どのような数値にすれば目的の音が出るか、目指す効果が得られるかを改めて考えさせられました。

自分の中で不明瞭だったものがほんとに沢山吹き飛んでいった感じですね。こういう風にやっていけばいいんだ、と。

 

それと最近忘れてしまいがちだった内容に、

  • プラグインを掛ける時はバイパス(掛ける前)との比較をする
  • プラグイン後と前の音量差を付けない
    → 大きな音になるとそれだけで良くなったような錯覚をしてしまいがちなため
  • つまみなどの数値を一度振り切らせてみて特性を確認する
  • 同じ系統のプラグインでも掛かり方や音の出力などの個性が違う

などの基本的なものが沢山ありました。ついつい端折ってしまう部分も多かったので、忘れないよう改めてここに書いておきます。

 

また、アタック感を出すにしても、コンプを使うのかトランジェント系を使うのかなどで効果も変わってくる。動画ではその辺りも順序立てて一個ずつ解説されているのでとてもわかりやすかったです。

 

おわりに

Media Integrationブログ記事のスタッフHさんやUGさんもおっしゃっていますが、それが行われる意味を理解する自身で感じることがとても大切だと改めて思いました。

 

自分が昔、WAVESのお試し用プラグインでプロのやり方を学べるという教本をそのまま数値だけ当てはめて真似て、結局当時はその意味をあまり理解できていなかったことを思い出しました。だからこそ、本当に理解が深まった時とそうでない時の違いがよくわかるというのはあるのですが。

 

ちなみにそのWAVEで思い出した教材というのがこちら。WAVES全盛期だった頃(確か)、というのもありますが、プロのミキシング・マスタリングのノウハウがプラグインを使用しながら書かれているというもので、

  1. ダンスミュージック
  2. R&Bミュージック
  3. カントリー・ロックミュージック
  4. ロック・パンクミュージック
  5. アーバンリミックス
  6. CDマスタリング

の全6章からなっていて、同封のWAVEプラグインは試用版ですがサンプル音源のプロジェクトファイルも見れるというなかなか稀有な教本です。10年以上前に買ったので現在とは流行りなどは違うでしょうが、根元のノウハウは多分ほぼ変わっていない気がする。

棚から引っ張り出してきて今一度勉強しよう。

 

というわけで、WAVESプラグインを持っていない私でも十分すぎるくらいの効果が確認できましたので、飛澤さんの講座、ミキシングに不安のある方は是非一度“弟子入り”されると良いのではないかと思います。

むしろ是非見て頂きたい。ほんと凄いので。

 

そして一度弟子入りが終わった後、

喜びでこういう顔になっていることを祈ります!!

 

(私の失敗という意味じゃない

 

 

Media Integrationでの記事一覧は → こちら

DTMをされている方にオススメのUGさんのサイトは → こちら

 

【Cubase】ミックスダウン後の楽曲末尾の「プチッ」を無くすためのもはや最終手段

オーディオストックDOVA-SYNDROME等の楽曲投稿サイト用にループ楽曲を作るとき、楽曲を書き出した際、「プチッ」というノイズが乗ることが私の場合頻繁にあります。

今回は、ループ楽曲として体裁をギリギリ保ちつつ、色々対処してもノイズが乗ってしまう場合の現在の私が最後にとる手段を記事にしてみます。使用DAWは「Cubase」

 

※ 以下、自分の環境の上での結果を元に書いているので、あくまで参考程度に目を通して頂ければと思います

 

ループ音楽素材とは

ループ楽曲素材というのは、音楽プレイヤーなどでその一曲を繰り返し再生させ続ければ延々繋がって聞こえるようなものの事をいいます。

例えばゲームなどで戦闘中に放置してたりすると、ずーっと同じバトル曲が流れ続けますよね。市販のゲームでは内部で再生箇所を指定しているものがほとんどだと思いますが、ああいう風にループされる使われ方が前提のBGMということです。

 

私が作るループ楽曲素材は上画像の通り。「曲の終わりからそのまま頭に戻ればループされてるように聞こえるよ」という、なるべく手軽に使ってもらえる形を取っています。

というか、ほとんどのループ楽曲素材屋さんはそういう形をとっているケースが多いかも。

 

そしてこのサンプルはそういったループ楽曲を作る際に毎度気を遣う部分です。

非常にわかりやすい「ブチッ」という音が曲末尾に出てしまいました。ナンテコッタイ

 

