こんにちは、少し前に和楽器の『箏』音源としてSONICA INSTRUMENTSの『KOTO 13』を買ったのですが、これが個人的にとても素晴らしかったので、どんな音源なのかを自分流に記事にしてみます。
詳しい内容は、本家のページや無料でダウンロードできるマニュアル、またMedia Integrationのページを見ていただければと思いますので、ここでは私の体感を書いていきます。
SONICA INSTRUMENTS
SONICA INSTRUMENTSはSONICA Inc.のソフトウェア音源開発部門とのことで、和楽器の音源を主に製作されているようです。2018年10月現在では、
- 笙
- 尺八
- 三味線(津軽)
- 箏(十三絃箏)
- 歌舞伎&能のパーカッション
- 和太鼓
の音源がリリースされていて、非常に純度の高い和楽器音源を作っている印象。
イイですね。非常に良いです。個人的には篳篥の音源を心待ちにしている自分がいます。あの音は代用が非常に難しいと思うので。
ただ、上4つの楽器はKONTAKT5以上(製品版)、下2つの打楽器音源はBFD音源がないと動かせないので、そこだけ注意。
結構、製品版のKONTAKTが無いと使えない音源多いので、去年のブラックフライデーで買っといて正解だった。BFDは・・・残念ながら買う予定がないので今のところはSONICAの和太鼓は諦めてるという。ドラムはDFHS派の自分。
詳しい使用条件等は本家サイトのSPECIFICATIONS等を参照下さい。
KOTO 13 – mix画面
それでは早速見ていきましょう。ざっくり行きます。
mix画面で結構いいなぁと思ったのが、Direct、OH(オーバーヘッド)、Room、Stereoの4点からそれぞれDAW側にパラアウト出来るところ。
音としては「Direct・OH・Room」の内1~3つを使うか、「Stereo」を使うかのどちらかになるわけですが、この「Direct・OH・Room」は別々のトラックに出力出来るので、DAW側で別々に処理が出来るようになる。
たまに音作りの一環として、「原音からRoom成分だけ別トラックに作って、それ用の処理を施して元のトラックに混ぜ合わせる」とかしたりするので、最初から分かれてるのは何かと便利だったりします。
特に分ける必要がなければ、一括されてる「Stereo」使えば良いだけですしね。
あと、リバーヴの種類が予想外に多かったです。見えてる分の倍あります。
箏の場合、やはり響きが大事だと思われるので、色んな場所でどう響くかをこの音源内で確認できるのはでかいと思う。
KOTO 13 – play画面
2枚目のplay画面。何やら色々なツマミがあります。
やーでもこれほんとありがたい機能色々あるので凄い嬉しい。一個ずつ見ていこう。
Scale(スケール)
画像が縦長になっちゃうので途中で切ってますが、Scale部分をクリックすると、縦にズラッと調子が出てきます。Media Integration, Inc.のページから引用すると、
収録スケール(調子)28種類
平 調子、六上り調子、四九上り調子、雲井調子、本雲井調子、半雲井調子、片半雲井調子、中空調子、曙調子、中空調子、楽調子、半楽調子、乃木調子、花雲調子、岩戸調子1、岩戸調子2、半岩戸調子1、半岩戸調子2、夏山調子、古今調子、新古今調子、平巾十調子、二重雲井調子、雲井巾十調子、秋野調子、琉球調子、想夫恋調子、新雪月花調子
移調対応Key: G / G# / A / A# / B / C / C# / D / D# / E
なんと28種類もありました。ほとんど知らない調子でビビった。想夫恋調子って何!?すっごい恋しい感じしそうなんですけど。
ただ、民謡の曲数だけでも実はとんでもない数あったりする(約3~4000曲くらい?)らしいし、それぞれの時代や地域で発展したものと考えると感慨深い。
KOTO13では、この28種の収録スケールに合わせている場合、上の青い部分の白鍵13個が左からそのまま箏の絃の、
「一、二、三、・・・斗(11番目)、為(12番目)、巾(13番目)」
という順番になっています。
試しにScale:Hira(平調子)で鳴らしてみるとこんな感じ。
ただ、ピアノロール上では「C、D、E・・・」となっているので、そこは注意。
で、このScaleはクロマチックモードにもなれます。さっきより青い部分が広がっているのですが、これは黒鍵を含んだこの青い範囲で、調弦とか関係無しにこの範囲全ての音が出せます。これいいな~と思いまして。
なぜかというと、例えばもう一個KOTO13を立ち上げる必要はあるのですが、
- 一個目のKOTO13:十三絃箏モード(例:雲井調子)
→ 調子のみの音が出るのでイメージを固め易い - 二個目のKOTO13:クロマチックモード
→ 一個目の調子以外の音も出せるので和ジャンル以外の曲調にも持っていきやすい
こんな風に使うことも出来るという。
既に箏の調をマスターしている方やピアノが得意な方はクロマチック一本で済ませられそうですが、私みたいにピアノ下手な場合、「調弦のみの音が出る形」になっていた方が適当にMIDIキーボードを弾いててもそれっぽい雰囲気を得られるので、曲作りがとてもしやすいんですよね。
ちなみに、
- 低音部が結構増えるので、擬似的に十七絃箏として使うことも可能?
