【DTM】雅楽の打楽器『羯鼓(かっこ)』(鞨鼓)の音作りと打ち込み方【和楽器】

      2018/05/02

今回は、雅楽で使われる打楽器の

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

の3つの打楽器のうちの一つ、羯鼓についての打ち込みについて書いていきます。本当は3つ全部やるつもりだったんですけど、結構記事が長くなってしまったので今回は羯鼓のみとなってしまった。

 

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雅楽の打楽器

雅楽では打楽器を「打物(うちもの)」と呼び、その演奏スタイルの一つである“管絃”で使用される打物は、

  • 羯鼓(かっこ、鞨鼓とも)
  • 太鼓(たいこ)
  • 鉦鼓(しょうこ)

の3つ。「羯鼓」の字は、昔は羊の皮が使われていたためで、今はそれ以外の革も使われる為「鞨鼓」とも書くそうです。張られた革を桴(ばち)で叩いて音を鳴らします。

また、この“管絃”の他に“舞楽”というものがあり、この舞楽には、

  • 左方の舞楽(唐楽)
  • 右方の舞楽(高麗楽)

と2種類あります。

 

今回の題材となる羯鼓はその“管絃”“左方の舞楽”で使われ、“右方の舞楽”には、羯鼓の代わりにそれによく似た「三ノ鼓(さんのつづみ)」と呼ばれる打物が使われます。

三ノ鼓の羯鼓との違いは、

奏法に違いがあり、右手には太い棒状の桴(ばち)、左手は楽器の調緒(しらべお:鼓面を結んでいる紐)を持って演奏します。一回あるいは数回打つ奏法(帝(テン)/帝帝(テンテン))しかなく、「鞨鼓」のように連続して打つことはありません。

引用:http://www.gagaku.net/Gakki/uchimono.html

と、打ち方のバリエーションは羯鼓に比べて少なく、またどちらかというとリズミカルに鳴らす打物のようです。

これは左方(唐楽)と右方(高麗楽)の系統の違いから見ていくと更に理解が深まりそうですが、今回は「羯鼓」についての音作りや打法の打ち込みなどをメインに見てので、ひとまずこの辺りに留めておきます。

 

羯鼓

次に、羯鼓の楽器としての役割と打法をまとめます。

雅楽における羯鼓の役割

  • 楽曲の指揮者のような存在
    → 熟練の奏者が主に担当する
    → 打楽器としての位は第一位
  • 曲全体の流れやその速度の進行を担う
  • 曲の終わりの合図も受け持つ

 

羯鼓の打法

打法は、ここでは動画の流れに沿って2つに大別します。

  • 一度だけ叩くのが「(せい)」
  • もう片方の手で叩く速度を少しずつ上げていくのが「(らい)」
    → 片方の手でそれを行うのが「片来(かたらい)」
    → 両方の手で交互に叩くのが「諸来(もろらい)」

尚、打法を3つで言い表す場合は「来」をまとめずに、「正・片来・諸来」と分けます。

 

羯鼓の奏法

上の動画は「正、片来、正、諸来」という流れ。越殿楽の始めもこの「正、片来、正、諸来」なので、3つの打法が入った一番基本的な型なのかもしれません。

また、羯鼓の奏法としては、以下「鞨鼓八声」という八つの代表的な型があるとのこと。

▼鞨鼓八声

  • 「阿礼声」(あれいせい)・・・調子という楽曲に用います。 (是調子ノ打方ナリ)
  • 「大掲声」(だいかっせい)・・・延八拍子の楽曲で用います。 (延八拍子ノ打方ナリ)
  • 「小掲声」(しょうかっせい)・・・早四拍子の楽曲で用います。 (早四拍子ノ打方ナリ)
  • 「沙音声」(しゃおんせい)・・・早八拍子の楽曲で用います。 (早八拍子ノ打方ナリ)
  • 「璫鐺声」(とうとうせい)・・・輪台、五常楽破で用います。 (尋問抄曰、中八拍子ノ打様ナリ)
  • 「塩短声」(えんたんせい)・・・序吹の楽曲に用います。 (序ノ打方ナリ)
  • 「泉郎声」(せんろうせい)・・・延四拍子の楽曲で用います。 (延四拍子ノ打方ナリ)
  • 「織錦声」(しょくきんせい)・・・六拍子の楽曲で用います。 (六拍子ノ打方ナリ)

参照:歌舞管弦 – 羯鼓 – より

雅楽の曲を本来の伝統に沿って作製する場合などはこの辺りも掘り下げて学んでいく必要はあるかとは思いますが、ひとまずここでは「正・片来・正・諸来」という基本と思われる奏法と、古代の文献にもある8つの伝統的な奏法があるのだということを押さえておきます。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・正

