雅楽で使われる3つの打楽器、
- 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
- 太鼓(たいこ)
- 鉦鼓(しょうこ)
今回は、「太鼓」と「鉦鼓」の2点に絞って見ていきたいと思います。前回の羯鼓の記事についてはこちら。
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太鼓
「太鼓」の文字は現代でも広く使われていますが(和太鼓、太鼓の達人など)、この記事では雅楽で使われる『太鼓』という風にみていきます。
雅楽の太鼓は、正式には「釣太鼓」(楽太鼓)と呼ばれるものを使います。釣太鼓は主に管絃で使われ、舞楽では大太鼓が使われることが正式なようですが、大太鼓は非常に大きく、また正式な雅楽舞台が必要とされるということで、舞楽でもこの釣太鼓が使われることも多いそうです。
持ち運び易い釣太鼓の方がなにかと使いやすいのでしょう。ですが買うとなると100万円くらいしたりする、今の私から見たらびっくりするような高級品。
また、大太鼓には、左方の舞楽で使われるものには、
- 日輪
- 三つ巴
右方の舞楽では
- 月輪
- 二つ巴
と、左舞・右舞それぞれの世界観・宇宙観があり、装飾の剣菱紋様がまるで裏表のように描かれています。
最初、この「日輪の三つ巴」「月輪の二つ巴」の分け方を知ったとき、私はかなりの衝撃を受けたのですが、そのことはひとまず割愛します。DTMには特に関係がないので。(何があった
太鼓(釣太鼓)の打法
- 左の桴で弱く叩くことを「図(ずん)」
- 右の桴で強く叩くことを「百(どう)」
また、右の桴で「百」を打つと太鼓の皮の振動が大きくなるので、その余韻を防ぐために、打ったあと両方の桴の先を皮に付けて振動を抑えるのだそうです。
こちらはEastWestの「RA」という音源に入っていた太鼓での「図・百」。
・・・えらい見辛いですね。音源を持っていれば、
EW Ra → Far East(東洋)→ Perc(パーカス)→ Taiko Drm(太鼓)
という風に入っている音を無加工でそのまま。
太鼓音源には音が沢山入っているので、自分が求める音に近い音として今回はG4に配置されている音を使いました。特にこだわりがなければ事前加工はしなくてもいいかと。
こちらのサンプルはXpand!2の025 PercussionのTaiko Drums Big 1+での図・百。
音は特に弄っていません。しいていうならDecayで余韻の調整をするくらいでしょうか。
さすがに釣太鼓のビリビリという振動音まではこの辺の調整では再現になりませんが、太鼓の音にプラグインなどでDistortionを極薄に掛けて、「一風変わった擬似振動を作り出してみる」というのも面白いのではないかと思います。
音はF6をチョイス。釣太鼓の音は若干高めの音なんですかね、私はそう感じました。
雅楽における太鼓(釣太鼓)の役割
さて、奏法なのですが、現代では打楽器は主に曲のリズムを刻むイメージがあると思いますし、大多数の楽曲ではそういう使われ方をします。
そしてポピュラーな打楽器である和太鼓なども、聞いていると叩き方には様々あることがわかるのですが、雅楽で使う釣太鼓に関しては以下、このような記述がありました。
多くの雅楽曲では、太鼓の奏法自体にリズミカルな役割を持たせてはいません。特に唐楽で奏する太鼓は、それぞれの楽曲で予め決まっている小拍子の数(小節数)毎に打つという、一種の区切りを表す役割を持っています。
出典:歌舞管弦 -太鼓- より
つまり、雅楽の管絃・左舞などでは太鼓はリズムを刻むという役割ではなく、節目の合図的に使われる(百を打つ)ことが主流とのこと。
ですが、雅楽の中でも右舞では、三ノ鼓もリズミカルな傾向があるのと同様、太鼓にもリズムが感じられるような使われ方がされるそうです。
・・・確かに、管絃・左舞・右舞それぞれを聞いていると、上記の通りそういった傾向が感じられました。基本的には儀式を重んじる楽曲ではそんなドンドコドンドコやらんということですね。
もしDTM的に言えば、
- 都の貴族のいる街やお上のBGMなら太鼓は節目に威厳的に打ち
- 町民やわいわいやってるお祭りのBGMならドンドコやる
といった使い分けをするとわかりやすいでしょうか。というか私がそう分けて使ってるだけなのですが。
