【コンプ・Lv4】コンプのアウトプット・ゲインリダクション・ニーの意味

こんにちは、MAKOOTOです。

 

今回は、コンプレッサーのパラメータである、

  • アウトプット(OutPut Gain)
  • ゲインリダクション(Gain Reduction)
  • ニー(Knee)

について見ていきます。

 

いやー、コンプは奥が深い。あと何気にこんがらがる(笑

一つのエフェクトでこんなに音作りが多彩なものって、他にないんじゃないかな。

 

EQもやろうと思えばえらい細かく設定して音をかなり可変させられますが、

やりすぎると、何かこう、「大丈夫なのか!?」って感じになる時があります。

EQの奥深さはコンプとはまた別だからなぁ・・・。

 

 

 

さて、コンプの話でした。

前回に引き続き、まずはアウトプット項目から見ていきましょう。

 

 

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アウトプットゲイン(Output Gain)とは

 

コンプで圧縮された後の全体音量を調整します。

メイクアップゲイン(Make-Up Gain)と表現されることもあります。

 

サンプルを用意してみます。

まずは、コンプを掛ける前のスネアの素の音。

 

次に、コンプを掛けたあとのスネアの音です。ゲインはまだ上げていません。

 

 

後者の方が音がずっと小さいことがわかります。

コンプの設定内容はこちら。

コンプのゲイン

スレッショルドはかなり深め、レシオも8:1、アタックタイム0.1msecということで、

インプット(原音)に比べて、アウトプットの音はがっつりと潰されているので、

結果的に、音量が凄く小さくなりました。

 

コンプレッサーを掛けるということは、音を潰すことになるので、

結果的に音量がその分下がります

音量自体は下がるんだけど、音のインパクトは潰れた分だけ強くなる。

潰した分、音量に余裕が出来るので、それを原音レベルまで持ち上げれば、

原音と音量は変わらないのに、以前よりインパクトの強い音が出来上がる

また、音の粒が揃うので、トータルの音圧を稼ぐことが出来る

メイクアップゲインで音圧を上げる

こういう仕組みになっています。

 

以下のサンプルは、先程の後者のゲインを原音と同じくらいまで引き上げた音。

 

ゲインを上げた後

がっつり潰していたので、その分がっつりゲインを上げることになりました

お陰で、スネアの余韻が思いっきり持ち上がって、シャーンという音が大きくなった。

これでスネア自体の迫力は段違いのものとなっています。

 

 

このように、コンプの使い方の一つとして、全体の音圧をかなり稼ぐことができます。

ただし、これには同時に失われるものがあります。

それは一体何でしょうか・・・。

 

 

音圧と引き換えの「ダイナミクスレンジの消失」

 

音の大小の抑揚の差の事を「ダイナミクスレンジ」と呼ぶのですが、

コンプを使うことで相対的にこの、音自体の抑揚が無くなってしまう

という弊害が生まれます。

全体がのっぺりした感じになり、リズム感が失われてしまうのです。

 

現在の人間の耳と感覚は、

「音量(音圧)が大きい音を良い音だと捉えてしまう」

傾向があることがわかっています。

 

どちらが良い、という話はここでは割愛しますが、

ひとまず、コンプを使うことで失われる要素もあるのだ、

ということだけは覚えておきましょう。

 

楽曲内でコンプの役割を理解し、それを効果的に使うことが本来の目的です

 

 

ゲインリダクション(Gain Reduction)とは

 

音が入力されて、効いていますよー、という目安のメーターのことを言います。

 

ゲインリダクション

赤枠の部分がそうです。

この図だとがっつりかかっているので、メーターが下に触れそうなくらい(笑)ですが、

これによってどのくらいエフェクトが掛かっているかが目視できます。

 

ゲインリダクションTR

こういうタイプのメーターの方がわかりやすいかもしれません。

 

注意してほしいのは、このメーターが触れていない場合、コンプが機能していない

という意味でもあるので、その場合は、入力信号つまりインプットの音を大きくして、

ゲインリダクションが触れるのを確認してください。

 

 

ニー(Knee)とは

 

圧縮される掛かり具合を柔らかくするかどうかというもの。

 

ニーを効かせる場合、圧縮の掛かり具合が緩やかになるので、

音が少し柔らかくなる、といった特徴があります。

ソフトニー

通常のコンプレッサーの基本概念は、

スレッショルドを越えた直後からレシオで設定した通りの圧縮比率となります。

例えば、「8:1」の場合は圧縮率が8倍になるので、

音によってはどうしても極端な音に聞こえてしまうケースが出てくる。

実際はアタックタイムがあるため、そこまできついというわけでもないのですが、

それでもやはり不自然さが出てしまう場合がある。

 

そんな不自然さを緩和させるための措置が、ソフトニーということです。

ただしこのソフトニー、圧縮がスレッショルドレベルの少し前から掛かるので、

緩やかには掛かるけど、反面歪みが大きくなってしまう場合もあるので、ここは注意点。

 

 

CubaseのKnee

CubaseのCompressorではレシオの下のボタンがそれにあたります。

効かせていれば「Soft Knee」。効かせていなければ「Hard Knee」。

 

私は最初、「違和感が出てくるなら、全部ソフトにしたほうがいいじゃん!」

と思っていましたが、逆に音を潰して尖った音や、

アタックが強調される音を作る意味合いを知るようになって、

状況によって使い分けることが必要なのだとわかりました。

 

ちなみに、ソフトニーをかけると、確かに音は少し柔らかい感じになるのですが、

スレッショルドの少し下から圧縮が掛かるためか、

設定よりも若干深めにコンプが掛かる形になります。

 

 