これはCubaseのオーディオミックスダウン時に発生したノイズ音で、もちろんこんな「ブツッ」なんて意図しているわけもなく、オーディオストックやDOVAの査定で落とされる理由の大半でもあるかと思われます。普段ループ素材を作らない知り合いの音屋はこの手のノイズに皆ひっかかっていたのだからバカにできない(笑

それにミキシングとは基本関係ないところでDAWが発生させてしまうノイズだから、除去ソフトであるiZotopeのRXでもどうにも出来んだろうしなぁ。

 

書き出し後に楽曲末尾に「プチッという」ノイズが鳴る原因

色々調べてみたのですが、今回の原因に考えられそうな内容を絞り込んでみると、

  • 音がある程度鳴っている状態のまま録音が切り上げられている
  • DAW内の設定・構造の問題
  • DAWを動かしているマシンのスペック不足

の3点が結果的に考えられました。

意図しないノイズの種類には他にも、

  • 音が重なり合ってピークを超えるクリップノイズ的なもの
  • 録音時の電気的な干渉によるクリックノイズ的なもの

など色々ありますが、今回は最初に上げた3点に絞って見ていきます。

 

音がある程度鳴っている状態のまま録音が切り上げられている

これは若干クリップノイズ的な要素もあるのではないかと思われるのですが、インストール直後はともかくそれから数年経った私のCubaseでは、ほんのちょっとミックスダウン範囲外にオーディオイベントがはみだしている、つまり「限りなく無音に近い小さな音」が曲終わりに出力されているだけでノイズの原因になったりしているケースが幾つかありました。

上画像のレベルであれば普段は大丈夫なことが多いのですが、それでもたまにあります。

 

よくある書き出し時の発生プチノイズは、単純に音が鳴り続けている途中にミックスダウンの末尾範囲を指定してそのまま書き出すといったケース。

他のDAWやver違いのCubaseなど、別の環境ではどうなのかはわかりませんが、私の環境でこれをやるとプチノイズがほぼ確実に曲末尾に乗ってしまいます。DAWの設計上この使い方も想定内ではあろうと思われるのですが、意図しないノイズの類は音に関わる人にとって切っても切れない関係なのかもしれません。

 

DAW内の設定・構造の問題

気付かない間に何かしらの設定をONにしてしまっているケースも稀に起こります。その場合、気付かずにONにしてしまっているので、それをOFFにするためにあれこれ調べて普段は使わない機能を恐る恐る弄ることになったりします。案外デリケートなところありますからね。

また、CubaseではCPU負荷からくるのか、それとも長年使っていて何かしらのエラーが内部で積もっているのか(これが濃厚と予想)、0.001秒以下の決定にかなりの緩みを感じます。

 

こちらは画像の上トラックのオーディオを、範囲そのまま単純にコピーするようにミックスダウンしたものが下トラックなのですが、その尺の長さが書き出し元と後でなぜか違うという。プロジェクト内は32bitで編集していてミックスダウン書き出し時が16bitだから長さが違うのかとか、この差がなぜ生まれるのかも正直よくわかりません。あったりなかったりする。

 

ちなみにこの差は0.08[sec]。

これは別プロジェクトでの、いわゆるプラグインエフェクトなどの負荷は一切かかっていない状態で実験しても同じで、また更に実時間で書き出しをしても同様の結果という、私にとって完全に意味が不明の現象。くそ・・・困った時の頼りになるSleepfreaksさんの記事(楽曲を書き出すときの不具合 Cubase)を試しても上手くいかんとは・・・!!

 

Cubaseは現在ver8.5を使っていますが、プロジェクト内を最大限まで拡大した0.001sec以下ではスナップをONにしても機能しなかったりするので、若干DAW内の構造上の問題もあるような気もしました。あくまで予想です。

 

DAWを動かしているマシンのスペック不足

CPU負荷以前に、マシン自体がCubase8.5を動かすことがきついのだろうか。しかし現在の私のPCは、

  • Core i5 3.2GHz
  • メモリ 32GB

を積んでいるので、単純にDAWだけを立ち上げるだけで挙動がおかしくなるとは考えにくい。

ただ、このPCを作ってからもう4~5年くらいは経ち、色々なソフトウェアやDTM音源も色々インストールしていたり、CubaseがインストールされているドライブもSSDではなくHDDだったりするので、色んな要素が少しずつ積もり積もってDAWに影響を与えているような気がしなくもないという。