大太鼓の音を創作して遊ぶ
上動画は釣太鼓とは別で、大太鼓が使われる例なのですが、これを見て最初めちゃくちゃ笑いました。弱く叩く「図」はともかく、強く叩く「百」はマジ殴りレベルなんですよ。奏者の被り物が若干ずれるくらいの(笑
音の質はというと、ガツンというよりはカツンといった感じのかなり硬めな印象。太鼓を叩くというよりはピストルの発砲音の方が近いかもしれません。
(ちなみに屋内で大太鼓が使われている雅楽の演目をみた限りでは、普通に大きく低く響く太鼓の音が出ていました。大太鼓にも色々あるようです。)
これは動画の音の再現ではなく、そのイメージから創作的に作った大太鼓の音。Xpand!2内で3つの音を重ねて簡単に作ってみました。ちと軽めですね。
- 音程を感じさせない打撃音にClap
- 太鼓の大きさをイメージしてThunder Drums+
- バチンという音に若干の追加が欲しくてBig Snare+
という風に音作りを楽しんでみます。少し効果音的な音作り。これだけだと別段どうということのない音の印象ですが、例えば、Reverv timeを5秒くらいに伸ばしてサイズも広めに取ったリバーブをがっつり掛けてやると、
結果、全然大太鼓ではない(笑)んですけど、これはこれで別の用途がありそうな風に仕上げられたりはします。(リバーヴのお陰とかいわない
複数の音を一つの音として聴けるように仕上げる訓練ということで、参考程度に載せておきます。
[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]遊び心も大事だねぇ[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]左様[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu6.jpg” name=”シブ君”]・・・波平さん?[/speech_bubble]
鉦鼓
管絃での鉦鼓は「釣鉦鼓」と言われ、高めで硬く、重い金属音が鳴ります。そして大きな音は基本出さない。
はっきりとした音程の無い効果音的なサウンドという扱いでここでは見ていきますが、これはシンセ音などで音作りをするより、この音に近い金属的な打楽器音源の音で置き換えるのが一番早い気がします。
鉦鼓の材質は青銅または黄銅製で作られているらしく、検索してみると真鍮(黄銅)製のものが多い印象でした。金属については全然詳しくないので、ここでは高めで硬く、そして重い音が出るという点を押えておきたいと思います。
鉦鼓の打法
- 片手で摺る「金(きん)」
- 両の手で摺る「金金(ききん)」
鉦鼓は叩く・打つではなく「摺(す)る」といいます。また、「金」「金金」も「チン」「チチン」と表現されたりもするようです。雅楽の曲を聞きこんでいけば細かな使い所は見えてきそうですが、今回はこの2点を基本として押えます。
鉦鼓を敢えてCelestaなどの音で代用してみる
早速近しい金属音を手持ちの音源で探してみたのですが・・・なんか見つからないんですよね(笑)。幾つかの動画を見るに、軽く摺っても随分と密度の高さを感じる重たい音が出るので、そのまま置き換えても鉦鼓の音に聞こえない。
そんなわけで、敢えてXpand!2内にあるCelestaの音を使ってコンプとEQを使い、鉦鼓の音にどれだけ迫れるかを試してみました。
・・・はい、まず笑っちゃうくらい軽い音のサンプルが出来上がりました(笑
使った音色は017 MalletsのCeleste Hard+。Xpand!2内ではリリースを短めにしたくらいで大きな変更はしていません。Hard+と表記があったので、これは硬いだろうと思ったのですが、全然硬さが足りない。なんという密度の違いだ。
この音に掛けたコンプの設定です。がっつり深めにかけてますが、原音が軽いのでコンプにも限界はある。Attackは16msec辺りが良さそうではあったのですが、もっと自分の耳が鍛えられたら変わってきそうな気はします。
ちなみにリファレンスの鉦鼓の音の倍音成分に似せる為、ピークの強かったところに近似的に音を置いているのですが(上画像)、やはり音程感がはっきりしてしまっているので、金属を叩く音としては聞こえにくいですね。
