前回、
1980年代ゲーム機の音源をエミュレートした『SOCALABS 8-BIT TREATS』が無料配布
という記事を書きました。
今回はそのプラグインの一つ、ゲームボーイをエミュレートしたPAPUを使ってGB音源風のチップチューン作りをしてみたいと思います。
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PAPUの仕様を確認
PAPUの仕様は、
- 任天堂ゲームボーイをエミュレート
- 矩形波チャンネルが2つ
- その内片方のチャンネルにはスウィープ機能搭載
- ノイズチャンネルが1つ
- ステレオ機能(LCR)搭載
本来のゲームボーイ音源にはこれに「波形メモリ音源」が載っかっています。なので、PAPUとその波形メモリ音源に変わるプラグインを使ってやれば、GB音源を再現できるということですね。
波形メモリ音源とは
波形メモリ音源はちょっと特殊で、こちらの記事を参照すると、
1周期分の波形データだけ持っておいて音階をつけて鳴らす音源方式
ということ。
どういうことかというと、
これはChip32というソフトで見る矩形波。例では真四角です。この形を一周期として音が鳴っている。PAPUの画像でも一つの波形がずーっと連続して並んでるように見えると思います。
この音はこんな感じ。
そして、波形メモリ音源というのは、この一周期の形を自由に変形できるというもの。
例えば、真ん中だけそれぞれ凹ませた波形を作ってみて聞いてみると・・・
真四角の矩形波よりちょ~っと音が明るい感じになりました。もっと変化つけた方がわかりやすかったかもしれませんが、波形メモリ音源はこうして自由に波形を変形させられるので、チップチューン音の基本となる正弦波・矩形波・三角波・ノコギリ波以外の独自の音を作る事ができる。
ナムコ社のアーケード版「ドルアーガの塔」や「マッピー」なんかにはこれが搭載されて、当時は新たな音の表現として画期的だったそうです。
というわけで、PAPUにこのChip32を併用して、ゲームボーイ音源を再現する形をとってみます
Chip32はフリーソフトです。ダウンロードは、こちら。
OS対応はWindowsではXPまでの表記ですが、私のWindows7でも動きました。
PAPUの操作方法
改めてPAPUのプラグイン画面をみてみます。
- 1つ目の矩形波チャンネルにスウィープ機能
- 2つ目の矩形波チャンネルはスウィープなし
- 3つ目のノイズチャンネル
- その横に全部の音のアプトプット
- PW:音色の変化。duty比:12.5%、25%、50%、75%の4つ
- Attack:音の立ち上がり。0.0、0.3、0.5、0.8、1.0、1.3、1.5、1.8s
- Release:音の余韻の長さ。0.0、0.3、0.5、0.8、1.0、1.3、1.5、1.8s
- Tune:キーの変更。1単位で1半音、-48~+48まで。
- Fine:更に細かいピッチ変化。100で1半音、-100~+100まで。
- Sweep/Shift:スウィープの度合いを決めるパラメータ(弄った方が分かり易い)
こんな感じでしょうか。文字で説明するより実際に弄った方がわかりやすいかとは思いますが、最初なので記載しておきます。
スウィープ機能の音作りで遊んでみる
弄っているとすぐに色々な音が出せることがわかります。わかりにくいかとは思うので、サラッと見てください。一例として私が遊んで作った音を載せておきます。
スライムが歩くような効果音
小さいなにかがヨチヨチ歩くような効果音。チャンネル1のパラメータは上記赤枠。左上のノートを1オクターブ下げてやれば、Tuneを-18から-6にしてやることで同じ音になります。
弾を発射する音など?
Tuneがえらいことになってますが、それはノートが下の方にあるからです。色々弄ってたらこんなパラメータになってしまった(笑
ランダム要素を出すためにクオンタイズをかけません。
何かが落ちる音
ノートは短いですが、その分リリースを少し伸ばして余韻を作ります。
何かが迫ってくる音
これはスウィープではなくノイズですが、ついでに載せておきます。
アタックを少しだけ遅らせると、迫り来る感じが出てきます。ノイズの種類をかえてちょっと弄るとこんな音が出せるという。
ゲームをしているような展開を表現してみる
簡単に、ゲームをプレイしている時のように音を置いていってみました。
作ったあとに思ったのですが、曲が始まったあとも効果音入れればそれっぽく聞こえたかもしれませんね。ま、まぁ、今回はサンプルということで(逃
そして以下は、その時使った音などの資料です。
ベース音やバッキング、サビのリード音
デューティ比25%の明るい使いやすい音。
Aメロのリード音
使用しているのは2チャンネルの矩形波。デューティ比は50%。透き通るような音ですね。アタックを0.3にしてフワッと入るようになってます
リズム隊のノイズ音(ハイハットの代わり)
使っているのは一番下のノイズ部だけ。うるさすぎないよう、Outputを少し絞っています。
波形メモリ音源で作った音
独自に波形を作れるので、結構違った音が作れますねー。良さそうな音を色々探せそう。
PAPUを使う時の留意点
PAPUは、モノフォニック(単音発声)なため、全チャンネルをONにしても3チャンネル全部同時に鳴るだけで、和音は鳴りません。3チャンネル同時に鳴るのと、和音を出せるのはまた意味が違うということ。
なので、ゲーム内ではその時その時で音色などを変換していることを想定し、矩形波2+波形メモリ1+ノイズ1の最大計4音がなるようにバランス調整しました。
トラック数が多いのは、違う音色に切り替えた時の音を別トラックで予め作っておいた方が楽なので、そうしています。一応トラック数も絞って音色を変えたりは出来るのですが(昔はよくそうしていました)、ただの自分用サンプルの場合はこうして大雑把(笑
ちなみに、今回のサンプルでは取り入れていませんが、モノフォニックではあっても、ピッチを少しずらした矩形波2つを同時に鳴らすと、少し太めといいますか、新たな音がでます。
まずは、普通の矩形波一本。
なんの変哲も無い、ただの矩形波のようだ・・・!!
しかし、2本目のピッチをすこ~しだけずらすと・・・?
わーお、かっこいいー
矩形波2チャンネルを使い、片方のピッチ(Fine)を16/100半音ずらしてみた時の重なりの音。これは別に全く同じ波形でなくとも、色々な波形の組み合わせで音が違います。
この音の重ねで出力される音は結構かっこいいことが多いので、ここぞという時に使うと良い味が出ると思います。こういう微妙に違う音を重ねて厚みのある音を作る事をデチューンといいます。
おわりに
矩形波やノイズなどを出す音源は色んなプラグインが沢山あるので、PAPUに限らず、自分に合った音源を使うのが一番ではあると思います。ただ、ゲームボーイ音源がどういう風に作られているかを知るという意味では、エミュレートされているだけあってそれにほぼ近い内容での曲は作れるのではないかと思います。
デューティ比やアタックなどのパラメータがある程度固定で用意されているというのも、実機感があっていいですね。その感覚を使っていって覚えていくのは結構ありかなと思いました。
それでは!