まず打法「正」の音をサンプルとして作ってみました。

これは動画にある羯鼓の音などを参考に、EZX LATIN PERCUSSION / BOXという音源のC#3・Bongo2の音をEQ加工して高めの音が特徴的な具合に作ったものです

 

ちなみにこちらがLATIN PERCUSSIONの加工前のBongoの音。これだけ聞くと、ああ、ボンゴだなって感じです。

 

羯鼓の音作りはボンゴなどの高い音が出る音源で代用

羯鼓は打物の中では直径も小さく、割と甲高い音が鳴るので、このようにボンゴなどの音を使って代用できるかと思います。

最近和楽器のソフト音源が増えてきているので、もしかしたら羯鼓の音源もあるのかもしれませんが、私もまだ詳しく調べ切れていないのと、手持ちで再現できるならその方が早いと思って加工して作りました。単音ですしね。

 

Bongoの音から羯鼓の音へのEQ加工の図例。

リファレンスの音と元のBongo音の差をCubase内のStudioEQを3つ使い、元音に近づけつつ、聞いて違和感のないくらいまでもっていきます。原音はもう少し1~5kHz辺りも出ていましたが、加工用のボンゴでそこをブーストするとキンキンして私の耳が「それはダメ」と言っていたのでそこは抑え目に。

シブ君
こういう加工をする場合は、周波数だけをそのまま似せても原音の通りになるわけじゃないから、最終的には自分の耳で判断するといいよ
ルイー
おっ、急に登場とはやるな

 

作った羯鼓の音の周波数特性

作った擬似羯鼓の音の周波数波形。音のピッチにもよりますが、今回の音では550、690Hz辺りが一番よく出ていて、継いで350、990Hz周辺、そして1.5k、2.5kHzという感じです。あと、見えてはいませんが100Hz辺りを少し持ち上げてやると、ポンッという羯鼓を叩く独特の迫力が少し出てきます。

こうして音を近づける作業は、一側面ではあっても音の特徴が自分の中に経験値として蓄積されていきますし、新たな発見があってやはり楽しいですね。

ルイー
打楽器系の100Hz辺りは迫力が出るのか
ルイー
・・・フッ、俺も100Hz出すしかねーな
シブ君
そうだね、君の顔下ほとんどないもんね
ルイー
実は地上から若干浮いているのだ!!
シブ君
・・・ドラえもん?

 

「正」の打ち込み例

こちらは打ち込みの様子。BPM120の一小節を1/64に区切った状態です。EZX LATIN PERCUSSIONのBongo2ではベロシティの変化だけでは音が小さくなりきらなかったため、オートメーションをかけて音の消え入りを表現。

「正」の叩き方にもよるでしょうが、今回は動画を参考に9音使い、その間隔は頭の音から順に、

  • 92,80,80,80,75,90,70,100msec

と微妙に法則が見出せない感じとなりました。さすが手癖の間隔。

 

ちなみにこれを簡略化させようと、頭を揃えてから1/64でクオンタイズをかけてやると・・・

こんな感じに。これならまぁ、先程とそんなに違いはないかなぁという印象。他の音と混ぜれば多分わからない。

 

これをもっと簡素化しようと1/32でクオンタイズをかけてみると・・・

・・・大分ズレを感じるかと思います。

ただ、羯鼓の「正」らしい打ち込みを表現するなら若干簡略化しすぎかなと個人的には思いますが、そういうのを抜きにして打ち込み表現の一つとしては十分ありだと思います。新たな発見なら尚良し。ドラムのフィルの作り方とちょっと似てますね。

シブ君
ポジティブ~
ルイー
ぽじシブ~
シブ君
は?
ルイー
わー、ダークシブの登場だー
シブ君
・・・
シブ君
かわいい?
ルイー
いや、かわいくはねぇよ

 

最終的に表現者それぞれの好みや思惑で割と簡単に押し通せたりするのが音楽というものでもあるので、この辺は参考程度に見て下さい。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・片来

・・・このあと、何かがトトンと登場するようなイメージがどこかにありますね。

 

「片来」の打ち込みの様子です。「正」では、ドラムでいうスネアのゴーストノートを細かく見ていった形になりましたが、上画像では丁度良く1小節ごとの間隔で音の間隔が段々と狭くなっている。

DTMでの打ち込みでこれを表現する場合は、

  • 上画像のようにBPMを固定して音を段々狭めるようにおいていく
  • もしくは、音の間隔を固定してテンポを段々速めていく

の2パターンのやり方がオーソドックスかと思われます。要は自分のやりやすい方法でそれっぽく聞こえればOK

 