OSも100%健全かどうかというのも若干怪しいし、ウイルス常駐ソフトのこともあるので、結果的にスペックが発揮されていない、のかもしれない。

 

私の取る最終手段

ループ楽曲を作る上では、楽曲の終わりに下手に残響があったりすると曲の頭に戻った時に若干違和感が出てしまったりもするので、この頭と終わりを自然に繋げるような工夫が色々必要になってきます。静かな展開にしたり、余白を作ったりなどで、私も含め素材を作られている方は皆それぞれ工夫されています

ですが、最後の最後まで音が出ていたほうがループするのに自然だとはやはり思います。なので、工夫をする前提として自分の環境でどこまで音を出せてどこから音を控えた方が良いのかの境界線を知ることはとても大事であろうと。

 

 

以上の流れから、私が最終手段としてとる方法は実に簡単。

 

「ノイズが乗らなくなるまで楽曲のケツを削る」

 

ループしてもギリギリ違和感ない状態まで、もう楽曲自体を削ってしまうしかない。事前に静かに終わって頭に戻る楽曲ならこの手段はほぼ取りませんし、そもそも作編曲の段階から自然なループを狙う作りにしておくことが一番望ましいので、私の最終手段はほんとに後ろがない状態といえます。

もしこれでループに違和感が出るようであれば、曲のケツは削るのではなく作り直したほうがいいと個人的には思っているのでそうしています。

 

私の最終手段の例を書いてみます。上画像で使用している楽曲の末尾は1:40:909。1分40秒と+0.909秒。

この曲では、以前の記事で書いた「曲終わりに0.001秒分のフェードアウトをかける」では全くノイズが消えず、結果的にノイズがギリギリ書き出し時に乗らない状態までもっていくのにかなり削る結果となりました。

 

削った時の尺は1:40:810。つまり0.1秒も削ることになってしまった。

 

以前の記事では「0.001秒のフェードアウトをかければミックスダウン後の末尾ノイズは消える」と書きましたが、実際その時の私の環境ではそうだったというだけなのかもしれません。

100倍も違うとかもうやばいなぁ・・・と最初は思ったのですが、

0.1秒開いた状態のループ終わりからループ頭の繋ぎの部分(00:03付近)がこちら。

 

確かに一瞬間があるなとはわかるのですが、実際動画などでループとして使われる使用感を考えると、このくらいだと案外わからない間でもあったりもします。ただこの曲だと最後に静か目にしようとしてはいますが残響が割とあるのでやはり目立つ方ではある。

ですが、現在の自分の中ではこれがギリギリの境界線ということで記事にしてみました。

 

・・・残響がなくなるまで尺を少しとってもイイといえばイイんですけどね。正直幾らでも可変はききますが、ノイズと楽曲の境界線としての記事なので、こういう手段も取りますという感じで見て頂ければ。

 

おわりに

今回の記事内容はあくまで自分の環境でのケースなため、例えば「0.1秒まで削ればいい!」といった絶対的なものは述べられません。

Cubaseの挙動に関しても人それぞれなので、動作云々も一概にはいえない。いえないけど、「こういうことはありました」という一例としての価値はなくはないかと思ったので、書いてみました。

 

ちなみに後で気づいて書くタイミングが見当たらなかった為ここに書きますが、記事で主にオーディオデータを扱っているのは、私のループ楽曲を作る手順が、

  1. 打ち込んだ内容を一個のオーディオデータにして書き出す
    → その際+1小節分加えてミックスダウン
    → プロジェクト内にミックスダウンしたオーディオデータを残す
  2. そのオーディオデータを元に、改めてループ楽曲素材として書き出す
    → ここでループに違和感の出ないよう曲末尾を調整

という流れを踏んでいるからです。最初に+1小節加えた理由は、稀にミックスダウン指定範囲より短めにオーディオが出力されてしまうことがあるため、それを防ぐ為にこんな手順を組んでいます。

・・・あーでもこれは別の記事で簡単にまとめてもいいかもしれないですね。そうですね、そうします。

 

 

 

それでは、今回はこんなところで!