なので、ここから、打ち込んだ10音それぞれの音程を全てリファレンスの倍音周波数に合わせるためにピッチを全て変え、更に上からコンプで潰した結果がこちら。
10音それぞれのピッチを全てずらした為、先程よりは音程感が薄れ、金属的な響きのようにはなりました・・・が、一つのまとまった音としては聞こえない。
これは自分で作った音の周波数特性。
リファレンスの周波数の高さ(出力)に合わせてはいるのですが、やはりこの見た目だけ揃えても上手くいかないですね。元が違う音だし、原音のピークの分布はもっと細かく多いですから、当り前といえば当り前。
うーむ、代表的な箇所を見つけて真似れば近似できるかと思ったけど、金属音はそう簡単にはいかないのか。
というわけで、上記の状態から見た目の周波数を気にせず耳で一つの音として聞こえるよう各音の音量を調整した結果がこちら。
まだ若干バラつきは感じますが、これならギリギリ一個の音としての響きに聞こえなくもない。
ただし、一音一音全てのピッチをずらす作業を行う為、今回の場合Xpand!2の音源を計10個立ち上げることになってしまって、なんかもう大変なことになりました。
こうして音作りをする場合、曲を作りながらこうして立ち上げて音作りするのではなく、別プロジェクトで鉦鼓なら「鉦鼓の音」を作り上げてWAVなどで書き出し、以降はその一つのファイルのみを読み込んで使っていくのが至極当り前のやり方かと思われます。
・・・でないと、CPU処理が後々えらいことになりますし(笑
いや~、金属音難しいな~!!(笑
雅楽における鉦鼓の役割
鉦鼓も、太鼓と同じように、管絃・左舞では釣鉦鼓が使われ、右舞では大鉦鼓が使われるそうですが、やはり大鉦鼓もモノが大きい為か釣鉦鼓が良く使われるそうです。大鉦鼓は低い音が鳴り、釣鉦鼓のように小さい鉦鼓は高い音が鳴ります。
鉦鼓の役割は、太鼓が大きな節目を知らせる役割を持つとすれば、鉦鼓は小さな節目を知らせる役割を持つとのこと。またこちらも桴をもって摺るのですが、羯鼓や太鼓の一瞬後に音として続く形をとる。これは、鉦鼓の音が思ったよりも目立つため、その分控えめに使われるということのようです。
・・・なるほど、鉦鼓がそもそも控えめであるなら、先程私が作った下手な鉦鼓の音でもなんとかなるかもしれませんね!(いいのか
まとめ
太鼓
- 弱く叩く「図」
- 強く叩く「百」
- 雅楽では曲の節目に鳴らす(小節の頭)
- 儀式的な楽曲ではドンドコ鳴らさない、静かにドンッと打つ
- 色んな太鼓音源ですぐに代用可能
- 大きい太鼓は低い音、小さい太鼓は高い音
鉦鼓
- 1回摺る「金」(チン)
- 2回連続で摺る「金金」(チチン)
- 大きな音では基本鳴らさない
- 雅楽では曲の小さな節目に鳴らす
- 重く硬い音が特徴的
- 案外代用出来そうな金属音が見当たらない
→ 頑張って探す - 太鼓・羯鼓に続いて控えめに鳴らす
- 大きな鉦鼓は低い音、小さな鉦鼓は高い音
・・・さて、これで雅楽の3つの打物についての基本的な知識は押えられました。少しずつ楽器の役割と使い所が見えてみて、これを楽曲制作に活かすのがとても楽しみな私がいます。
学びは多分一生終わりませんが、それを表現してこその学び。一個ずつ丁寧に見ていきたいところです。
[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]あれ、ぼくたち今回全然出番なかったね[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii1.jpg” name=”ルイー”]ネタを入れつつ流れ作っていくのも大変だから、少しずつでいいんじゃないか?[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu1.jpg” name=”シブ君”]ま、ねー[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”shibu4.jpg” name=”シブ君”]しょうがない、許してあげましょう[/speech_bubble] [speech_bubble type=”fb” subtype=”R1″ icon=”ruii2.jpg” name=”ルイー”]それじゃ、またな![/speech_bubble]