(クロマチックだと「A#1~D5」、User Scaleだと「A1~F#5」)
とも思えたのですが、調べてみるとどうやら十七絃箏の低音はC1までは出るっぽいので(KOTO NATIONのBass Kotoも「A#0~G3」と、A#0まで出る)、KOTO13の低音はあくまで十三絃箏で出せる低音の限界という形を取っていると思われます。
この辺りは私も奏者ではなく、十七絃箏も持ってないので未確認。
Envelope
play画面真ん中にある項目です。左からざっくり行くと、
- Envelope
→ ノートのリリースを調整
→ 細かいことを言うと結構重要 - Phrase Control
→ 収録されているフレーズのスピードとチューニングの調整
→ フレーズはこのspeed=100%を基準に録音されていると思われるため、100より下だとバリッとした音になる。100より上で使う分には違和感はない。 - Plucking Control
→ 絃が爪で弾かれて音を出すまでの長さを調整
→ テンポの早い曲ならここを短くすると良さ気
→ RANDOM PREROLLを押すと、そのランダム調整が出来る
という感じなのですが、個人的にはこのEnvelope調整出来るのが嬉しい。
打ち込みで細かく表現したい場合(箏一本で楽曲を作るなど)、例えば親指で十の絃を押し弾いた場合、その爪は一個奥の九の絃に当たって止まる。仮にそれ以前に九の絃が鳴っていた場合、十の絃が鳴った直後に九の絃はミュートされていなければならない。
Cubaseの打ち込み画面で説明するとこんな感じなので、その辺りもやってく場合はEnvelopeを短めにして打ち込むといいのでしょう。
ただ、鍵盤で演奏する場合、実際の箏とはやはり勝手が違うので、ペダルを使うか8.0k[ms]にしておくと、取説にある通り凄く余韻を堪能できて「す、すげぇ・・・ゴクリ」となると思います。
余韻だけでこんなに違うんだなぁと改めて感じさせられます。
Velocity Control
これはベロシティの調整部分ですね。
私が今使っている分にはベロシティ間の音の差にはあまり違和感を覚えないのですが、例えば、最初に打ち込んではみたものの後になって「少し印象を変えたい、でも全部のベロシティ調整して回るのメンドイ」という場合などに、このツマミを使って調整したり出来そうです。
例えば、「Linear」の部分を「S-curve」にして「shape」を左に回すとこんな感じに、
右に回すとウネッと変化します。
これでヴェロシティの数値と実際に出る音のバランスを変えられるわけですね。
わかりやすく解説すると、こうして全てをMAXにするとどんなに小さいノートでも力いっぱいの音が出ますし、
逆にこんな形にすると、強く叩くほど小さい音が出るという設定も出来ます。面白い。
始めのうちはここをそんなに意識する必要性はないかなとは思いますが、あとあとここを弄れるというだけでも結構違う気はします。こういう細かいカスタマイズが出来るのはいいなぁ。使う人は使うだろうし。
今まで私は箏音源としてKOTO NATIONを使っていたのですが、KOTO NATIONは、ヴェロシティが70前後と90前後で音色が割と露骨に変わります。そして私はその70~90の間の音色が気に入っていたので、その間で変化つけようとするもんだからすんごいちまちま数値変えたりしてました。
でもKOTO13にはそういう露骨な変化は特に感じられない上に、もし変化を付けたい場合はVelocity Controlを弄ればいい。これは便利だなと思った。
ただKOTO NATIONに関しても、あの急に変わるキンキンした音も嫌いではないし、同封の三味線・Bass Kotoも結構好きなので、ダメというわけではない。ないけど、KOTO13はその辺も考えられてるんだなぁと。
KOTO 13 – memory画面
割と記事が長くなってますが気にせず行きます。
ARTICULATIONはキースイッチで、PHRASE BANKはサラリンなどのフレーズが入ってます。ここも、それぞれ左にLoadってあるんですけど、使わない奏法はそこをクリックしてOFFにすることで使用メモリの軽減が出来る。
また、
「D#0 Pizzicato(Left/Right)」
という風に右にカッコで囲まれた部分は「CC#11 Expression」で切り替えも出来る(「EP=0:Left、EP=127:Right」という具合)。