 

【DTM】琵琶という楽器を使う前に、まず基礎を知っていこうの巻【和楽器】

今回は、雅楽でも絃楽器として使われる

『琵琶』

という楽器について、まずは大まかな概要を把握していきたいと思います。

この楽器は、日本では元々語りに合わせて使われたもの。なので歴史は古いですが、様々なコラボレーションがなされるようになった現代音楽においても意外と聞く機会が少ないのではないかと思われます。「琵琶法師」や「耳なし芳一」などで楽器としても結構有名だと思うのに、ほんと琵琶を使ったBGMって意外とないんですよね。

なぜだろうか。この記事の終わりにはそれが少しはわかるかもしれません。(わからないかもしれない

 

 琵琶(楽器)とは

琵琶は、日本では今から1400年前(7世紀頃)に伝わったとされています。

日本の琵琶には幾つかの種類があるのですが、この記事ではDTMで和風の楽曲を作る上での琵琶という形を取り、以下5種類の琵琶、

  • 楽琵琶
  • 平家琵琶
  • 盲僧琵琶
  • 薩摩琵琶
  • 筑前琵琶

について、簡単な特徴を押えてみます。

 

琵琶の音

琵琶の種類によって主に絃を弾く撥が大きく異なる為、琵琶と一言で云っても結構音が違います。これは私の体感での感想になりますが、大雑把には、三味線によく似た音、またはその音より少し摺れたような、シャリっとした音という感覚でいます。そしてかなり難しい楽器であるということも。

日本琵琶楽協会のホームページに、現代の各流派における音源が確認出来ますので、音に関してはそちらを参考にされると良いかと思われます。

 

そして、ゲームなどでは『大神』の女郎蜘蛛の登場時のBGMや(筑前琵琶っぽい?)、

 

『戦国BASARA』の上杉謙信のテーマの冒頭の音などに使われているものがそうだと思います(多分)。

上杉謙信は歴史的にも琵琶の名手として有名で、現在でもその愛用していた琵琶「朝嵐」が、米沢の上杉神社稽照殿に保存されているそうです。何かと逸話の多い日本の軍神ですが、かなりの文化人でもあったというのはなかなか有名。

ちなみに謙信公の使った琵琶は四弦五柱のようなのですが、これは詳しくは直接上杉神社に赴いて聞いてみるしかなさそうです。いや~、一度訪れてみたい。

 

楽琵琶

雅楽の管絃催馬楽に使われる琵琶のこと。発祥はイラン、南アジアを経て唐より伝わった、日本では始めての琵琶とされている。

  • 奈良時代の形を今もほぼそのままの形で伝えている
  • 撥は最も小さい
  • 柱の間隔が狭い(ギターでいうフレットのようなもの)
  • “さわり”がない(ビィィン・・・と響く独特の音を出すための部分)
  • 雅楽ではリズム楽器として分散和音を奏で、各小節間の難しい間合いを繋ぐ役割
    → アルペジオ風に弾き、最後の音を次の小節頭の拍子に鳴らす、など

 

楽琵琶の音の参考動画。

雅楽では琵琶は派手な役割ではないのですが、これがあるとないとではやはり風情が違うように感じます。

 

平家琵琶

楽琵琶からの派生で、平家物語を語る時に用いられる。開祖は鎌倉時代の「生仏」とされ、“徒然草”によれば藤原行長の著した「平家物語」を生仏が語り出したのが始まりといわれる。

  • 撥は少し大きめ(杓文字型)で、先端が大きく開いたものを使う
  • 形は楽琵琶をほんの少しだけ小さくしたようなもの
  • 四弦または五弦があり、五弦目は四弦と音程は基本同じ
  • 平家琵琶を使った平家物語の語り物の音楽のことを「平曲」という
    → 雅楽琵琶と盲僧琵琶を統合したもの
  • 物語と弾きを合わせたのようにも

 

こちらは平家琵琶での平曲「那須与一」。

平曲にはこの他にも、「敦盛」「壇ノ浦」「祇園精舎」など、平家に纏わる有名な物語が沢山有り、琵琶のどこか物悲しい響きが合わさってとても聞き応えがあります。

 

また、平曲では語りに合わせて琵琶の弾き方、つまりコードと同じ意味を持つ旋律があり、それを弾くのだそうです。

 

