雅楽の三管と呼ばれる、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)。
今回は、その吹き物の一つである、
『篳篥』
という楽器ついて、DTMで楽曲を作っていく上でどのような楽器なのか、どんな役割があるかなどをまとめてみます。
篳篥もまた笙と同じく音源が全然出回っていない楽器なので、似ている音色を代用して使うことにしました。「GARRITAN WORLD INSTRUMENTS」には入っていましたが、国産ではまだ私は確認出来ていません。SONICA INSTRUMENTSさんのような和楽器専門の音源として是非欲しいところですよねー。
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篳篥とは
雅楽では、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)と篳篥をまとめて三管と呼び、笙は天から差し込む光、龍笛は天と地の間を泳ぐ龍の声、篳篥は地に在る人の声をそれぞれ表すという。篳篥は笙や龍笛より音域が狭いが音量が大きい。篳篥は主旋律(より正しくは「主旋律のようなもの」)を担当する。
出典:Wikipedia 篳篥より
実際の雅楽の曲調ではあまりそういう印象は受けないかもしれませんが、例えるなら歌モノでいうボーカルの役割を果たしているといえばわかりやすいかなと。
長さは18cm。見た目はとても小さいのに、非常に力強い大きな音が出ます。そして楽器としての構造はオーボエに似ている。
音域は、西洋音階のソ(G4)から1オクターブと1音上のラ(A5)が基本だが、息の吹き込み方の強弱や葦舌のくわえ方の深さによって滑らかなピッチ変化が可能である。この奏法を塩梅(えんばい)と呼ぶ。
上の動画でも言っているのですが、「いい塩梅だなぁ~」というのはここから来ているようです。面白いですねー、歴史の謎を一つ解き明かした気分です。
音階はG4~A5とありますが、実際Saxなどの音色で当ててみるとこれも音的に1オクターブ高かったので、Cubaseなどで打ち込むときはG3~A4という風に1オクターブ下げて音を当てていきます。鳴らせる範囲は狭いですね。
力強い音が印象的な一方、こちらの動画のように、柔らかで甘い感じのする音色も特徴的。音の繋がりが非常に滑らかです。
そして面白いのが、
篳篥にはその吹奏によって人が死を免れたり、また盗賊を改心させたなどの逸話がある。しかしその一方で、胡器であるともされ、高貴な人が学ぶことは多くはなかった。
とあり、清少納言も「耳にうるさい」みたいなことを言っていたようなので、平安時代では甘く優しい音の出る篳篥というよりは、どちらかというとラッパみたいな印象のある音として使われていたのかなぁと思いました。
胡器の「胡」とは「えびす」のことで、いわゆる辺境に住む民族のこと。古代日本だけでなく、古代中国でも「胡」は”文化性の低い野蛮な民族”という意味として、中央政権からはこの言葉が使われていたらしいです。あくまで文書を残した国家から見た評価なので、そんな野蛮ではなかったとも思うんですけどね。想像を膨らませると面白い(笑
歴史としては、大石峯良(平安時代中期の人)が「篳篥の楽祖」とされ、平安時代には主に大篳篥が使われたがその後用いられなくなり、再び使用されるようになったのは明治時代だそうです。
一般的に言う篳篥は「小篳篥」になるので、「大篳篥」については今回割愛します。
篳篥は単音・モノフォニック
篳篥には笙のような単独での和音発声はありません。モノフォニックです。
そして篳篥はダブルリードなのですが、このダブルリードという意味は、
ダブルリードは、乾燥させた葦を削ったものを二枚重ね合わせて作られ(篳篥の場合は、乾燥させた筒状の葦の茎の一端を潰して削る事によって作られる)、これを楽器の吹口に取り付けて吹くことで振動させる。
出典:Wikipedia ダブルリードより
ということで、こういった吹き口が二枚重ねの作りになっている楽器の総称のこと。一本で2つの音を同時に出せるとか、そういう意味ではありません。
篳篥の音作り・サックスの音色で代用
篳篥の音源が少なくとも今、私の手元には無い。それは事実。
ということで、今回もXpand!2を使って篳篥の音を再現してみます。別にXpand!2でなくともいいのですが、私の中でXpand!2の音は結構汎用性の高い音といいますか、加工するにも融通が利くイメージがあるんです。
他には例えば、先日購入したKONTAKTシリーズのライブラリの中に入っていたAlto Saxophoneなど、キンキンさがキュッと詰め込まれたような音色でなかなか良さそうだとな思ったのですが、なんとAttackパラメータがなかったという。
そういうわけで、Xpand!2を使うことにしました(笑
サンプルは平調・越殿楽(越天楽)を参考にしています。
なんだろう、お豆腐屋さんみたいでもある(笑
音色は016 Brass+Woodwindの「Baritone Sax+」に、同じく「Alto Sax+」を小さく重ねがけしています。Attackは結構遅めに設定し、Releaseも気持ち遅めにしています。アタックをあまり遅くしすぎると篳篥らしさが失われてしまうのと、リリース少し伸ばした方が音と音の繋がりが滑らかになりやすいので、そうしました。
これは一例ですが、篳篥の周波数特性は力強い時はこのような形になっていました。
なので、Xpand!2の音にまずディストーションを薄っすらかけてから、このようにEQで足りない部分をかなりブーストしました。いつもなら最終ミキシングで削る帯域である、1.5kHz、2.5kHzを逆に、狭めたQで持ち上げてやり、その後に薄くコンプを掛けました。
・・・ミキシングでは普通はこんなEQの持ち上げ方はしないとは思いますが、一つの音作りの場合では、私はちょくちょくやってます。違和感が出ない程度に。
ハチプロ(SC-88pro)を使っていた頃の癖でレゾナンスとかもXpand!2のコンソールで弄れたら良かったんですけど、それは無かったのでEQで済ませてみています。
折角なので以前音作りした笙の音も一緒に重ねてみます。進行は「凢・一・乙・乙」。
まだまだ納得のいく音にはなっていませんが、雰囲気は出てきたのではないだろうか。
今回の打ち込み画像。
cc7メインボリュームで抑揚をつけることにし、頭のピッチベンドをちょこっとだけ弄りました。ベロシティは、Attackはそんなに欲しくないけど音のキンキンさは欲しいので、強調したいところはMAX。少し消えていく感じを出したい部分は下げ目に。
まとめ
現時点での篳篥についてをまとめると、
- 主旋律を担当
- モノフォニック楽器
- 音階は基本がG5~A6(打ち込みでは1オクターブ下に)
- 音の立ち上がりや繋ぎは滑らか
- 強い音ということが特徴的(柔らかい音も出せる)
- 野生的であり、雅で艶やか
- 柔らかい音の時はどこかエロい
- 原理はオーボエに近い
構造がオーボエに近いということもあるので、立ち上がり感の似ているオーボエで代用してもいいのかもしれません。Saxは音こそ似ていますが篳篥に代用するにはAttackが強すぎるので。
そして篳篥はリードを司るだけあって、抑揚の取り方がやはり肝になると思いました。これからもっと研究していこう。
最後に、甘い音色の篳篥の動画を載せておきます。かっこいい・・・
それでは。