雅楽で仕様される3つの管楽器、『笙』、『篳篥』、『龍笛』。
今回は「龍の鳴き声」と称される横笛、
『龍笛』
について、簡単にどういう楽器なのかを見ていきたいと思います。龍笛については音色はフルートとほとんど変わらないので、今回は音作りはしていません。
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龍笛とは
雅楽の楽器の中では広い2オクターブの音域(E5~D7)をもち、低い音から高い音の間を縦横無尽に駆け抜けるその音色は「舞い立ち昇る龍の鳴き声」と例えられ、それが名前の由来となっている。
出典:Wikipedia 龍笛より
とのことで、素晴らしくかっこいい。
龍(竜)については、古代中国が起源とされているようですが、
- 西洋では身体の太いタイプの地上型「竜(ドラゴン)」
- 東洋では細長く、水中もしくは空にいるタイプの「龍」
と認識が分かれているのは面白いところ。
そしてこの横笛は古くから非常に人気のある楽器だったようで、古代日本では奈良時代から始まり、平安時代でも公家・武家共に好まれ、いくつかの書物にもよくその名が出てくるそうです。清少納言も篳篥とは正反対の大絶賛で、牛若丸(源義経)の持つ笛もこの横笛。
とにかく親しまれていたことだけは確かで、持ち運び易くてメロディも奏でやすい。また音色も優しく響くので、これで人気が出ないわけがないですね(笑
大神に出てくるウシワカもこれを持ってます。なぜか陰陽師で中途半端な英語を使いながら、これで叩っ斬ってくるウシワカイズヒア。
龍笛の長さはおよそ40cm。上のイラストでは5つですが、龍笛の指穴は7つ。
「歌口」と呼ばれる吹き口には蝋が仕込まれていて音程などを調節し、その上の部分には笛を吹くための重心調整と音量を上げるために鉛が仕込まれているそうです。
そしてこの龍笛は「横笛」と言われ、横笛には龍笛の他に、
- 高麗笛:約36cm。指穴6つ。龍笛よりも細く、高い音が出る(2度上)。狛笛とも。
- 神楽笛:約45cm。指穴6つ。龍笛よりも太く、低い音が出る(2度下)。大和笛とも。
があります。
この3種類の横笛は、
- 龍笛(りゅうてき)は、奈良時代から平安初期にかけて中国大陸より伝来した、宮廷の娯楽や儀式的に使われた「唐楽」
- 高麗笛(こまぶえ)は朝鮮半島より伝来した「高麗楽」や、平安時代の東国の風習を取り入れた「東遊(あずまあそび)」
- 神楽笛(かぐらぶえ)は、神を祭る、神の降臨の儀式・お祭りの「神楽」
で、使われるとのこと。
それぞれ異なる伝統があるようですが、今回は大まかにどういった用途で使われるかの把握に留めておきます。
ちなみに「能管」といって、龍笛に良く似た横笛がありますが、こちらは
「龍笛は能管の原型であるが、能管には龍笛にはない「のど」と呼ばれるものが笛の内部に入っており、音を出しやすくしてある」といわれます。
出典:雅楽-gagaku-あれこれ 龍笛と能管の違い より抜粋
とのこと。また上の動画によると、能管は合奏には向かず効果音的使用として用いられるということのようです。能管は龍笛の派生楽器らしいのですが、とても奥が深いですね。
龍笛の主な役割
龍笛は、音階も広く(E5~D7)篳篥よりも優しい音を出すことから、主に副旋律を担当。ただ、その使用をみるに、主旋律である篳篥を装飾するだけではなく、時としてその主旋律にいることも多いように思います。
また、雅楽の楽曲の始まりを司る役割もあり、楽曲の頭には、まずこの龍笛から演奏が始まるのが基本のようです。楽曲や調によって常にそうであるとも限らないようなのですが、基本は「龍笛から始まる」と、ここでは押さえておきます。
龍笛の音をフルート音源で代用
Youtubeなどで龍笛の音を確認してみたところ、高音なためか、
- Xpand!2のフルート音色
- Hollywood Orchestra・Woodwindsのフルート音色
と音色自体はほぼ変わらない印象を受けました。ただ、息の吹きぬけるようなわずかなブレス音が欲しいとは思ったのでPan Fluteを重ねようと考えましたが、Xpand!2にそれが無かった。それにXpand!2のフルート音、龍笛として考えるとビブラートが掛かりすぎている。
なので、今回龍笛の音はEASTWESTのハリウッドオーケストラのフルート音源でそのまんま代用してみます。
龍笛の音はあまり大きくビブラートが掛からない音の伸びを感じるので、ビブラートがあった場合、振れ幅は小さく、またどちらかというと細かい周期の音色を使う必要があると思いました。なるべく伸びの感じる音色で代用すると良いかもしれません。
そして、音色は龍笛と似ていますが、このサンプルの場合、音が綺麗過ぎる気がする。龍笛のあの独特の息の吹きぬけるようなブレス的な感じがない。
RAに入っていたPan Fluteでところどころのノート頭のブレス部分だけを追加。少しはマシになった気がしますが、RAのPan Fluteは音階が足りないため、欲しい音のブレスを鳴らせないのが痛い。
音色代用で作った笙と篳篥の音も混ぜてみます。こう聞くと篳篥の音にパンチが無いですね。重ね合わせているのに雅楽のような雰囲気が感じられない。うーん、この篳篥の音だと多分、清少納言に「耳にやかましい」と言って貰えないだろう。どうしたものか。
篳篥の音の打ち込みを少し変えてみました。さっきよりは少し篳篥っぽさが出たような…?(私の中の清少納言はまだ不満げではあります)
篳篥の打ち込み図。ボリュームの抑揚をトータルで上げ・下げ・上げにしてみたのと、ピッチベンドで伸ばす部分のノート頭をかなり大げさに書いてみました。ハンパに上げるよりもがっつり素早く上げてやった方がそれっぽく聞こえたんですよねぇ。
こちらの、初めて篳篥を吹かれた動画を拝見すると、弱く吹いてもしっかり音程は保たれているように思えるので、ノート頭をピッチベンドで下から少し持ち上げてそれっぽく聞こえるのは、耳のトリックなようです。
打ち込みでは、音色によって実際の原理通りに弄ってもそれっぽく聞こえないこともしばしばあるので、こうして実際とは違う音の動きを加えて耳の錯覚を使うこともよくあります。あくまで近似操作にすぎないのですが、結果的に「篳篥のそれっぽくなった」のなら、それはそれで良しと私は考えます。
まとめ
ひとまず龍笛についてまとめますと、
- 副旋律を主に担当(主旋律にいることも多い)
- モノフォニック楽器
- 音階はE5~D7と広め
- 音の立ち上がりの息の吹きぬける音が特徴的
- 音色はフルートにかなり似ている
- ビブラートはあまり大きくかからない
- 音は優しく、親しみやすい
フルートの音を龍笛として使う場合、かなり音色が似ているのでそのまま代用してもいいかなとは思いますが、工夫が出来るのであればそうした方が更に雰囲気は出るかと思います。
いきなり作りこみが過ぎると、肝心の龍笛を使うことに嫌気が差さないこともないので、今回はこのくらいにしてみます。徐々にでいいんです。下手に見栄は張らない。
それではー