盲僧琵琶

盲目の琵琶奏者、琵琶法師が用いる。

  • 細い形状が多く、笹琵琶とも呼ばれる
  • 柱の高さが高め(これは現代の改良によるもの?)
  • 音はとても柔らかめ
  • 平安時代には経文を唱える宗教音楽としての意味合いをもっていた
  • 平家物語や浄瑠璃など、様々な語りを持つ
  • 「平曲」が芸術性という意味での歌モノであるならば、盲僧琵琶は語りの合い間に鳴らすという印象

 

こちらの動画は、最後の琵琶法師といわれる山鹿良之さんの「羅生門」。語りを伝える為の場面に合わせて琵琶を使うという風なので、芸術音楽としての琵琶とはまた違った印象があります。琵琶よりもむしろ語りとその内容に聞き応えを感じてしまう。法師すごすぎる・・・。

雅楽の管絃などを宮廷の儀式的な音の使用とするならば、平曲は流れるような歌であり、盲僧琵琶は語りを中心とした効果音的な使い方をしているようにも見えます。ただ、琵琶法師にも色々な人がいたようなので、一概にそう言い切ることは出来なさそう。

 

薩摩琵琶

16世紀、盲僧琵琶が薩摩で改良されたものが始まりとされている。今年の大河ドラマの「西郷どん」にも出てくるのだろうか、最近見れてません(涙

  • 武士の力強さを歌い上げるために作り上げられた
  • 盲僧琵琶に比べて、胴が製で撥で叩き付けることが可能
  • 撥は平家琵琶よりも大型で扇型
  • 筑前琵琶の音楽要素を取り入れた「錦琵琶」が作られた
  • 現代では「鶴田流」が有名

 

こちらは鶴田錦史さんの「壇ノ浦」。平家琵琶と比べると、撥の大きさもあるのかやや派手めというか、非常に力強い印象があります。平家琵琶は主に、隆盛から没落にまで至る諸行無常を歌うのに対し、薩摩琵琶は元々薩摩武士の士気向上のために作られたものだそうなので、やはり力強さを一際感じるものであるように思われます。

また、鶴田錦史さんは男装をされていますが、女性の方だそうです。使っていた琵琶の名は「朝嵐」。上杉謙信の逸話といい、どこか不思議な感じがしますね。

 

筑前琵琶

明治時代、薩摩琵琶を研究して筑前盲僧琵琶を改良してつくられたもの。

  • 薩摩琵琶と比べると、歌と演奏がより一体となっている
    → 三味線音楽の要素が取り入れられている
  • 薩摩琵琶より、胴・撥共に少し小柄
  • 薩摩琵琶より、優しい音色
  • 女性奏者に人気

 

こちらは筑前琵琶奏者の田原順子さんの平曲「祇園精舎」。

音色としては、薩摩琵琶に比べて叩き方が少し優しいこともあるように思えますが、どこか柔らかく、歌いながら演奏していることも多く、現代音楽に親しんでいる側から聞くと、一番聞きやすいのではないかなと。薩摩が男性的だとすれば、筑前は女性的であると思われました。

 

おわりに

今回、琵琶について調べてみたところ、思った以上に歴史や種類が多く、これだけを把握するのにも時間がかかってしまい、音作りまでとても入れなかった。

ひとまずここまでの内容を私の感覚でまとめてみると、

  • 楽琵琶・平家琵琶は伝統的(儀式的)
  • 薩摩琵琶・筑前琵琶は音楽的
  • 現代では筑前琵琶が一番聞きやすいかもしれない
  • 主に語りに合わせて使われることが主流
  • 平家の武士が琵琶を使った流れからか、戦乱の諸行無常さを強く感じる
  • 音は三味線に近いが、種類によってかなり違う
  • 奏法は難易度高めと思われる
    → 打ち込みも多分難しめ
  • 現代音楽との融和性は低め
    → 雅楽以外での、他の楽器との合奏があまりないため

 

・・・こんなところでしょうか。琵琶が雅楽以外で合奏としてこれまで加わっていない経緯としてはやはり、

  • 語り物の楽器としての文化が古くからあったため

というのが一番の理由なのではないかと考えました。平家物語は800年以上経った今でも愛されている物語。そういう点で、琵琶の仕事はもう古くから地位を確立していたのだろうと思われます。

それに、音色が似ている三味線は16世紀頃に始まったとされる、琵琶から見れば割と新しい楽器。三味線も伝統はありますが、琵琶から見るとやはり楽器としては自由度が高くみえるのかもしれません。

 

今のところ、琵琶を使うのは思った以上に難しいというのが率直な意見。そんな簡単に使えるとも思っていませんが、現在、予想以上に歴史や用途に奥の深いものをとてもとても感じております。というか平曲などの語り物に聞き入ってしまって、楽器の分析が・・・。

 

最後に今回、琵琶について画像を探していたのですが、琵琶は琵琶でも果物の方ばかり出てきました(笑

おかしい・・・楽器の方ももっと有名かと思ったんだがー

 

それでは、今回はこんなところで!