一例として、BPM固定ならばこうして「1/8・1/8の三連符・1/16・1/16の三連符」という風に、一拍置きに順に幅を狭めてからクオンタイズでランダム化を掛けるというやり方や、

 

バーッと同じ間隔で音を並べてからテンポトラックで段々速くするだけで「片来」の表現の基本形はできます。

 

羯鼓の打ち込みサンプル・諸来

音として聞く分に「諸来」は基本的には片来と同じですね。

 

ただ「諸来」は、羯鼓を左右から交互に叩いて音を出す打法なので、細かい表現をするならば左と右の音のピッチ差を若干ずらすなどして僅かに音の違いを作ると、よりそれっぽくなるかと思います。なので、上のサンプルでは2つの音を交互に鳴らして作成しました。

 

スーペリアドラマー2.0で読み込んだラテンパーカッションの音作りでは、左と右の音でそれぞれ音源を立ち上げ、ピッチの部分のみを若干ずらす。基本はこれだけです。理由としては、「左の面」「右の面」それぞれに張られた“張りの強さ”は違いとして分けた方が自然であろうという考え方から。

また上画像では、ボンゴ音の頭の鳴り直後の余韻が少々大きすぎたように感じられたため、アタック感のみを強調するようエンベロープ調整をかけています。

 

ただ、実際に叩く音では、一面であっても、強さ、場所、空気感などで、厳密に言うと全く同じ音は出ません。なので耳で聞く分には、片来と諸来、どちらがどちらかなどそもそもわからないこともあるため、一音のみで諸来を表現しても特に違和感はないかと思われます。今のサンプラー音源なら毎回違う音が出るように設計されていたりしますしね。

シブ君
最初にしっかり押えておけば、後で手間を省く時が楽ってことだね
ルイー
でも、時間かかるならいっそ録音したほうが速かったりしないか?
シブ君
ま、ねー
シブ君
サクッと録音で済ませられたらいいけどね

 

・・・今回、羯鼓について少しだけ細かく見ていく形をとっていますがこれには理由がありまして、調べてみると、

演奏は難しく、長い年月を掛けて研鑚を積んだ雅楽家でも円滑に演奏することは容易ではないという。東儀俊美は、自然と音楽のリズムを把握する奏者でなければ、上手く羯鼓を演奏するのは難しいと指摘している。

引用:Wikipedia 羯鼓 より

というように、羯鼓の演奏にはかなり高度な技術や経験が必要とされるとあったから。

東儀俊美氏は代々雅楽を世襲してきた家系の熟練の雅楽師。その人をもってして「難しい」というのは、如何に羯鼓が雅楽において重要な役割を担っているかがよくわかる。

 

そんなわけで、DTMで打ち込みをするにしても力を入れておいたほうが自然だろうと考えて、羯鼓の初回にして少し気合を入れたというわけです。自分なりの敬意の表し方というのもありますが。

 

まとめ

今回の羯鼓について大雑把にまとめてみます。

  • 羯鼓が使われるのは、雅楽では“管絃”“左方の舞楽”
  • “右方の舞楽”三ノ鼓
  • 楽曲の中では指揮者(コンサートマスター)
  • 曲全体の流れやその速度の進行を担う
  • 曲の終わりの合図も羯鼓の仕事
  • 一度だけ叩くのが「(せい)」
  • 片方の手で少しずつ速度を上げて叩く「片来(かたらい)」
  • 両方の手で交互に速度を上げて叩くのが「諸来(もろらい)」
  • 代表的な奏法は「鞨鼓八声」
  • 音は少し高めで歯切れは良い
  • Bongoの音などで代用可能
  • 羯鼓の演奏次第で曲全体の絞まりが変わってくると思われる

 

こんなところでしょうか。

一応この記事では、雅楽の楽曲を本気で作るというよりは、もっとふわっと「和風の曲をDTMで作ろう」というものなのですが、折角なので一つの楽器ごとにこうして経験値を積み上げていくと、いつの間にか曲全体もクオリティアップ!!・・・という魂胆で進めていっております。

 

シブ君
次は太鼓・鉦鼓について見ていくよ!
ルイー
てかさ、俺思いついちゃったんだけどさ
ルイー
羯鼓の音、俺の頭にお前をポコポコ当てればそれっぽく鳴るかな?
シブ君
・・・
シブ君
何その自虐ライブ
ルイー
いやお前、四分音符の化身だろ、丁度いいじゃん
シブ君
そんな綺麗な頭に誰が乗るか
ルイー
え、それ褒めてんの?なんでキレてるんだ・・・
シブ君
それじゃーまたね!
ルイー
相変わらず唐突だなぁ・・・

 

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