左の赤い部分がキースイッチで、右の黄色がフレーズ系キースイッチ。で、そのまた右の緑色がフレーズのヴァリエーションの数。
奏法について
気になっていた部分だけ書いていきますが、
- すくい爪
→ D1にある - 散し爪
→ D#1、E1にある - 輪連
→ E1:Fastの方の散し爪を2音重ねればOK - すり爪
→ A#5:Effects内に行き、戻り共にあった - 消し爪
→ F0にあった(音源内、マニュアルにはF9とあるが誤植と思われる) - 裏連(サラリン)
→ F5にフレーズとしてあった
→ 人差し指・中指の爪の裏側でグリッサンドで降りてくる時の「爪の裏側で擦る音」はD1:すくい爪のヴェロシティが低い帯で表現できそう
・・・というわけで、私が知っている分には全て表現できそうです。
うん、何か抜け落ちてないかちょっと不安ですが、以前箏について書いた記事内の奏法に関しては大丈夫ですね。凄いなKOTO13。しっかりした箏音源欲しかったから個人的には大満足。
また、きちんと
- C0:親指爪
→ 少し太めの音 - C#0:人差し指爪
→ 少し鋭めの音 - D0:中指爪
→ 鋭さと太さの中間くらい
この三つの指それぞれで弾いた時の音をしっかり分けてくれているところは非常にありがたい。私の印象は上の通りで、違和感のない範囲で違いがきちんとある。むしろ若干わかりやすく指の違いを印象付けている気はしました。
F5:Sahrarin(裏連)の不具合?
不具合?らしきものを一点見つけたので記載しておきます。それは、
- F5:Sahrarinの「OH」「Room」「Stereo」のoutが設定通り反映されず、「Direct」で設定したOutから音が出力される(Directに追随してしまっている)
というもの。
上記の画像では、Scale:クロマチックにして青枠から音を出しているのですが、
- Directのout → st.4
- OHのout → st.5
- Roomのout → st.6
- Stereoのout → st.7
- KONTAKTの基本Output → st.8
という形で試しに割り振ったところ、正常に設定通り音が出力されています。KOTO13内をStereoに切り替えても、st.7からきちんと音も出力されます。
ここで、設定そのままでF5:Sahrarinを使うため、緑枠を押して裏連のフレーズ音を使うと、
このように、st.5(OH)、st.6(Room)から設定通り音は出力されず、どうやらDirectで設定したst.4に追随しているようで、st.4からDirect・OH・Roomの音がまとめて聞こるという結果に。これはStereoにしても同じでst.4から出力されていた。(Reverbはst.8から出ているので、これは問題ない)
他の黄色枠のPHRASE BANKに関しては問題なかったので、F5:Sahrarinだけこの現象が起きました。
これが自分の環境のみでの不具合なのか製品版の不具合なのは現時点ではわからないので、後ほど問い合わせてみようかとは思いますが、SONICA INSTRUMENTSのサイトにはパッチだったり不具合に関する情報は特に載ってないからなぁ。
一応、こういうことがあったという報告だけ。
早速作ってみた
KOTO13を使ってジングルを作ってみました。これはKOTO13を2本使っている形になりますが、DAW側でエフェクト等一切使っていません。
んー、これから使うのが実に楽しみな音源である。
おわりに
結局、細かく見ていった部分もありますが、超大雑把にまとめてみると、
- そもそも音が良い
- 割とカスタマイズが出来る
- 奏法全部入ってる
- 調子も28種+クロマチック入ってる
- メモリにも気を遣っている
- アーティキュレーションとフレーズが3画面全部で見れる
- これは篳篥がほんと待ち遠しい
- 素晴らしい
はい、まとめ方若干酷いですが、とりあえずとても良い箏音源です。
人によって色々印象は違うとは思うんですけどね。そもそも音が良いし、ヴェロシティの変化で過激なものは個人的には感じられないのでかなり使いやすいです。
ただ、箏の音自体は他のマルチ音源内蔵のものでも割と音に融通が効く印象があるので、ライトに使う分には箏という楽器一つの音に3万出すかどうかは分かれ目かと思いますが、和楽器好きならこれはオススメできる。
以上、ご参考までに。
それでは!