 

【DTM】雅楽の打楽器『太鼓』『鉦鼓』について知っていく【和楽器】

雅楽で使われる3つの打楽器、

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

今回は、「太鼓」「鉦鼓」の2点に絞って見ていきたいと思います。前回の羯鼓の記事についてはこちら。

 

太鼓

「太鼓」の文字は現代でも広く使われていますが(和太鼓、太鼓の達人など)、この記事では雅楽で使われる『太鼓』という風にみていきます。

 

雅楽の太鼓は、正式には「釣太鼓」(楽太鼓)と呼ばれるものを使います。釣太鼓は主に管絃使われ、舞楽では大太鼓が使われることが正式なようですが、大太鼓は非常に大きく、また正式な雅楽舞台が必要とされるということで、舞楽でもこの釣太鼓が使われることも多いそうです。

持ち運び易い釣太鼓の方がなにかと使いやすいのでしょう。ですが買うとなると100万円くらいしたりする、今の私から見たらびっくりするような高級品。

 

また、大太鼓には、左方の舞楽で使われるものには、

  • 日輪
  • 三つ巴

右方の舞楽では

  • 月輪
  • 二つ巴

と、左舞・右舞それぞれの世界観・宇宙観があり、装飾の剣菱紋様がまるで裏表のように描かれています。

最初、この「日輪の三つ巴」「月輪の二つ巴」の分け方を知ったとき、私はかなりの衝撃を受けたのですが、そのことはひとまず割愛します。DTMには特に関係がないので。(何があった

 

太鼓(釣太鼓)の打法

  • 左の桴で弱く叩くことを「(ずん)」
  • 右の桴で強く叩くことを「(どう)」

また、右の桴で「百」を打つと太鼓の皮の振動が大きくなるので、その余韻を防ぐために、打ったあと両方の桴の先を皮に付けて振動を抑えるのだそうです。

 

こちらはEastWestの「RA」という音源に入っていた太鼓での「図・百」。

 

・・・えらい見辛いですね。音源を持っていれば、

EW Ra → Far East(東洋)→ Perc(パーカス)→ Taiko Drm(太鼓)

という風に入っている音を無加工でそのまま。

太鼓音源には音が沢山入っているので、自分が求める音に近い音として今回はG4に配置されている音を使いました。特にこだわりがなければ事前加工はしなくてもいいかと。

 

こちらのサンプルはXpand!2025 PercussionTaiko Drums Big 1+での図・百。

 

音は特に弄っていません。しいていうならDecayで余韻の調整をするくらいでしょうか。

さすがに釣太鼓のビリビリという振動音まではこの辺の調整では再現になりませんが、太鼓の音にプラグインなどでDistortionを極薄に掛けて、「一風変わった擬似振動を作り出してみる」というのも面白いのではないかと思います。

 

音はF6をチョイス。釣太鼓の音は若干高めの音なんですかね、私はそう感じました。

 

雅楽における太鼓(釣太鼓)の役割

さて、奏法なのですが、現代では打楽器は主に曲のリズムを刻むイメージがあると思いますし、大多数の楽曲ではそういう使われ方をします。

そしてポピュラーな打楽器である和太鼓なども、聞いていると叩き方には様々あることがわかるのですが、雅楽で使う釣太鼓に関しては以下、このような記述がありました。

多くの雅楽曲では、太鼓の奏法自体にリズミカルな役割を持たせてはいません。特に唐楽で奏する太鼓は、それぞれの楽曲で予め決まっている小拍子の数(小節数)毎に打つという、一種の区切りを表す役割を持っています。

出典:歌舞管弦 -太鼓- より

つまり、雅楽の管絃・左舞などでは太鼓はリズムを刻むという役割ではなく、節目の合図的に使われる(百を打つ)ことが主流とのこと。

ですが、雅楽の中でも右舞では、三ノ鼓もリズミカルな傾向があるのと同様、太鼓にもリズムが感じられるような使われ方がされるそうです。

 