・・・さて、これでコンプの基本パラメータの解説は以上になりますが、

折角なので補足として、Cubase付属のCompressorにあと二つある、

「Hold」「Analysis」というパラメータについても見ていきたいと思います。

 

 

 

Hold(Cubaseのコンプ付属)とは

 

ホールド

音の入力信号が、スレッショルドを越えてアタックタイムに到達した後、

そこからレシオの比率をそのまま、どのくらい持続させるのか、といったパラメータです。

数値は「0~5000msec」まで。結構持続させられます。

 

通常は入力信号がスレッショルドを下回って、

初めてリリースタイムによって徐々に圧縮が解除されていくわけですが、

このホールドは、リリースタイムに到達するまでの間の「圧縮率100%の時間」

この長さを強制的に伸ばすパラメータの模様。

 

 

ちょっと音で聞いてみましょう。コンプの設定は上図の通り。

 

ホールド250

音が一旦小さくなり、そのあとで少し膨らむように大きくなって、また減衰しています。

 

 

ここで、「Hold=0」にしてみると、

 

ホールド0

通常のコンプの掛かり具合となり、原音通り、音が次第に小さくなっていっています。

上図では、コンプの設定もあって、赤枠の左の部分が圧縮されて少し小さく抑えられ、

そこからすぐ音が滑らかに原音に戻っています。

聞いた感じでは、一瞬音が小さくなったような印象はあまり受けないかと思います。

 

 

もう一度、今度はわかりやすく「Hold=250」のままにして、

「Release=10(最小)」にしてみます。

 

ホールド250、Release10

リリースを短くしたので、コンプ解除後に急に原音に戻った感があり、

音の膨らみがより顕著になりました。

上の赤丸ではレシオ8:1が持続されていることになります。

 

 

このHold、数値で把握しようとすると、ちょっとわかりづらい部分がありますね。

でも、Holdを足すことで音が再度膨らむような音作りが出来ることがわかりました。

これだけ顕著なら、ディレイとは違った意味合いの音が表現できそうです。

 

 

 

Analysisとは

 

入力信号の解析を、ピークで測るのか、RMSの平均値で測るのか、ということ。

ピークとは、一音一音入力された瞬間的な音ごとに解析していくのかという意味合いで、

RMSというのは、ざっくりいえば全体の音の平均値から解析するのか、ということです。

 

アナリシス

0であれば完全ピーク依存100であれば完全RMS依存

 

Cubaseのヘルプでは、RMSモードが向いているのは、

音の入力信号のダイナミクスレンジが小さい(抑揚のあまりない)場合。

対してピークモードは、打楽器系など音の大小差が激しい場合に向いているとのこと。

 

このRMS。細かい説明は省きますが、

聴感的な平均音量をある程度測定できるものとしての目安とされています。

ですが、この考え方は少し古く、今では、

ラウドネス数値というものが、人間の聴感をより正確に数値化するパラメータ

として使われてきています。

 

 

AnalysisをRMSモードにして解析した場合、

細かな一瞬のピークを見落とすことも想定の上で使用する必要があります。

 

うーん、ソフトの処理的にはRMSの方が楽なのかもしれないけど、

自分が細かな調整をしたい場合は、ピークモードの方が向いているんだろうなぁ。

 

 

一応簡単な実験結果を載せてみます。

ギター設定

設定は上記の通りで、Analysisの所だけ変えていきます。

HALionで適当に選んだギター音と適当な打ち込みなので、正直音は微妙ですすいません。

 

・単なるベタ打ちギターサンプル・素の音

 

・単なるベタ打ちギターサンプル・完全ピークモード(Analysis=0)

 

・単なるベタ打ちギターサンプル・完全RMSモード(Analysis=100)

 

 

わかりにくいので、上から順にGIFアニメにしてみました。

アナリシスギターさんぷる

 

 

 

もう一つ、同様にドラムサンプル。設定は以下の通り。

どらむ設定

ドラムパターン全体にかける仕様にしています。

 

・簡単なドラムサンプル・素の音

 

・簡単なドラムサンプル・ピークモード(Analysis=0)

 

・簡単なドラムサンプル・RMSモード(Analysis=100)

 

ドラムサンプルの比較GIFアニメ

アナリシスドラムサンプル

 

 

うーん。

この二つのサンプル、あまりわかりやすいとはいえませんが、

ピークモードに比べ、RMSモードの方がやはりコンプの掛かり具合が緩めですが、

ピークモードよりもトータルのダイナミクスレンジは取れてるようには見えます。

 

掛かりがきついのはピークモードの方ですね。

純粋に音を固めたり、トータルの音圧を上げたい場合はこっちかな。

 

実験材料が2点しかないので結論付けるとまではいきませんが、

一応、ご参考までに。

 

 

まとめ

  • 「アウトプットゲイン」=コンプで圧縮された後の全体音量を調整する
  • 「ゲインリダクション」=コンプが効いている目安となるメーター
  • 「ニー」=圧縮を掛け方を自然(柔らかめ)にするか
  • 「ホールド(Cubase/Comp)」=アタックとリリースの間で、圧縮を持続させる長さ
  • 「Analysis(Cubase/Comp)」=ピークモード/RMSモードでの音の信号解析の選択

 

そして、

コンプを使うことで音のばらつきを無くし、ピークを抑えた分だけ音圧を稼げる。

ただしその分、ダイナミクスレンジ(音の抑揚の差)は失われる。

 

 

というわけで、ひとまずコンプレッサーの基礎パラメータを見ていきました。

次回は、具体的なコンプの掛け方の例を取り上げて、その使い方をみていきたいと思います。

 

 

それでは!