・・・確かに、管絃・左舞・右舞それぞれを聞いていると、上記の通りそういった傾向が感じられました。基本的には儀式を重んじる楽曲ではそんなドンドコドンドコやらんということですね。

 

もしDTM的に言えば、

  • 都の貴族のいる街やお上のBGMなら太鼓は節目に威厳的に打ち
  • 町民やわいわいやってるお祭りのBGMならドンドコやる

といった使い分けをするとわかりやすいでしょうか。というか私がそう分けて使ってるだけなのですが。

 

大太鼓の音を創作して遊ぶ

上動画は釣太鼓とは別で、大太鼓が使われる例なのですが、これを見て最初めちゃくちゃ笑いました。弱く叩く「図」はともかく、強く叩く「百」はマジ殴りレベルなんですよ。奏者の被り物が若干ずれるくらいの(笑

音の質はというと、ガツンというよりはカツンといった感じのかなり硬めな印象。太鼓を叩くというよりはピストルの発砲音の方が近いかもしれません。

ちなみに屋内で大太鼓が使われている雅楽の演目をみた限りでは、普通に大きく低く響く太鼓の音が出ていました。大太鼓にも色々あるようです。

 

これは動画の音の再現ではなく、そのイメージから創作的に作った大太鼓の音。Xpand!2内で3つの音を重ねて簡単に作ってみました。ちと軽めですね。

 

  • 音程を感じさせない打撃音にClap
  • 太鼓の大きさをイメージしてThunder Drums+
  • バチンという音に若干の追加が欲しくてBig Snare+

という風に音作りを楽しんでみます。少し効果音的な音作り。これだけだと別段どうということのない音の印象ですが、例えば、Reverv timeを5秒くらいに伸ばしてサイズも広めに取ったリバーブをがっつり掛けてやると、

 

結果、全然大太鼓ではない(笑)んですけど、これはこれで別の用途がありそうな風に仕上げられたりはします。(リバーヴのお陰とかいわない

複数の音を一つの音として聴けるように仕上げる訓練ということで、参考程度に載せておきます。

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]遊び心も大事だねぇ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]左様[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu6.jpg” name=”シブ君”]・・・波平さん?[/speech_bubble]

 

鉦鼓

管絃での鉦鼓は「釣鉦鼓」と言われ、高めで硬く、重い金属音が鳴ります。そして大きな音は基本出さない。

はっきりとした音程の無い効果音的なサウンドという扱いでここでは見ていきますが、これはシンセ音などで音作りをするより、この音に近い金属的な打楽器音源の音で置き換えるのが一番早い気がします。

鉦鼓の材質は青銅または黄銅製で作られているらしく、検索してみると真鍮(黄銅)製のものが多い印象でした。金属については全然詳しくないので、ここでは高めで硬く、そして重い音が出るという点を押えておきたいと思います。

 

鉦鼓の打法

  • 片手で摺る「(きん)」
  • 両の手で摺る「金金(ききん)」

鉦鼓は叩く・打つではなく「摺(す)る」といいます。また、「金」「金金」も「チン」「チチン」と表現されたりもするようです。雅楽の曲を聞きこんでいけば細かな使い所は見えてきそうですが、今回はこの2点を基本として押えます。

 

鉦鼓を敢えてCelestaなどの音で代用してみる

早速近しい金属音を手持ちの音源で探してみたのですが・・・なんか見つからないんですよね(笑)。幾つかの動画を見るに、軽く摺っても随分と密度の高さを感じる重たい音が出るので、そのまま置き換えても鉦鼓の音に聞こえない。

そんなわけで、敢えてXpand!2内にあるCelestaの音を使ってコンプとEQを使い、鉦鼓の音にどれだけ迫れるかを試してみました。

 

・・・はい、まず笑っちゃうくらい軽い音のサンプルが出来上がりました(笑

 

使った音色は017 MalletsCeleste Hard+。Xpand!2内ではリリースを短めにしたくらいで大きな変更はしていません。Hard+と表記があったので、これは硬いだろうと思ったのですが、全然硬さが足りない。なんという密度の違いだ。

 

この音に掛けたコンプの設定です。がっつり深めにかけてますが、原音が軽いのでコンプにも限界はある。Attackは16msec辺りが良さそうではあったのですが、もっと自分の耳が鍛えられたら変わってきそうな気はします。

 

ちなみにリファレンスの鉦鼓の音の倍音成分に似せる為、ピークの強かったところに近似的に音を置いているのですが(上画像)、やはり音程感がはっきりしてしまっているので、金属を叩く音としては聞こえにくいですね。

 

なので、ここから、打ち込んだ10音それぞれの音程を全てリファレンスの倍音周波数に合わせるためにピッチを全て変え、更に上からコンプで潰した結果がこちら。

10音それぞれのピッチを全てずらした為、先程よりは音程感が薄れ、金属的な響きのようにはなりました・・・が、一つのまとまった音としては聞こえない

 

これは自分で作った音の周波数特性。

リファレンスの周波数の高さ(出力)に合わせてはいるのですが、やはりこの見た目だけ揃えても上手くいかないですね。元が違う音だし、原音のピークの分布はもっと細かく多いですから、当り前といえば当り前。

うーむ、代表的な箇所を見つけて真似れば近似できるかと思ったけど、金属音はそう簡単にはいかないのか。

 

というわけで、上記の状態から見た目の周波数を気にせず耳で一つの音として聞こえるよう各音の音量を調整した結果がこちら。

まだ若干バラつきは感じますが、これならギリギリ一個の音としての響きに聞こえなくもない。

 

ただし、一音一音全てのピッチをずらす作業を行う為、今回の場合Xpand!2の音源を計10個立ち上げることになってしまって、なんかもう大変なことになりました。

こうして音作りをする場合、曲を作りながらこうして立ち上げて音作りするのではなく、別プロジェクトで鉦鼓なら「鉦鼓の音」を作り上げてWAVなどで書き出し、以降はその一つのファイルのみを読み込んで使っていくのが至極当り前のやり方かと思われます。

・・・でないと、CPU処理が後々えらいことになりますし(笑

 

いや~、金属音難しいな~!!(笑

 

雅楽における鉦鼓の役割

鉦鼓も、太鼓と同じように、管絃・左舞では釣鉦鼓が使われ、右舞では大鉦鼓が使われるそうですが、やはり大鉦鼓もモノが大きい為か釣鉦鼓が良く使われるそうです。大鉦鼓は低い音が鳴り、釣鉦鼓のように小さい鉦鼓は高い音が鳴ります。

鉦鼓の役割は、太鼓が大きな節目を知らせる役割を持つとすれば、鉦鼓は小さな節目を知らせる役割を持つとのこと。またこちらも桴をもって摺るのですが、羯鼓や太鼓の一瞬後に音として続く形をとる。これは、鉦鼓の音が思ったよりも目立つため、その分控えめに使われるということのようです。

 

・・・なるほど、鉦鼓がそもそも控えめであるなら、先程私が作った下手な鉦鼓の音でもなんとかなるかもしれませんね!(いいのか

 

まとめ

太鼓

  • 弱く叩く「
  • 強く叩く「
  • 雅楽では曲の節目に鳴らす(小節の頭)
  • 儀式的な楽曲ではドンドコ鳴らさない、静かにドンッと打つ
  • 色んな太鼓音源ですぐに代用可能
  • 大きい太鼓は低い音小さい太鼓は高い音

鉦鼓

  • 1回摺る「」(チン)
  • 2回連続で摺る「金金」(チチン)
  • 大きな音では基本鳴らさない
  • 雅楽では曲の小さな節目に鳴らす
  • 重く硬い音が特徴的
  • 案外代用出来そうな金属音が見当たらない
    → 頑張って探す
  • 太鼓・羯鼓に続いて控えめに鳴らす
  • 大きな鉦鼓は低い音小さな鉦鼓は高い音

 

・・・さて、これで雅楽の3つの打物についての基本的な知識は押えられました。少しずつ楽器の役割と使い所が見えてみて、これを楽曲制作に活かすのがとても楽しみな私がいます。

学びは多分一生終わりませんが、それを表現してこその学び。一個ずつ丁寧に見ていきたいところです。

 

[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]あれ、ぼくたち今回全然出番なかったね[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]ネタを入れつつ流れ作っていくのも大変だから、少しずつでいいんじゃないか?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]ま、ねー[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]しょうがない、許してあげましょう[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]それじゃ、またな![/speech_bubble]